第211話 未来を守る双頭の龍
宇宙から放たれたビームを防いだ事でラボではディアナを囲いメカニカルワルキューレ達が笑い合っていた。
「やはりというべきか……流石はディアナ教官です。あの技能……もはや神の御業ですよ!」
ルキアはへたり込んでいるディアナに駆け寄るとキラキラとした瞳で彼女を見る。
ノアもディアナの後方で腕を組み得意げに頷いている。
「いや……本当、寿命縮むわあんなの……本当生きた心地しないわよ……」
ディアナにしては珍しく悪態をついている所をみるに本当にくたびれているのだろう。
「……でもさ……まだ宇宙にアイツらの母艦居るんでしょ?ほら、ディアナさんもう一回撃ってよ。」
フィレアはそんなのお構いなしとばかりに言う。
「はぁ……?二度とごめんよ……第一、さっきのでスナイパーライフルが大破したからもう一回は物理的に不可能よ……フィレア、お願いだからちょっと休憩させて……」
自身の元教官が初めて見せる疲弊している姿にフィレアはニヤニヤしながら見下ろす。
「ンフフ〜まさか元教官に懇願されちゃうなんてね……どうしよっか……ニャ!?」
ディアナを煽ろうとしていたら突然何者かに頭部を殴られ、頭を押さえながらフィレアが振り返るとそこには自身の姉であるルキアが握り拳を作って立っていた。
「いい加減になさいフィレア!いくら病み上がりでも貴女も立派なメカニカルワルキューレ、鎧を身に纏った瞬間から戦士として───」
フィレアは長々と小言を言い始めたルキアに対して何時もの様に舌を出して茶化すと姉妹で追いかけっこを始め、それを皆で見て笑っていた。
───フィレアがアビーターに胸を貫かれた時、ルキアが誰よりも心配していた事を知って居る者はより温かな瞳で二人を見つめた。
「───それにしてもミレイナ。
デウス・エクス・マキナの一人に敗北したと聞いたが……怪我は大丈夫なのか?」
ナギサは今もソフィアに肩を借りているミレイナの身を案じる。
妹であり我が子同然のミレイナがやられたとあらばナギサは黙ってはおけなかった。
「ソフィア、ミレイナをやったデウス・エクス・マキナの特徴は?」
「はい……名前はアルテミス。
西洋の甲冑を思わせる水色のパワードスーツを身に纏ったデウス・エクス・マキナで、
私達メカニカルワルキューレとの一対一の決闘をしたいと彼女は話していました。
実際、その間アビーター達は攻撃をしては来ませんでした。」
「───面白い、ではそのアルテミスとの決闘……次は私が……」
ナギサが言いかけた時、ミレイナがナギサに鋭い目を向けた。
「───待ってください……彼女との決着は……私に付けさせてください!
まだ、私の刀は死んでいない……だから……!」
ミレイナの真っ直ぐな瞳を見てナギサは笑みを浮かべる。
「ふっ……もう、すっかり戦士の顔だな。
───思えば……背もこんなに抜かされて……
良いだろう次の決戦……アルテミスとの一騎打ちはミレイナ、お前に託す。
───絶対に勝てよ。」
「……!!はい!!」
「……耳元で叫ばないでよ……」
ソフィアはミレイナの叫びで震える鼓膜を気にしながら呟いた。
───
ハカセは改めて全メカニカルワルキューレ達に通信を送る。
今リーナの研究所にハカセ達が、ラボにはメカニカルワルキューレ達が集まっている。
一度集結すべきだと考えた。
何より、敵がラボを攻撃してくる以上、移動出来ない拠点は危険過ぎる。
『皆、聞こえるわね。
これよりロード・テスタメント……ネメシスに彼女の知る情報を聞き出すため、私達は敵への総攻撃に撃って出るわ。
……コトネ、ヴァルハラの起動準備をスタッフ達とお願い。』
ハカセの言葉を受けコトネ達非メカニカルワルキューレスタッフ達は船の起動準備を始めた。
───対終末用大型輸送艦ヴァルハラ。
先のガドルとの戦いで使ったノアの箱舟であり、全長四百メートルを超える移動するラボであった。
───しかし
「でもさ……ヴァルハラには攻撃手段無いじゃんか。」
アリアは先の戦いにおいて機銃程度しか攻撃手段を持たなかったヴァルハラではネメシスとの決戦で一方的に攻撃される未来しか見えなかった。
『そこは抜かり有りませんわアリアさん。』
通信にリーナが割って入る。
『私も先の戦いを経てベル博士とヴァルハラの強化を行ってきました。
ただ己を守るだけのノアの箱舟から、人々を守るための戦船に──!』
───
「───全システム、オールグリーン。キズナシステムの接続……完了。
主動力をソーラーシステムからメガミドライヴへの換装完了……
───ヴァルハラ改、発進します!」
───コトネのオペレーションが艦全体に響き渡る。
準備を終えたディアナ達ラボ側の全てのメカニカルワルキューレを乗せたヴァルハラは再び産子をあげながらラボから空へ飛び立つ。
───巨大な主砲を二門携え、ビーム兵器やミサイルを無数に装備したその姿は大海原を優雅に泳ぐクジラではなく、人々の未来を守るため空を駆ける双頭の龍を思わせた。
「───コトネ。指定座標にヴァルハラをお願い。……そこで合流しましょう。」
ハカセはヴァルハラに向け指示を行うと通信を切りヴァルハラ乗艦の準備を始めた。
アリアはヴァルハラが飛び立った映像に目を輝かせる
「か……かっけぇ……かっけぇよヴァルハラ!!」
「あぁ───確かにハッタリは聞いてるねぇ。」
「かっこいい。」
リリィとアリアは聞き覚えのある声を背後から聞き、思わず振り返る。
そして声の主を視認して笑顔を浮かべる。
「「ラクシャシー!アスラ!」」
───デウス・エクス・マキナ、パンドラの攻撃で大破した筈の二人が立っていた。
「え……嬉しいけど、時間もない中でどうやって……」
「───彼女達には未来技術実験一号と二号になってもらったの。
エリスが託してくれたナノマシンによる再生能力……想像以上だったわ。
まさかナノマシンが自己増殖して機体を復元するどころか性能の底上げまでするとはね。」
サイサは腰に手を当てながら口角をあげる。
「二号。」
アスラはそう言いながら六本腕で六個のピースサインを作った。
「───まあ、そう言うわけでモルモット一号って事さね。……ぶっ壊れてたらアンタ達科学者共をズタズタにしてるとこだ。」
ラクシャシーは手をひらひらと捺せながらぶっきらぼうに言う。
「───でも、帰って来てくれて良かった……お帰り……二人とも!」
リリィは少しだけ涙を溜めながら二人を見つめる。
そんなリリィの真っ直ぐな笑顔を見て、ラクシャシーとアスラは互いに顔を見合わせ、少し困った様に笑みを浮かべた。




