第203話 武士道VS騎士道
ロード・テスタメントによる三箇所への同時攻撃……一箇所目はハカセ達が居るリーナの研究所。
二箇所目は国連の軍事施設。
そして三箇所目は……メカニカルワルキューレの本拠地であり帰るべき家……ラボだった。
ラボではフィレアとキュベレが目を覚ましたものの今だ傷は癒えず、敵の接近を受けディアナは狙撃手として屋上で待機。
更にミレイナとソフィアがロード・テスタメントとの接近戦を展開しようとしていた。
しかし───ラボに接近したロード・テスタメント側の様子がおかしかった。
「な、なにをしようというの?」
ディアナは思わず構えていたビームガンを降ろす。
ラボに攻め入る訳でもなく、無人機アビーターは陣形を組み地に立ち佇む。
そしてその先頭には旧文明の西洋の鎧を思わせる意匠のパワードスーツを身に纏った淡い金髪の少女が舞い降り、そのまま剣を地面に突き立てた。
───新たなデウス・エクス・マキナだ。
「───我が名はアルテミス!
ロード・テスタメント、デウス・エクス・マキナが一柱、我が主マザーブレインの意志に従い、悪を挫き正義を貫く者。
旧時代の調停者メカニカルワルキューレよ!
貴女達を戦士と見込み
私アルテミスは……正々堂々、一対一の決闘を所望します!」
高らかに告げたアルテミスと名乗る少女にミレイナとソフィアは思わず顔を見合わせる。
屋上で成り行きを見ていたディアナも困惑の色を隠せなかった。
「……な、何だか礼儀正しそうな人ですし話せば分かってくれるのでは……?」
ミレイナは今もこちらの反応を待っているアルテミスを見て思わずソフィアに聞く。
「何言ってんのよミレイナ。
───雑兵引き連れて囲んできてる時点で、対話なんて成立しないわ。」
ソフィアは二本のビームソードを構えアルテミスを睨みながら言い放つ。
「今の私達には、アイツの遊びに付き合うか、蹂躙されるか。それだけしか選択肢は無いのよ。」
ミレイナはその発言を聞いて何かを考えるとソフィアの前に出る。
ソフィアの発言を受け、アルテミスの行動の矛盾に気付けたのだ。
「ミレイナ……?」
「───では、私が先人を切ります。
ソフィアさんはこの後こちらに合流予定のルキアさんとノアさんに連絡を。
……ディアナさんも発砲はしないでください。」
そう言いながらミレイナは腰のサムライソードに手を伸ばしながらゆっくりと歩いていく。
「待ちなさいミレイナ!二人で行けば勝てるかも知れないと言う相手よ!一人では……っ」
ソフィアの叫びにミレイナは振り返り笑みを浮かべる。
「相手は少なくとも、私達を戦士として認めてくださった御仁です。
───それに……あのアルテミスという御方……自身の在り方、ロード・テスタメントと言う役割に誇りをお持ちの様子……私との決闘の最中にラボを襲うような真似はしないはずです。
ソフィアさん、ルキアさんとノアさんになるべく早く来るように呼びかけをお願いします。」
ミレイナの発言にソフィアは思わず聞き返す。
「なんで……侵略者を信用出来るのよ。」
「───私も、立場は違えど世界を守れる戦士として、メカニカルワルキューレとしての誇りを持って居るからですよ……ソフィアさん。」
笑みを浮かべソフィアに告げたミレイナはアルテミスの方を振り返ると笑顔を浮かべたまま、されど瞳には鋭い光を宿す。
そしてそのままアルテミスに近づいていくとアビーター達が一斉にミレイナに銃口を向ける。
ソフィアはそれを見て思わず駆け出そうとし、ディアナも再び狙撃の体勢に入るが、アルテミスは手を上げアビーター達を制した。
「私はマザーの命を受けメカニカルワルキューレ達に決闘をすると宣言したのです。
───そのマザーの顔に泥を塗るつもりか?」
アルテミスのドスの聞いた言葉に感情を持たない筈のアビーター達はたじろいだ様に武器を収めた。
「───済みません。アビーター達は命令には忠実なのですが些か融通の利かない存在でして。」
申し訳なさげに言うアルテミスにミレイナは笑顔で返す。
「いえ、貴女が誇りを重んじる方だと言うのは最初に名乗りを上げた時点で感じていました。戦士の感……とでも言いましょうか。
でも……だからこそ、これだけは果たし合いの前に聞きたい。
正義を口にしながら、何故貴女達は過去を……この世界を滅ぼそうとするのかを。
───その真意を。」
ミレイナの発言にアルテミスは表情を一切変えずに言い放つ。
「それを我が主、マザーブレインが望んだから。
兵器とは、主命を果たしてこそ正義を貫けるもの。
メカニカルワルキューレ、貴女もそうでしょう?」
当然とばかりに言い放つアルテミスにミレイナは目を閉じる。
「なるほど……それが、そんなものが貴女達の正義……」
ミレイナはそっと腰のサムライソードに手を伸ばし握り締める。
「その主命とやらにどんな真意があるか、どんな大義が有るのかは私には分かりません。
しかし───」
そしてゆっくりと目を開けたミレイナの表情は先ほどまでの柔らかなものから、鍛え抜かれた刃の如く鋭いものになっていた。
「その命令によって、多くの命が奪われ、世界が涙と悲鳴で満たされることは……断じて……
断じて正義等ではない!!
───二度と履き違えるな外道共!!」
ミレイナが叫ぶと同時にメガミドライヴ・リヒトを起動させる。すると彼女のパワードスーツがまるで炎を纏った様なオレンジの輝きに包まれる。
そして、ミレイナの発言を受けたアルテミスは明確な怒りを顕にする。
「──外道……?
こちらが歩み寄らなければ簡単に切り捨てられる機体性能で劣る弱者風情が……我が主を愚弄するか!!」
───過去と未来、二振りの刃は同時に放たれ、眩い火花と共に戦いの火蓋は落とされた。




