第183話 異なる世界からはじめまして。
「なんとか片付いたわね……全く、いきなり連絡してきて救援要請は無視って、アリア何考えてるのかしら……
ノア、貴女の方は大丈夫?」
ディアナはティターニア残党の掃討を終えると自身とノアの損傷状態の確認を行う。
「私の方は特に……む。」
ノアは網膜に表示したコンソールパネルで身体状態を確認しようとしてある事に気付く。
ディアナもまた、同時に異変に気付いた。
「これは……どういう事なの!?
いったい皆に何が……!」
ディアナとノアは困惑した。
離れた場所、異なる地点に表示されるメカニカルワルキューレの反応。
───そして、そのどれもが装着者及びスーツが危機的状態であると示していたのだから。
───
「私を……殺した……?貴女が?」
ハカセは目の前の旧友の発言に困惑した。
異なる世界線での事象なのだろう事は分かる。
しかし理解出来たからといってそれに疑問を抱かない理由にはならない。
「ふふっ……ベルだって私を殺したのでしょう?まぁ……おあいこさまって事で。」
そう言って不敵に笑う記憶の中の姿そのままのサイサを見てハカセは涙を溢れさせる。
リーナはそんなハカセの背中に手を回し擦りながらサイサに問う。
「……サイサさん。
積もる話もあるでしょうが、今この世界は危機にさらされています。
貴女はこの世界を……ベル博士を救う為にこの世界線に来た……間違いありませんわね?」
リーナの言葉にサイサは目を細め頷く。
「えぇ……さっきリーナ博士には伝えたけど……私この世界の大ファンなの。
───それを何処かの馬の骨がしゃしゃり出てぶち壊すなんて……そんな美しくない結末を見せつけられるのが我慢出来なくて……
最後まで傍観者で居ようとしてたけど、消されるくらいならせっかくだし足掻いてやろうかなって。」
茶化す様に話すサイサの言葉にリーナはしっかりと頷く。
「サイサさん……貴女の持つ"未来"の魔力結晶技術……お貸しくださいな。」
「未来の……?でもサイサの姿は昔の……14歳の頃のまま……」
ハカセの零した言葉にサイサは返す。
「……私、こう見えても九十歳超えてるのよ。
ベル……私が昔どんな研究していたか……覚えてる?」
サイサは首を傾げながらハカセの顔を覗き込む。
ハカセはサイサの年齢に驚愕しつつもサイサの研究内容を思い出す。
「九十……!?
あ、貴女がずっとしていたのは細胞……テロメアの研究……まさか貴女!?」
「……そ。神様が作った生命というシステムの不具合を治したってわけ。
───それに平行世界は同時進行じゃないの。進む時間も歴史も少しずつ異なるのよ。
世界同士か離れれば離れるほどにね。
まぁ、重めの時差みたいなものよ。」
「……とにかく、研究者としては不本意極まりないけど、私の世界で積み上げた技術を貴女達に貸すわ。
───ロード・テスタメントの遥か未来の技術力には劣るけど、ベル達の技術より少なくとも五十年以上先の技術をね。」
サイサがそう言った時、部屋のドアを誰かが叩く。
リーナは来訪者を招いた。
「……もうベル博士は目を覚ましましたわ。
どうぞお入りくださいな。」
扉を開くとそこにはナギサとメガイラ、そしてソーマが立っていた。
上半身を起こしたハカセを見てナギサとメガイラは彼女目掛け駆け寄る。
「ハカセ!良かったです!目を覚ましてくれて……」
メガイラがハカセの足元にすり寄るのをサイサは温かな目で見守る。
ナギサも元気とは行かないが命に別状のなさそうなハカセの姿に安堵して隣のサイサに礼を述べる。
「先ほどは協力感謝する。私は……」
「ナギサでしょ?で、そっちの娘はメガイラ。
で貴方はベルに片思いしてるソーマ。
……皆ちゃんと知ってるわ。
だって私、貴女達をずっと見てきたから。」
ハカセはサイサの言葉に困惑する。
「見てきたって何故……?どうやって……」
ハカセの問いにサイサは目をつむり返す。
「ベル……私が貴女達の世界を観れたのは貴女が作った量子コンピューターの観測技術の応用よ。
貴女達のこの世界は……私が見てきた無数の世界の中で唯一の"メカニカルワルキューレになった皆が誰も欠けずに笑顔で居る世界"なの。
───そんなの、この世界のファンにならない訳無いじゃない……」
そして一呼吸置いてその場の皆に伝えた。
「───改めて、私はサイサ・フォン・スベルビレン。
異なる世界線から貴女達を助けに来た別世界のメカニカルワルキューレよ。
───この世界の未来を守るため、私の持つ"メガミドライヴ・リヒト"を、貴女達に託す為に来たの。」




