第21話 『魔族の娘、想起の少女』
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定期的な執筆を心掛けております。
「おとーさん、お名前は?」
「………………」
「おとーさん?」
ハッ! 危ない危ない、可愛過ぎて意識が飛んでた。
モフモフしたい…………。
「レイ?」
「あ、ああ、ありがとうリアナ。俺の名前はレイ。こっちがリアナ」
「……おねーちゃん?」
「…………お母さんじゃないの?」
「んー、なんかね、おねーちゃんはおかーさんって感じじゃないの」
リアナがその言葉を聞いて膝を突いた。そのままチビドラゴンをいじり出す。そこまでショックか。
「わあっ、おねーちゃん、その子だあれ?」
「…………ただのドラゴン、名前はまだ無い」
「可愛いーー!」
狐っ子はリアナからドラゴンを奪い取ると可愛がり始める。強く言えないリアナが少し不憫だった。
それより、どうして俺がお父さんなんだ? みにくいアヒルの子?
十歳のお父さんって何があったんですかね。五歳の恋人も十分ヤバかったが、十歳のお父さんはもっとだ。
「そう言えば、君の名前は?」
「――――――シーナだ」
狐っ子に名前を聞くと、その答えは俺の後ろから聞こえてきた。
「師匠?」
「よっ坊主。どうやら無事にガウェインを倒せたみてえだな。お疲れさん」
「ありがとうございます。でも…………良かったんですか?」
「それがアイツの望みだったからな」
師匠は笑いながらアッサリと言い放つと、狐っ子とチビドラゴンを撫でた。
シーナは知らない人がいきなり出てきたから少し驚いてはいるが、おとなしく師匠に撫でられている。
そこそこ長い間撫でた後、満足したかのように離れた。
師匠は俺に近づくと、小さい声で話し始める。
「(坊主、あまり驚かないで欲しいんだがあの子は特殊な子でな、魔族と獣人との子供なんだ)」
「はあっ!?」
「(静かにしろ。それに、その魔族ってのが本当の魔王様でな)」
「(…………本当ですか? 冗談だったら全然笑えないんですけど)」
「(ジョークだったら良かったんだけどな。まあ、色々理由があって今まで封印してたって訳だ。それに、魔王の膨大な魔力を引き継いだせいでただの魔族じゃなくて『天狐』ってヤツになってる。魔力量ならお前とそこまで変わらんぞ)」
才能だけで言うなら俺以上って事か。ちょっと理不尽を感じる。
「(って、どうして俺がその魔王の子の親代わりなんですか?)」
「(そりゃお前が――――――――)」
俺と師匠が小声で話しているのを不思議がってか、シーナが小首を傾げて俺達を見詰めていた。今にも抱きつきたい愛らしさである。
何とか自分を制して頭を撫でる程度にしておく。可愛さは武器ですわ。
「お前が覇属性の魔法師だからだろ」
「え? それが何の関係が?」
「この子も覇属性持ちだからな」
「………………そんな馬鹿な」
覇属性の使い手は俺と師匠しかいないハズだ。どうしてこの子が?
いや待て、確か魔法の素質ってのは子供に遺伝する。ということはこの子の父親、つまり魔王の適性属性は――――――――
「なあレイ、魔族って悪い奴らなんかね?」
師匠が俺の思考を遮るかのように質問してきた。
あまり考えた事が無かったな。
「…………少なくとも人間に害を及ぼすっていう点では」
魔族と出会った時、確かにアイツはルナを誘拐した以外何もして来なかった。だからといって、俺の中での魔族が人間の敵であるという認識は消えない。
「魔族にも家族や恋人だっている。言葉だって通じるし、コミュニケーションもとれる。簡単に殺して良いもんなんかね?」
「…………では、逆に師匠は魔族と共存出来ると?」
「さあな。ただ、それも一つの手段かもしれねえな」
師匠はいつも通り不敵な意味を浮かべると、ガウェインと同じように光出した。
「まあ、死者があまり好き勝手しててもな。坊主が迷宮を攻略出来たお陰でやっと成仏できらあ」
「師匠…………」
「シーナ、お前の親父はコイツだからな。どうだ、優しそうなヤツだろ?」
結局、師匠には子供扱いされたままだったな。俺だって竜種を倒せる位に強くなったんだけどなぁ。
これはまだまだって暗に言われてるのか?
