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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第四章 ロード・テスタメント編
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第184話 メガミドライヴ・リヒト


「メガミドライヴ・リヒト……?」


サイサが発した聞き慣れない言葉をメガイラがポツリと呟く。


「そもそも異なる世界から来たとは……」




ナギサが聞くもサイサは先ほどから何度もしたやり取りに対してため息交じりに断る。




「まぁ……異世界だとかそこら辺は貴女達のママに聞いて頂戴。



ベル……とにかく今は一刻の猶予も無いわ。


貴女には詳細なリヒトについての情報と私が持つ技術を渡す。




ナギサとメガイラはその間に倒れた他のワルキューレ達を救助して頂戴。」



サイサは茶化す様にハカセをママと呼び、それを受けた当のハカセはムッと少し頬を膨らませたが、その様子を見てリーナは小さく苦笑すると話を続けた。


 

「……既に負傷した他のメカニカルワルキューレ達は私達アトラスの方で救助を行っております。


お二人にはそのサポートをお願いしますわ。」



ナギサとメガイラは少しだけ困惑した表情を浮かべつつも先ほど自身らが負けたアンノウンを一人で倒したサイサを信じる事にした。



「───私達は何も知らなすぎる。


移動しながら今この世界に起きている異変について情報を精査したい。


ハカセ、簡単に纏めて送っておいてくれ。」


ナギサはそれだけ言うと部屋から出ていった。




「私も……敵の情報を今わかる範囲で構いません。転送して貰えると助かります。」




メガイラはハカセ達にお辞儀するとナギサに続いた。



そんなメガイラにサイサは笑顔を向けると手を振って見送った。




「あの子……ベルのクローンなのに礼儀正しくて可愛いわね……」



サイサは目を細めながら呟く。



「……うっさいわよ……バカ。」



「あらやだ……私、天才だけど。」



「……本当にうるさいわね。」



サイサとハカセのやり取りをソーマは笑顔で見つめていたが、不意にサイサがソーマに声をかける。


「アンタ、確か私が知り合う前の……十歳位の頃のベルの幼馴染だったわね。」



「え?ま、まぁ……君があのサイサ君と同一人物と言うならまぁ……」



「……そんな小さな時に好きだった娘を二十年近く追い続けるとか引くわね。」



サイサは気持ち悪い物でも見るような顔でソーマに吐き捨てる。



それを受けたソーマは想像すらしていなかった突然の暴言に悲しげな表情で固まってしまう。





リーナは白目を向いて立ち尽くしたソーマを尻目にベルにスリスリと近づくサイサを見て思った。




───いや、貴女もベル博士に執着して既に半世紀を突破しているのでは無いか……と



何なら世界の壁を超えてまで会いに来る貴女もなかなかになかなかだと。




「……どんぐりの背比べですわぁ」



リーナは温かな表情で三人を見つめた。




───




ナギサは飛行中にハカセが纏めたデータを見て驚愕していた。


飛行機の操縦に集中していたナギサは、ハカセやメガイラとは違い、リリィが倒された経緯を詳しく知らなかった。




故に自身の網膜に投影された情報が理解出来なかった。



仲間達の中でも突き抜けた力……スーパー・メガミドライヴを扱える唯一のワルキューレであり、あのガドルをも倒したリリィですら手も足も出ない敵……




───未来から来たロード・テスタメントを名乗る未知の勢力……




そして、そのロード・テスタメントの中でも高い地位に君臨していると思わしきメカニカルワルキューレと酷似したパワードスーツを身に纏う少女……ネメシス



「……まさかプロメテウス、ティターニアと来て次は未来から来た敵とは……


なぁリリィ……この世界は……何故こうも無慈悲な試練に苛まれるのだろうな……



───皆、無事で居ろよ……」





ナギサは悲しげな表情を浮かべながら身体を傾け、仲間の待つ座標に向かって降下していった。




───




「まず、私は驚いているわ。


ベル、貴女が完成させたスーパー・メガミドライヴ……名前は安直だけど、あれは私が九十年研究しても完成させられなかったものよ。


……と言っても、開発した当の貴女ですら、あれが何故動くのか完全には理解していないのでしょう?」


サイサの問いにハカセは俯く。



そうだ。もしあれが量産出来ていたのならリリィだけでは無く、他の子達にも託していた。


作らなかったのでは無く、作れなかったのだ。



「……無理もないわ。


あんなの……兵器とは、発明とは呼ばないもの。


───ただの奇跡。



"特異点"のリリィだからこそ動かせたに過ぎないガラクタよ。」



ハカセはそこでサイサの顔を睨む。


スーパー・メガミドライヴはこちらの世界のサイサが残した基礎理論を元に開発した物だ。


平行世界の同一存在だとしてもその発言だけは許せなかった。




「あれは……サイサの……!!」



ハカセが叫ぼうとした時、サイサが人差し指でハカセの口を塞いだ。



「……知ってるわよ。貴女が"私"の夢をかなえてくれたって事ぐらい。



───でも、再現性のないあれは、切り札にはなっても他の皆を強くは出来ない……でしょう?」




そしてさり気なく自身の唇に人差し指を当てると続ける。




「──私のリヒトはスーパー・メガミドライヴを生み出そうと藻掻いた末の力。


魔力結晶を核として研究の末に生成に成功した人工魔力結晶……イノセントクリスタルと共鳴させてエネルギーを生み出すと言う物よ。



この生成方法は魔力結晶と適合者が高次でシンクロするスーパー・メガミドライヴより出力では負ける。


……でも、科学は奇跡を待つものじゃない。


違う?」




サイサはそこまで言って優しく微笑む。




「……違わないわね。悔しいけど。



本当に君は、サイサなんだね……」





ハカセもまた自身が認めた天才の、科学者としての矜持を聞いて微笑み返す。




「あの……ちょっとよろしいでしょうか?




先ほどお話に出た特異点とは……?」



リーナは小さく手を上げ、悪いとは思いつつも二人の間に割って入った。




「あぁ……それは……」




サイサが話そうとした時、リーナの端末にけたたましい音と共に緊急要請の通信が鳴り響く。



その場に居た全員の視線がリーナの端末に向けられる。




───送られてきた通信……それは




『アヴェリーナ博士。孤児院にロード・テスタメントのパンドラを名乗る敵が出現。




このままだと子供達が危ない。』





というアスラからのメッセージだった。

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