第137話 守る
女性をそっと立ち上がらせるリリィの背中をローレンツはじっと見つめていた。
これまでもリリィの語る事は、何処か浮世離れしていて、無責任なものであると感じていた。
武器を握りながらも未来を守ると語るその口にほんの少しだけ嫌悪すら抱く。
しかし───なぜだかそんなリリィの在り方が心配で仕方がない。
その彼女の守る未来にリリィ自身の居場所はあるのか……出会って日も浅いというのに、そんな事を漠然と考えてしまっていた。
『……お兄ちゃん。』
ロゼッタが不意にローレンツを呼ぶ。
……なんだ。また茶化す気なのかと妹に抗議の目を向けようとする。
……だが。
『……彼女……リリィさんを、絶対に守ろう。
───彼女の在り方……彼女は、きっと世界を照らす希望になる。』
ロゼッタがこんなに真面目な声を零すのは……メガミドライヴに改造されてから一度もなかった、故にローレンツは面を喰らう。
「……ロゼッタ……?」
『……なんちゃて!!』
ロゼッタはいつものテンションに戻り謎のダンスを踊り戯けていた。
ローレンツは再びリリィの方を向き直る。
「……あぁ。」
ローレンツはただ手に持つライフルを握り直した。
残る救助対象は外部から拉致された科学者達だ。
リリィとローレンツで挟むように議員達を守りながら更に奥深くに潜入を続ける。
すると遂にロゼッタの誘導を持ってしても敵無人機達に通路で挟み撃ちにされてしまった。
おそらくリリィとローレンツだけなら接敵を回避出来た。
しかし今は一般人を護衛中であり、生身の彼ら彼女らはどうしても動体検知、熱探知に引っ掛かってしまう。
───ここからは戦いは免れないだろう。
「……リリィ、君はただ前を見ろ。背後は俺たちが守る。……アトラスの意地を見せてやるさ。」
装着者の覚悟か……あるいはロゼッタの力か、ローレンツのパワードスーツのエネルギーラインが淡く光始める。
それと同時にリリィのエクゾスケレートも魔力結晶の輝きを放った時だった。
前と後ろの無人機達は一斉にマシンガンを放ってきた。
リリィは他の部位へのエネルギー供給を断つと全てのエネルギーを腕部へ解放する。
そしてデルズキー超高周波ブレイドで放たれた弾丸の全てを切り伏せていく。
「はぁあああ!!」
リリィは弾丸を切り伏せながら一気に無人機に肉薄するとそのままの勢いで切り伏せた。
一閃。
無人機は胴体から両断され、火花を散らして崩れ落ちた。
ローレンツはメカニカルワルキューレ側から齎された武装転送システムで盾を呼び出すとそれを使い背後の人達を弾丸の雨から守る。
「くっ……!」
『頑張れお兄ちゃん!ふんーっ!!』
背中のロゼッタも踏ん張ってエネルギーを生成する。
「うぉおおぉお!!」
盾を構え弾丸を防いだまま脚部と背部のスラスターを同時に吹かせホバー移動するとそのまま全体重をかけるようにして無人機を通路の一番端の壁まで叩きつける。
壁が歪み無人機がその歪みにめり込む。
ローレンツはそのままゼロ距離でアサルトライフルを放ち敵機の装甲へ叩き込む。
火花と油を撒き散らし、無人機は完全に沈黙した。
リリィは背後の轟音には振り返らず、ただ口元を緩め、そっと剣を納めた。
議員達も突然の戦闘に各々腰を抜かしていたが、リリィの舞踊のような研ぎ澄まされた剣裁き、
そして身を呈して自分達を守り抜いたローレンツに対して小さく賞賛を漏らしていた。
「これが……守る為の……戦い……」
年配の議員の一人が、震える声で呟いた。
『科学者さんの場所は目の前!このままいっちゃいましょ!!』
リリィとローレンツはロゼッタの言葉を受け、互いに目を合わせると無言で頷き通路を駆けた。
ちなみに使うか分からない脳内設定でリリィはヴァルキリーの生まれ変わりでローレンツはヴァルキリーの幼馴染にして恋人未満だった男の生まれ変わりです。
ヴァルキリーの時代彼は最後に処刑されるヴァルキリーを守れず、無意識にリリィを守ろうとしている……みたいな設定を考えていましたが、それだとただの運命に縛られた思いって感じで嫌かなって事で本編では使わないかもです。




