第16話 『迷宮第一層:序開』
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長い階段を降りると、目の前には長い通路が続いていた。
迷宮の一階は暗くてじめじめした嫌な感じがする空間だった。しかも、いかにも入り組んでそうで道順を覚えるのに苦労しそうだ。
「レイ、あそこに…………」
リアナが指差す方にフレイムフォックスが二匹いた。
フレイムフォックスはS~Fランクある中でのEランクの魔獣。オークよりもランクが下で、炎を吐き出す以外これと言って特徴がない。これで本当に高難易度なのか?
「リアナ、そこで待っててくれ。『【魔力物質化・覇】【身体強化】』」
俺は素早く魔法で剣を作ってフレイムフォックス目掛けて走り出す。
フレイムフォックスは俺に気付いて炎を吐き出すが、身体強化を使っている俺には遅すぎて当たらない。
フレイムフォックスに接近すると、走った勢いでそのまま首を落とし、もう一匹は剣を投げて突き刺す。
呆気無かったな。これで高難易度とか俺をおちょくっているのだろうか。
倒したフレイムフォックスの素材を剥ぎ取っている最中、リアナがいる方向から剣と剣がぶつかる音が響き渡って来た。
慌ててその方向を見ると、リアナがリザードマンに囲まれていた。途中通った曲がり角から来たのか!
「リアナ!」
俺は短距離瞬間移動の縮地を使ってリザードマンに接敵する。
リザードマンの後ろに行くと、剣に魔力を込めた。
『【斬鉄閃】ッ!』
剣から放たれた斬撃が三体のリザードマンの胴を斬り離す。
続けて狩ろうと思ったが、その場に生きているリザードマンは存在しなかった。俺が倒したリザードマンの他に五匹の死骸が転がっている。どれも綺麗に首から上が無くなっていた。
「……心配する必要も無かったかな」
「ううん、すぐに来てくれて嬉しかったよ。ありがとう」
確かにリアナの目に恐怖の色は浮かんでおらず、疲労もまるで感じていないようだ。Dランク魔獣が束になってもリアナには何の意味を成さないか。
今回のフレイムフォックスは陽動か。俺とリアナを分断させて、明らかに弱そうなリアナを叩こうって寸法だったらしい。
やはり、前に師匠に言われた通り迷宮は生きている。俺達探索者の位置を把握出来て、そこに魔獣を送り込むとか
チートだろ。一方的に嫌がらせし放題かよ。
そうなるとリアナと離れない方が良さそうだ。
「ごめんなリアナ。今度から離れないようにするよ」
「……手を繋ぐ?」
「それは…………少し緊張感が無いかな」
俺は苦笑すると不満そうなリアナの頭を撫でる。手を繋いでいると咄嗟に動けなさそうだからやめておいた方が良いだろう。
曲がり角に数字を一から順に印をつけて進む。ゲームみたいにマップがない以上、道が分からなくなったら大変だ。
何回か道を曲がって気付いたが、一層は魔獣の数はそこまで多くはない。単純に体力を試そうって事らしい。
その点、体力は朝のトレーニングで鍛えているから問題ない。やはり師匠の言った通り今までの修行でどうとでもなる。
もちろん、全然魔獣がいない訳でもなく、何回か曲がり角を曲がれば出会う事もある。通路の奥にはポイズンスパイダーとポイズンビーが十数匹待ち構えていた。
二匹ともDランクであまり高くないが、持っている毒が意外と侮れない。
「リアナ、接近せず遠くから倒そう。頼めるか?」
「……ん、任せて」
リアナは魔獣に手の平を向けると、そこから金色の光線を放った。瞬く間に魔獣の数が減っていく。
俺はリアナに基本遠距離攻撃で俺の援護をして貰っている。俺より剣の腕も上なのだが、女の子に前を立たせる訳にもいかず、必然的に俺が前衛になっている。
リアナは一匹に対して一撃で終わらせ、魔獣が俺に近付くまでも無かった。
「……レイ、お腹が空いた」
「そうだな、そろそろ昼飯にするか」
ここまで結構歩いたし、リアナも魔法で負担がかかっている。ここらで昼飯休憩を入れた方が良いだろう。
素材をすぐに収納にしまって、さっき取っておいたフレイムフォックスの肉を焼き始める。火打石で火を起こすのにも慣れたものだ。
魔獣の美味しさはランクが上がると美味しくなっていく傾向にある。人型の魔獣や虫系は別だが。
