第135話 近づく歩幅。
排気口を抜け、二人は空中拠点内部へ侵入した。
トップスピードのまま二人は並走し、配管などを複数すり抜けるとスラスターを逆噴射しスピードを相殺する。
そして着艦可能な場所をロゼッタが導き出すとそのままフライトユニットを転送し二人ともパワードスーツだけの状態になった。
「潜入成功……だが……」
ローレンツは自身の後ろに居るリリィに振り返る。
「……リリィ。君の仲間を守りたいという気持ちは確かに素晴らしい……しかし───」
ローレンツがそこまで言葉を紡ぐがロゼッタが遮る。
『お兄ちゃん、今は小言はノンノン。
確かにリリィさんの攻撃は危険ではありましたが、そのおかげでアトラス側の負傷者はゼロ、大金星です!
そんなことより管制拠点の内部構造をインストールしましたよ!
収監されている人達の場所もロゼッタちゃんがばっちり丸裸にしてやりましたとも!』
ロゼッタの言葉でローレンツはため息を零す。
「……ごめんなさい。ローレンツ」
リリィが小さくなりポツリと謝罪しているのを見てローレンツは小さく口角を上げる。
「……あまり無茶な真似はするなよ……いくぞ」
「うん……ありがとう。」
ローレンツがライフルを構え通路を歩き出したのを見て、リリィも彼の後に続いた。
───
リリィは壁面のパネルをこじ開けると回線を引っ張り出す。
そしてハカセが託したハッキングウイルスを管制拠点に走らせる。
これは空中拠点内部の警戒システムにリリィとローレンツを感知させないためのシステムだった。
これを使えば監視カメラには二人の姿が映らなくなり、さらには動体検知も熱探知も不可能になる。
───もちろん相手の警戒システムも異物に反応しかけたが、ロゼッタが更にハッキングをする事でコンピュータの演算能力に負荷をかけることでウイルスの感染を完了させた。
ロゼッタはローレンツのパワードスーツから小さなアームユニットを出すとリリィとハイタッチを交わした。
「……警戒システムは確かに俺たちを認識しなくなったが、無人機達やティターニアの人間がこちらを目視すれば話は別だ……二人とも油断はするんじゃないぞ。」
『……そんなだからモテないんですよ。
はぁ~あ、こんな唐変木じゃなくてリリィさんみたいなお姉ちゃんが欲しかったですよ。』
ローレンツは仏頂面を貫いたが、内心自身の妹がリリィがお姉ちゃんだったらという発言に取り乱していた。
能天気なロゼッタのことだ。
もちろんそんなつもりは微塵も無いだろうが、リリィがお姉ちゃんとなるとそれはつまり自身とリリィが家族……すなわち……結……
「ローレンツ!!」
思考の海からリリィの声で我に帰ると自身の後ろに突如現れた無人機のカメラアイにリリィがナイフを投擲。
そのまま無人機を壁に貼り付けにして警戒されるより先に無力化した。
『……ヒュー。ナイスナイフコントロール。リリィさんマジパネェっす。』
「油断するな……だよね?」
リリィが冗談混じりにローレンツの顔を覗き込む。
「……先に進むぞ。」
ローレンツは咳払いしつつ銃を構え直した。
───自然と二人の歩幅が近づいていた。
───
その頃、外での空中戦は苛烈を極めていた。
アリアは接近戦主体の戦闘スタイルであり弾幕を回避しつつ、自身が宣言してしまったアトラスの戦闘機達を守るのは骨が折れた。
そこにハカセからアリアへ通信が来た。
『……アリア。貴女の武装ではこの戦場は荷が重いわね。』
「なんだよハカセ!アタシは……まだまだやれるぜ!」
アリアは口ではそう言って自分自身に喝を入れているが状況は芳しくない。
『……誰が貴女が限界だなんて言ったかしら?
私は"貴女の武装"では荷が重いと言ったのよ。』
ハカセの言葉に合わせアリアの網膜に投影された情報から、新たな武装が武器スロットに追加された事が分かった。
『……貴女を信じているわ。』
ハカセはそう言って通信を切った。
その言葉を受けアリアはニヒルな笑みを浮かべる。
「へっ……ありがとよハカセ……
───さぁティターニア共!!
反撃の時間だぜ!!」
アリアは追加された新たな武装、六枚のクロービットと左右のクローに追加された大口径のビームキャノンを展開すると激しい弾幕を展開。
空に展開されていた複数の無人機達が一瞬で爆散する。
───黄金の弾幕が、空を埋め尽くした。




