第46話 守る為の力
ハカセはデスクでソフィアのデータを見つめていた。
ソフィア……フルネームはソフィア・グリード。3年前私達が倒したプロメテウスのトップダルク・グリードの一人娘。
キュベレが見つけて来た候補者の中に彼女を見つけた時はドキッとしたものだ。
更に本人からメカニカルワルキューレ入隊の強い志願まであったのだから。
入隊理由は「これ以上、私の様な苦しみを誰にも負わせないため」
と言っていたが、本当の理由は明確だった。
自身の父、ダルクを奪った私達、そして何より、直接手を下したリリィへの復讐だ。
だが、話を聞いて分かったのは、彼女が唯一の肉親だった父親を、心の底から愛していた事と、父親が行なってきた数々の非道を、ソフィアが何も知らなかったと言う事だった。
ダルク自身が意図的に伏せて育てたのであろう。それを理解した私は彼女の入隊を許可。
そして彼女がダルクの情報が分からない様にデバイスに細工した。
ワルキューレ達なら……リリィ達なら彼女の傷付いた心を癒せると信じて。
───
私は一呼吸置くと自身に与えられたデバイスに音声認証を行う。
「転移装着。」
声を合図に私に最適化されたメカニカルワルキューレ、MV-10ソフィアを装着する。
ガラスに映る自身の姿を視認する。
ヴァルキリーに似たその姿に嫌悪感を抱く。全てを分かった上で私にこの鎧を託すのがハカセの趣味だとしたら悪趣味極まりない。
私のこのワルキューレはリリィの、ヴァルキリーの直接の後継機だとデータで見た。皮肉なものだ。まさか復讐相手の後継機が専用機とは……
私は空中で停止すると目の前で繰り広げられるティターニアの機体が生み出す"破壊"を網膜に焼き付けていた。
「ちっくしょう!オペレーターももう少し早く連絡くれよな!」
アリアは既に街に到達してしまったティターニアの大型機体、ラプターを前に愚痴を零す。オペレーターの連絡から僅か数十秒でラプター3機は街に到達し、今まさに攻撃を始めていた。
ラプターはネガ・メガミドライヴを2基搭載した機体でスピードだけなら現存するワルキューレ以上の性能を持っている。
アリアはそのうちの1機に接敵するとドロップキックでラプターを蹴り飛ばす。
今まさに目の前で一般人に危害を加えようとしていたのだ。
「大丈夫かアンタら!ここは私達メカニカルワルキューレが引き受ける!アンタ達は安全な場所に!」
アリアはシェルターを指さし一般人に指示を出すが
「し、シェルターはこの間の攻撃で既に壊されていて……」
「くっ!!」
アリアはそれを聞いて腹をくくる。
「仕方ねぇ……じゃあ誰も……アタシから離れんじゃねぇぞ!!」
アリアはクローを最大出力にすると敵に向かった。
───
メガイラは自身が開発した新型のメカニカルワルキューレを身に纏っていた。
機体名MV-04.2メガイラ・ツヴァイ
今までのスーツはあくまで支援用の機体だった。
でも、仲間達の後ろでは無く、隣に立ちたいと言う思いから作った攻撃用スーツ。今まで通り、電子戦特化タイプで有りながら接近戦、射撃戦どちらも高い次元で可能な万能機となっていた。
ただ、模擬戦では何度も使用していたが、実戦は今回が始めてだった。
1機は アリアが対峙している。もう1機はソフィアに任せてメガイラは目の前の機体に専念することにした。ラプターからミサイルが放たれる。それをビームブレードで切り裂くと爆風が街を襲わないように新たな装備、エネルギーバインダーユニットで防ぐ。
このバインダーはビームで構成された物で、出力を調整すれば大きさを自在に変えられると言う代物だった。
爆風を完璧に防ぐとメガイラは敵のデータを解析、機体の最も脆弱な部分を把握するとそこにピンポイントで射撃を行っていく。
「アナタはもう……オシマイです!」
───
アリアとメガイラがラプターに肉薄する中でソフィアは敵の動きを観察していた。
(ラプターが街への攻撃に専念している内にネガ・メガミドライヴを撃ち抜けば良い…)
ソフィアは多少の犠牲は仕方ないと割り切っていた。性能も一部は上回る敵だ真正面から対峙するなんて愚行だと。
しかしその時彼女は見た。ラプターが今まさに親子を踏み潰さんとする光景を。
父親が娘を抱き締め庇わんとする様を。
ソフィアはその時、思わず飛び出した。
タスクとして切り捨てる筈だった。でも、あの時の父の光景が頭をよぎる。
「止めろぉおぉお!!」
無意識に叫ぶとソフィアは親子とラプターの間に割って入っていた。




