第143話 静寂の洞窟
ダルケン達と別れたディアナ達の班は無線兵装に引っかかった敵性反応の尾行を行う事にしていた。
「……とは言え、敵にこれ以上私達の動きが悟られると不味いわ……
───ここはこの敵性反応が迂回するルートを算出してなるべく安全なルートを見つけましょう。
ノア、私は敵に貼り付けたバインダーユニットを操作している間、どうしても動作が遅れちゃうの。
引き続きアトラスの兵士さん達と、周囲の警戒をお願いね。」
ディアナは片膝を付きながらバインダーユニットの一基を無人機に尾行させる。
「分かりましたディアナ教官……あ、ディアナさん。」
ディアナは教え子であり真面目なノアの言い間違いに思わず笑顔を浮かべつつ、バインダーユニットを介して自身の網膜に投影されていくデータを見据えた。
───
その時ダルケン達の班は川沿いに明らかに人為的な手が加わったであろう洞窟を見つけていた。
「……敵性反応はありませんが……ここは間違い無く……」
ルキアはセンサーを使い周囲を探るが、敵性反応を洞窟の内部には確認出来なかった。
振り返りつつダルケンとフィレアに告げる。
「あぁ……この感じ、こっちがビンゴと見て間違い無いだろうな。
ルキアの嬢ちゃん、お前さんはあっちの班に情報の共有を頼む。
……フィレアの嬢ちゃん、俺たちは洞窟内部に施設に潜入出来る場所が無いか探るぞ。」
ダルケンの発言にフィレアはジト目で口を尖らせるがルキアの方を向くと姉もこちらを見て頷いて見せたので、フィレアはあからさまに大きなため息をつく。
「はぁ……分かったわよ……けど、足手まといになったら普通に切り捨ててやるから」
そのフィレアの返事にダルケンは目尻に皺を刻みながら笑顔を浮かべる。
「おう!じゃあ行くぞフィレアの嬢ちゃん!
あいつらが分かるようにディアナの嬢ちゃんが使ってた目印を刻みながら進むぞ。」
ダルケンは笑顔のままフィレアの背中を叩く。
「……マジでブッ殺すわよ?セクハラゴリラジジイ」
フィレアはダルケンの脇腹を殴りつつ悪態を付き、ダルケンはそれに何事も無いかのように歯を見せて返していた。
そんなフィレアとダルケンのやり取りを眺めていたルキアは呆気に取られていた。
(……あのフィレアが……もしかして、ダルケンさんに甘えてる……?)
それは不器用で意地っ張りな三女フィレアを、ずっと長女として見つめていたルキアだから気付けた小さな……だけど確かな変化だった。
三者三様に向かう真っ暗な洞窟の内部。
そこは嫌なくらいの湿気と人工的な風が外に向かい流れる異様な程静寂な世界。
そして───
錆びた鉄の匂いが満ちていた。




