第20話 『迷宮第五層:終極』
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自然と目が覚めると、リアナはまだ俺の腕に抱きつきながら無邪気な寝顔を晒して眠っていた。
ここ最近で一番よく眠れた気がする。身体の拾疲労が綺麗サッパリ消えていた。
「…………ん、レイ、おはよー」
「おはよう、ちゃんと眠れた?」
「バッチリ」
自信満々のリアナと微笑み合ってからすぐに朝食の準備を始める。
ケルベロスの肉を使うのは少し勿体無い気がしたので、今日もワイバーンの肉。それでもB+ランク魔獣だから十分旨いんだが。
食べ終わった後、ぶっつけ本番でボス戦だと心配だから準備運動と素振りはしておく。今日は身体も軽く、万全の体調だ。
階段を降りてボス部屋前の扉に行くと、同じ大きさのはずなのに前の四つよりも大きい気がした。
「そろそろ行くか」
「ん、そろそろここにもあきた。さっさと帰ろ?」
「ああ、そうだな。いい加減終わらせるか『【金剛力】【明鏡止水】』」
いつも通り収納からデュランダルを取り出して魔力を込める。この剣にも随分慣れたもんだ。
俺は無言でリアナの手を取ると、一緒に扉を開ける。
今回もボス部屋は薄暗く、中には一匹の魔獣が存在していた。
『よくぞここまで生き残ったな、次世代の天帝よ』
炎を彷彿とさせる紅の竜。二階建ての家程の大きさはあり、見つめ合っているだけで恐怖が生まれる。自然とデュランダルを持つ手に力が入った。
予想はしていたが、災害級ともなると貫禄が違う。ワイバーンとは比ぶべくもない。それに、さっきから隙が全くねえ。
「……喋れるのか」
『勿論。高位の竜種なら当然だ。名乗ろう、我が名はガウェイン。天帝アーサーの元使い魔である』
「申し遅れた。我が名はレイ=サラザール。ルーミリア王国『三聖』がひとり『剛剣』のランドルフの息子だ」
「レイの契約精霊、リアナ」
俺とリアナも続いて名乗ると、ガウェインなる竜は満足したかのように少しだけ力を抜いた。
師匠の竜だと…………? Sランク魔獣である竜種が人間に仕えると言うのか? 一体師匠はどれ程の………………。
『ここまでの試練を突破したという事は、我に挑む資格有り。言葉は無用。剣で見極めよう。貴様の全力をもって我と闘え。安心しろ、我はただの老龍。Sランクとまではいかんよ』
「それでも手加減はしないぜ。『響け、轟け、神の咆哮【神雷】纏え、唸れ【疾風迅雷】』ッ!」
金剛力と神雷を合わせたスピード特化の魔法、疾風迅雷を発動させる。これで一方的にボコしてやる。
俺がデュランダルを構えた途端、ガウェインの身体から熱風が放出され俺とリアナを襲う。何とか魔力を放出して身体を守ったが、目を開けるのも辛い。
『そうではない。そこにいる精霊の本領は剣の筈だ。言っただろう、全力で闘えと』
…………上等だ。師匠の使い魔だとか知ったこっちゃねえ、全力で叩き潰してやる!
「我が師の竜よ、非礼を詫びよう! 全力で闘わせてもらう!!」
ガウェインにそう告げると、彼は目を閉じて無言になった。どうやら待ってくれるらしい。随分と舐められたもんだな。
「リアナ、久しぶりだけど頼めるか?」
「もちろん。頼ってくれて私も嬉しい」
リアナは屈託のない満面の笑みを浮かべて俺の手を取ると、黄金に輝き初めて次第に銀の長剣に変わった。
こうして持ってみると、デュランダルとリアナの差が分かる。リアナの方が剣としての格が違う。
デュランダルをストレージに戻す。さて、そろそろ始めるか。
『この姿でも助けられるよ。魔力は任せて』
「ああ、援護を頼む『【解放】』」
リアナの声が頭に響くと、剣から魔力が伝わって来て俺の身体に帯びる。また一段と身体が軽くなった。
これが間違いなく、俺の本気だ!
「待たせた! 行くぞ、ガウェイン!」
『来い、若き英雄よ!』
俺が駆け出すのと同時にガウェインが羽ばたく。そこから無数の風の刃が生まれ、一直線に飛来する。
全部斬るのも面倒なので、回避出来るものは回避して、確実に当たるものだけ斬る。一個斬っただけで腕に鈍い衝撃が走った。
ケルベロスよりもパワーは段違い――――――だがパワーで負けていても、スピードでならごり押せる!
風の刃を避けながらガウェインに近づくが、そこには口を開けて魔力を溜めている姿があった。大技か!
『喰らえッ!』
ガウェインの口から紅のブレスが吐き出される。これなら何とかなる!
『レイッ』
「ああ――――『【神剣:斬鉄閃】ッ!!』」
予めリアナが溜めておいた魔力を使って斬撃を生み出し、ガウェインのブレスに当てる。
俺の放った神速の斬撃とガウェインのブレスがぶつかり激しい閃光が生まれ、完全に相殺される。チャンス!
