第205話 ラピッドストライク
ナギサとメガイラの二人は砲撃に特化したデウス・エクス・マキナ、エオスの猛攻に晒されていた。
地形すら容易に変えてしまう破壊力を何の躊躇もなく扱うエオスにメガイラは怒りを募らせる。
「くっ……!エオス……!」
メガイラは凶悪なビームの嵐をメガミドライヴ・リヒトの力で強化されたエネルギーバインダーで防ぐが後方にビームの余波が飛び火し爆発が起きる。
ナギサも止めどないビームの雨に近づくことすら叶わない。
彼女の得意とする近接戦闘に持ち込めず、歯噛みする。
「……弾切れという言葉を知らんのかこいつは!」
思わず愚痴をこぼすナギサに対してエオスは砲撃を続けながらも笑みを浮かべる。
「ははっ!お前達は私達ロード・テスタメントを……未来を超えるのではなかったか?私の聞き間違いか?」
軽口こそ叩くがエオスは攻撃の手を全く緩めなかった。
否、"緩められなかった"。
───接近戦に持ち込まれたらこちらが敗北する……それを悟った故だった。
(───まさか千年前にこんな兵器が存在していようとは……ロストテクノロジー……メガミドライヴ……マザー・ブレインが破壊を命令する訳だ。
───やはり、この力は危険過ぎる。)
マザーから過去の文明を滅ぼす命令を受けた時は思わずバグを疑った……しかし目の前で自身の放ったビームの全てを二人のメカニカルワルキューレが奇跡でもなく、偶然でもなく自らの意識で躱し切り裂く様は異常でしか無かった。
全ての攻撃が決定打にならず、痺れを切らしたエオスは自身の視界を遮る邪魔なインターフェースを全て消し、砲撃から目視による狙撃に切り替える。
エオスの放つ無数のビームの速度は亜光速に達しており、本来その全てが不可避の一撃となるはずであった。
……実際エオスの放ったビームによりアビーター達は回避出来ずその余波だけで溶断されていく。
しかし───それを完全に防ぎ切るメガイラのエネルギーバインダーの驚異的な防御性能……それを縦横無尽に操作する空間把握と演算による卓越した技能……
そして不可避の筈の攻撃の全てを"放たれるより前"に行動し、ビームを刃を置いて切り捨て、感覚で回避してのけているナギサにエオスは冷や汗を流していた。
───ふと気が付くとエオスの視界からナギサが消えていた。
エネルギーバインダーを巧みに操りビームの全てを受け流すメガイラだけが視認出来た。
「っ……!?金ピカのほうは……!?」
先ほどよりも数の増したエネルギーバインダーが視界全体に展開されエオスは煩わしそうに視線を動かす。
───その隙をナギサは見逃さなかった。
「───遅い!!」
メガイラのエネルギーバインダーが一枚弾けるとエオスの目の前にはサムライソードを構えたナギサが迫っていた。
メガイラがエオスの至近距離でナギサの姿を隠したエネルギーバインダーの一枚を解除したのだ。
「貴様が早すぎるん……!!?」
エオスの瞳には間近に迫るナギサだけが映る。
しかし───
「───ラピッド……ストライク!!」
───エネルギーバインダーをレイピアに纏わせた、即席のビームランスを構えたメガイラの鋭い一撃がエオスの背後を取った。
「なっ……!?しまっ……!!」
視界を確保するため消したインターフェース。
その代償は、エネルギーバインダーに隠れたナギサの接近に気付けなかったことと、背後のメガイラを見失ったことだった。
更に、無数のビームに晒されていたナギサとメガイラに作戦を練る時間は無かった筈だった。
苦楽を共にしてきた仲間を信頼していたからこそ相手の意図を汲み反撃に転じられたのだ。
背部のユニットをメガイラに吹き飛ばされたエオスは前のめりに吹き飛び、ナギサは思わず自身の胸に飛び込んできた彼女を抱き締める。
「おっ……」
「あっ……」
しばらく二人の間に沈黙が流れ、エオスは突然ナギサを押し退けると撤退を開始する。
「こ、今回はお前達に勝ちを譲ってやる!!あくまで戦術的撤退!!つ、次は落とすからな!!」
飛び立とうとしたエオスをナギサは呼び止める。
「エオス!……ナギサだ。ナギサ・ムラクモ!」
「……メガイラ。」
二人の名乗りを受け遠くからエオスが叫んだ。
「み、未来を舐めなさんな旧文明!!お前達の名前くらいデータで知っているとも!!
───次はお前達だけを狙う!メカニカルワルキューレ!!」
エオスは叫びながらテレポートした。
二人は一呼吸置くとメガミドライヴ・リヒトを解除し、通常のメカニカルワルキューレに戻る。
「……どうやら、退けられたようだな。
ありがとうメガイラ。お前のエネルギーバインダーを使った奇襲作戦が無ければ危うかった。」
「私こそ、ナギサが私の意図を汲みとってくれたから最後に背後を取れたんです。
……最初はあまり組んだ事の無い貴女が気付いてくれるか……心配でしたよ。」
二人は笑い合うと地上でメカニカルワルキューレの勝利に歓声をあげる人々の元に降りていった。




