第134話 シュトゥルム・アタック
警告音が鋭く鳴り響く。
チーム・コンドル出撃の合図が輸送機内に響く。
アリアはいち早く動くと先行してカタパルトに接続される
「アリア!MV-02ヘル!とにかく人命救助第一だ。一足先に出るよ!」
叫ぶと同時にカタパルトが唸りを上げる。
次の瞬間、アリアの機体は電磁加速に空へと叩き出された。
次にローレンツと彼の背中に接続されたロゼッタがカタパルトに接続された。
「ローレンツ……」
リリィは思わず彼に声をかける。先ほどの胸の高鳴りが何なのか、もう一度確かめたかった。
「ん……どうした。」
しかし振り返ったローレンツは再び兵士然とした仏頂面をしており、リリィは先ほどの様な高鳴りを感じることは無かった。
「ううん。お互い、頑張ろうね。」
「あぁ……必ず成功させるぞ」
『はーい!ロゼッタちゃんも頑張りまーす!』
寡黙なローレンツとハイテンションなロゼッタの対比にリリィが思わず柔らかな笑みを浮かべると
ローレンツは視線をリリィから外していた。
『……おや……ほほぅ……これはこれは……』
ロゼッタが何かブツブツ呟いていたが、ローレンツはそれを無視して出撃した。
「……ローレンツ・シュタイナー。フライトユニット装備、出撃します!」
電磁加速と共にフライトユニットのスラスターが火を噴き、機体が一気に押し出される。
リリィはそんな彼の背中を見つめ、ゆっくりと胸の前で手を握りしめる。
──先ほどの感情が何なのかはまだ分からないけど、自分が成すべき事はちゃんと分かっている。
フライトユニットとエクゾスケレートの接続も良好。
左右の翼が脳波制御で可動する事、スラスターを自在に操れる事を確認するとリリィもまた、カタパルトに接続した。
「エクゾスケレートリリィ、フライトユニット!いきます!!」
スラスターから徐々にオレンジの火柱が後方に伸びていく。
さらにそこにヴァルキリーの魔力結晶の翡翠の輝きが微かに混ざる。
急加速され、今までメカニカルワルキューレでは感じなかった慣性負荷を肌で感じ、一瞬後ろに押されそうになるのを何とか耐える。
そして───リリィは再び大空へ飛び立った。
「……良かった。私、ちゃんと飛べてる」
翼を翻しローリングしてみる。
……今までのように縦横無尽とは行かないが、それでも直線の飛行速度はメカニカルワルキューレと大差ない。
リリィは確かな実感を胸にスラスターにエネルギーを集中させるとリリィはアリアとローレンツに続いた。
───
敵拠点を視界に捉えた時、既にアトラスの空戦部隊である戦闘機が戦闘を開始していた。リリィは加勢に行きたい気持ちをぐっとこらえる。
───これは彼らが命をかけて陽動をかける作戦なのだ。
自分達が直接戦闘に参加するのは不味いと理解している。
作戦が失敗すれば、収監されている人達の命が危ない。
しかし───リリィは急加速するとアトラスの戦闘機に直撃する寸前の弾頭の数々を正確に撃ち抜いていく。
アリアとローレンツ、そしてリリィの機体は電磁膜を展開しており敵のレーダーには映らない。
──だからといってバレない訳では無い。
発砲すれば熱源と軌道で位置が割れる。
それは理解している……が、どうしても目の前の命を見捨てる事は出来ない。
リリィの突然の攻撃にアリアは一瞬驚くも、ニヤリと笑みを浮かべる。
「……やっぱリリィはそうじゃなくちゃな!
リリィ!作戦変更だ!
ここはアタシに任せろ!アタシがアトラスの戦闘機、全部守ってやる!……だからお前とローレンツが二人で拠点に潜入しろ!」
そう言うとアリアは自身の電磁膜を解除し敵のレーダーに映るようにあえて派手な攻撃を放った。
「さぁティターニア!アリア様のお出ましだぜ!!」
アリアは飛来する弾幕を、左右のクローで叩き斬る。
爆炎の中を強引に突き抜け高らかに宣言した。
「敵の火力を一手に引き受ける気か!?」
ローレンツは思わず零す。彼女の選択がどれだけ危険なものか理解しているから。
「アリア……!ごめんっありがとう!!
行こうローレンツ!」
しかしリリィは自身の迂闊な行動の尻拭いをしてくれた相棒に感謝を述べる。
そして戦火に紛れるようにローレンツと空中拠点の排気口に突入した。
──大丈夫。アリアなら、絶対に。