この隙に俺はガウェインとの間合いを詰める。
背中に回ってリアナを振り下ろすが、傷がつけられる位で大きなダメージは入らない。かといって突き刺す訳にもいかない。クソッ、解放使ってもダメなのかよ…………!
『小賢しいッ!』
疑似瞬間移動で細々傷をつけたが、先程と同様にガウェインの身体から熱波が生まれ吹き飛ばされる。
このままやっていても先にこっちの魔力切れで負けるのは目に見えている。
…………切り札を使うしかない、か。予定よりもずっと早いが、このままじゃジリ貧。やるっきゃねえ!
『【全力解放】ォ!!』
俺の身体から勢い良く魔力が噴出する。これで終わらしてやる!
さっきよりもまた一段と速いスピードで、今度はガウェインの腹部に入る。背中よりもこっちの方が柔らかい。
横に一閃すると、さっきよりもずっと深く斬り込む事が出来た。
『GYAAAAAAAAAAA!!』
ガウェインが悲鳴と同時にもう一度熱波を放つ。甘い、二度同じ手は喰らわねえ!
俺は魔力を三重の壁にして熱波を凌ぐ。
三枚割れると丁度熱波が止まった。ここで決めるッ!
さっきと同じように背中に回る。今度狙うのは、翼の根元!
『震えろ、砕け、神の鉄槌【神地】硬化しろ【強剛神鉄】【神剣:斬岩剣】ッッ!!』
一瞬でパワー型の神地に変えて根元目掛けて斬りかかる。
今まで以上の重い衝撃の後、翼が胴体から離れる。それと同時にガウェインが地面に落ちる。これで終わり…………か?
『…………決着はついた。情けは無用、疾く殺せ』
翼を無くしたせいでガウェインはもう動けない。動けない獣を殺すのは容易いだろう。しかし………………。
「まだだ、まだアンタの本気を知っちゃいない。さっきのブレス、あれの本気があるだろう? 騎士志望として、正々堂々決着をつけなくちゃな」
『…………愚かな。命を懸けた闘いの中に騎士道などない』
「それでも、アンタと正々堂々闘いたいんだ」
『………………ヤツに似ているな。竜である我と真正面からの闘いを所望する馬鹿正直さ、気に入った。良かろう、我が全力見せてやる』
ガウェインは最後の力を振り絞るように口元へと魔力を溜め始めた。
俺も残り少ない魔力をリアナに渡す。
目を閉じて全意識を集中させる。リアナと一体化するような感覚がする。
『燃え上がれ、煉獄、罪禍の炎【地獄の業火】!!』
魔法だと!? コイツ、竜のであるが魔法も使えるのか!
地獄の業火は王級であり火属性最強の魔法。先程のブレスとは段違いの炎が向かって来る。その上竜種の膨大な魔力。王都でも喰らったら一溜まりもない。
『レイ!』
「ああ、行くぞ。これが俺達の全力だ! 『万物を斬る最上の剣【神剣:斬月剣】ッッ!!』」
上段に構えたリアナを炎に向かって振り下ろす。剣から炎と同等の大きさの光線が放たれぶつかり合う。
激しい光と爆音が生まれ、視覚と聴覚が失われる。
しばらくすると、次第に失われた感覚が戻ってくる。
初めに視界に飛び込んで来たのは、光り輝くガウェインだった。地獄の業火を撃つ前と傷は変わっていない。
『その歳で我の本気と等しいの力を示すか…………。認めよう、次代の天帝よ。お前は強い』
「ありがとう。けど、俺一人の力じゃないぜ?」
『…………そうだな。流石覇属性の上位精霊だ。そこでお主らの力を見込んで頼みがある』
最近そんなのが多いな。こっちの世界では流行ってるのか?
まあ、ガウェインにおいては真面目そうだから無茶な事は言ってこないだろう。…………あの女とは違ってな。
『我が同胞を頼む…………ヌシになら任せそうだ』
ガウェインは最後の言葉と共に光が一気に強くなり、一際激しい光を放った後に姿を消した。
恐ろしく強かったな。もう身体が動かせない。リアナと二対一でも何とか勝てる程度。流石師匠の竜って所か。
一応警戒の為に周りを見ると、ガウェインの身体があった場所には黄金の卵があった。息子ってこういう事かよ………………。
リアナに支えてもらいながら卵に近づく。段々と卵が割れ始め、中から白い子竜が姿を現した。
「ピィ? …………ピィ。キュッ、ピィ!」
子竜は俺を確認すると、産まれたばかりとは思えない程の俊敏さを見せて飛び込んできた。俺は受け止めきれずにそのまま倒れる。随分やんちゃな竜だな。
「……かわいい」
しばらくリアナと子竜をあやしていると急に俺の意思とは別に収納の魔法が発動され、四層で手に入れた巻物が勝手に出る。
触れてもないのに解かれ、それと同時に魔方陣が光出した。そう言えば、五層クリアで巻物が発動されるってアナウンスが言ってたな。
放たれた光がリアナと同じくらいの大きさの形を作る。また面倒事の匂いがするぞ。
態勢を直して見ていると光が収まった。そこには――――――――
「初めまして、おとーさん!」
金色に輝く髪の可愛らしい狐娘がそこにいた。