シーナは師匠に話しかけられても喋ろうとしない。意外と年上には人見知りするタイプなのかもしれないな。
師匠はそんなシーナに苦笑すると、チビドラゴンを撫でる。
「坊主、コイツの名前早く決めてやれよ」
「え、俺がつけるんですか?」
「当たり前だろ。お前の竜なんだからよ」
名前か…………。師匠は前世の伝説系にしてたし、俺もそうするか。
竜関係の伝説………………そもそも伝説って知らないな。あんまり興味無かったし。
あえて言うなら……………………。
「ジークかな」
「おいおい、竜なのに竜殺しの名前をつけんのかよ。しかもこの世界とは関係ねえし」
「語呂とか良いじゃないですか。なっ、ジーク?」
「ピッ? ピィピィ!」
ジークも気に入ったみたいで師匠の手から離れて飛び回る。君飛べたんすね。
師匠は満足したかのように頷く。光が強くなりその姿が消えかけていた。
「坊主、最後に一つだけ言っとくぞ。俺は最初に世界を背負う覚悟を決めろって言ったが、お前の定義する世界は何だ?」
「それは…………」
少し前に言っていた魔族は悪いかって話だろう。
師匠は魔王を倒したハズだ。その時に何かあったのか?
魔獣は人間に害を与える。それは間違いない事実だ。
だったら魔族は? 俺は実際に魔族の過ちを見ていない。王国史では師匠が悪い魔王を倒す、っていう物語だった。俺が実際に魔族の悪事を見ている訳ではない。
ルナを拐った魔族は確かに悪人だと言えるが、それも殺すまでの理由か? 王族の誘拐はこの世では重罪だろうが、それでも………………。
「じっくり考えるんだな。答えが決まったら、お前の真の敵が見えてくるさ」
師匠は笑うと、ポケットから鍵を投げてきた。
「この鍵はそこの部屋の鍵だ。そこに最後の報酬と地上への転移魔方陣がある。この二年良くやったな坊主、免許皆伝だ」
「…………」
「シーナ、ジーク、お前の親父はコイツだからな。良い子にするんだぞ」
「ピィ!」
やれやれ、最後までシーナは師匠に懐かなかったな。ジークとは相性抜群だったんだが。
裏ラスボスで師匠かと思ったんだが、そういう訳でもない、か。
これで二年間の修行も終わりか。これで少しは父上や師匠に近づくことが出来たかな。
「そんじゃあな坊主、リアナ。二度と会わない事を願うぜ」
「…………え? それって――――――」
『ケケッ、じゃアな坊主どモ!』
「じゃあな!」
終始影の薄かったエクスカリバーと共に師匠は消えていった。シーナとジークを残して。
思えばこの二年間は辛いことばかりだった。
初めて魔法を使おうとした時。初めて魔獣を倒した時。日々の過酷なトレーニング。
それを乗り越えて、今の成長した俺がいる。
辛かったけど、後悔はない。師匠には感謝の気持ちでいっぱいだ。
最後に挨拶をするのを忘れたが、それもそれで良いだろう。突然現れて突然消える。まるでゲリラ豪雨のような人だった。…………いなければいないで、やっぱり寂しいな。
ところで、本当にどうしようこの子達。シーナはまあともかく、竜種であるジークを連れて帰ったらどんな騒ぎになるだろうか。
「ねえおとーさん、おとーさん、早く行こっ」
「なあシーナ、そのお父さんって呼び方やめてくれないか?」
「…………えっ?」
俺が呼び方を変えるように諭すと、シーナはこの世の終わりかのような顔をして涙を浮かべた。
泣いてる姿もかわ――――――ってそうじゃなくて!最低か俺は!
「おとーさん、わたしダメな子?」
「そ、そうじゃない。ただ十歳の俺に子供がいるってのに問題があってだな…………」
「でもおとーさんはおとーさんだし…………だめ?」
がはっ! 何という最終兵器ッ! この上目遣いには勝てる気がしない。
「……わかった。けど、今いる四人以外の人がいる時はお兄ちゃんって呼んでくれよ?」
「うんっ、おとーさん!」
やれやれ、とりあえずこれで良いか。
問題はシーナをどうするかだが…………父上に頼んで養子にしてもらうか?
…………後で考えよう。うん、それが良い。
俺はリアナに向けて苦笑すると、俺が歩きやすい様に身体を支えてくれる。それを見たシーナが反対側を支えてくれた。俺も良い娘を持ったな。
ジークは俺の負担にならない様にゆっくりと頭に乗った。どうやらここを定位置にするらしい。
これで俺の周りもだいぶ賑やかになったな。リアナと二人の時も良かったが、これもこれで悪くない。
全身を痛めながら何とか最後の扉に着く。扉は鎖で厳重に施錠されている。ついさっき渡された鍵を差し込んで南京錠を開ける。自動的に鎖も解け、思い音をあげながら扉が開く。
中は月の光のような明るさだった。どこか神秘的なものを感じる。
そして部屋の中央には、その光で照らされたバカでかい水晶が蒼く輝いて神秘さをより引き出していた。
しかし、そのバカでかい水晶には囚われの少女が眠っていた。黒髪で黒い瞳の、日本人を彷彿とさせる少女。
あり得ない。彼女がこの世界にいるなんて。
忘れる訳がない。この少女だけは――――――――――
「一夏……………………」
前世での俺の妹が、そこにいた。