フレイムフォックスはEランクの中では最も美味しいが、ランクは低いのでたかが知れている。まあ、乾パンよりはマシか。
一度リアナを膝枕で寝かしてやって探索を続ける。地図が無いので終わりも見えず挫けそうになる。
それでもリアナの泣き言一つ言わない態度を見ていると、もっとやる気を出さなきゃと痛感する。これは俺の試練何だから俺が弱気でどうすんだ。
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あれからどの位経ったか分からないが、一層の事は大体理解出来た。
出てくる魔獣はEランクとDランクのみ。そして、曲がり角は多かったがそこまで入り組んではいなく、最初以外は全部一方通行だった。本当に体力だけを試すつもりらしい。
夕飯を食べて少し休み、次の階段に向かって歩き出す。
身体強化で一気に走り抜けても良いのだが、迷宮にはどんなトラップがあるのか分からないので慎重に歩く。
睡魔に惑わされながらも向かってくる敵を殺し、ひたすら歩く。
そして、今にもリアナが眠りそうになった時、ようやく大きな門が俺らの目の前に現れた。
「……ボス部屋か? 各階層にボス部屋があるなんて聞いてないぞ」
この衰弱仕切った身体でボスと戦うのは結構しんどい。剣のリアナを使う事も考慮した方がいいかもな。
俺は自分の頬を叩いてやる気を入れる。リアナも真似して頬を叩いた。
「リアナ、油断せずに行こう」
「うんっ」
珍しくやる気なリアナと一緒に門を開ける。
ボス部屋は二百メートルトラック位の大きさがあり、中央にはざっと十匹以上のオークと数匹のジェネラルオーク、その後ろに三匹のオーガと赤黒いオーガがいた。
あの赤黒いオーガは亜種か。普通のオーガはCだが、亜種になるとその強さはC+まで上がる。生半可な攻撃では傷も付けられないだろう。
「リアナ、まずは最初に遠距離攻撃で雑魚を一掃しよう」
「……分かった」
これでもリアナは恐怖を感じないらしい。俺は結構ビビってるんだけどなあ。
俺達を見つけて赤黒いオーガが咆哮を発する。それと同時にリアナは同時に多数の光線を放った。
『【斬鉄閃】ッ!』
俺は上級魔法並の魔力を込めて斬鉄閃を放つ。俺も溜めれば遠距離の魔法を使えるのだが、あれは魔力の消費が激しい上に溜めの時間も長い。今回は撃つのはやめておこう。
リアナの遠距離攻撃で雑魚は全部死んだが、亜種のオーガだけは残った。精霊の力でもアイツを殺すのは厳しいらしい。そもそもリアナは剣精霊だしな。普通のオーガを潰せただけでも上出来か。割と簡単に雑魚は倒せたな。
「リアナはそのまま援護を頼む。俺が前衛で行くぞ」
「分かった。気を付けてね」
「ああ、『【金剛力】【明鏡止水】』」
俺は身体強化の上位互換の金剛力と思考力加速の明鏡止水をかけて亜種オーガに向かって走り出す。
オーガも俺を見つけるとその身体に合わない程の俊敏さを見せリアナの光線を避け、大剣を俺に向かって振り下ろした。
――――――カウンターで決める。
俺はオーガの大剣を縮地で避けてそのままオーガの首の後ろに跳ぶ。
『【魔力物質化・覇】』
俺はオーガの持っている以上の大きさの剣を作って上段に構え、それをオーガの首に振り下ろした。
『【斬岩剣】ッッッ!!』
俺が本気で振り下ろすとオーガの首が勢い良く吹き飛び、少し経ってから遅れて死骸が倒れる。流石に回復能力が有るわけでもないみたいだ。
今の所、奥の手を使わなければこれが俺の本気か。次の階層で俺の力はどこまで通用するのだろうか。リアナ本願になりそうだ。
『第一層クリアおめでとうございます。報酬としてデュランダルが贈られます』
俺がリアナの元に戻ると、天井からアナウンスが入った。機会の声で褒められてもなんも嬉しくない。
報酬のデュランダルは何処かと探していると、上からゆっくりと降ってきた。
長剣と言うよりは大剣と言った方がしっくりくるな。全体的に金色で柄の部分だけ紅色であり、蒼の宝石が柄に嵌め込まれている。
ずっしりと来る重さ。あの聖剣と同じ名前なのは師匠が決めたのだろうか。
「…………とりあえず、寝るか」
「…………うん」
思ったよりも疲労が溜まっていたらしく、俺らは一層突破の喜びを分かち合う前に速攻で階段まで行って一緒の寝袋で泥の様に眠った。




