第13話 『銀乙女』
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『アーサー、そろそろ頃合いじゃねェのカ?』
「そうか、今日で丁度一年だったか。坊主もだいぶ魔法を覚えてきたしな」
修行開始より一年が経った早朝、いつもの身体トレーニングを終えて帰ると、師匠とエクスカリバーが珍しく真面目な顔で話し合っていた。
「何かあったんですか?」
「いやな、そろそろお前に精霊契約の儀式を受けてもらおうかと思ってな。そもそも精霊って何か分かるか?」
「……いえ、詳しい事は全く」
俺がいかに読書家と言えども、読んできたジャンルは物語や歴史モノが多い。それらを読んでいて一般教養は身に付いたのだが、詳しい知識は何も無いのだ。
「精霊ってのはな、神が人間に与えた協力者みたいなもんだ。人間が魔族に対抗するためのな。エクスカリバーだって精霊だぞ」
『俺っちハ剣精霊の中デも超上位の精霊様なンだゼ?』
…………いや、悪いけど全然見えねえよ。それもこれも、ここ一年師匠がエクスカリバーを使った所を見た事がないからだな。何か理由でもあるのか?
「精霊と契約する最大のメリットは魔力だ。彼らは人間とは桁違いの魔力を持ち、それを人間に与える。エクスカリバーなんてこの俺の十倍以上の魔力を保有してるんだぞ」
………………だから全然見えないっすよ。
精霊ねえ。考えた事は無かったが魔力を分けてくれるのは助かるな。一度魔力切れを起こしているから尚更そう思う。
「それで、儀式ってどうやるんですか?」
「まあ、儀式って言っても簡単だ。精霊は生まれた時から気に入った人間の中にいるんだ。それを引っ張り出すだけ」
魔力同様自分では精霊を決められないって事か。楽は楽だが、何か物足りない気もする。
「逆に言えば、どの精霊にも気に入られない者もいる。むしろそっちが大半だな。まあ、その点については安心しろ。お前は絶対大丈夫だからな」
「は、はあ」
なぜか師匠は絶対の部分を強調したが、何の根拠が合ってそこまで断定出来るんだ? まさか、フィオナさんみたいに俺の中の精霊でも覗いたのか?
「相棒、精霊契約の儀式の魔方陣ってどんなんだっけか?」
『真円の中に六芒星だロ』
師匠はエクスカリバーの言葉を聞きながら外に出ると、言われた通り魔方陣を書き始める。枝で書いている辺りパッと見子供の落書きにしか見えない。
師匠が人間二人分位の大きさの魔方陣を書いて魔力を込めると、魔力が魔方陣を循環して発光を始めた。
「坊主、魔方陣の中に入るだけで良い。それで契約出来るからな」
…………説明不足過ぎやしませんかねえ? しかも大雑把だし。魔法を使う時みたいなイメージは必要ないみたいだが、どうもアッサリとし過ぎている。
一回深呼吸をして心を落ち着かせてから魔方陣の中に入る。それから徐々に光の強さが増していく。
瞼を閉じていても光が漏れてくる感覚。まるで太陽を見ているようだ。
『やっと、やっと、やっと会えた。けど残念。本当の意味ではもう少し後みたいね。もう少し、もう少しだけ待ってて――――――――』
「――――――え」
この声、確か魔力適性儀式の時にもした。どこか聞き覚えがあって、落ち着かせるような優しい声。
――――――ゴッ。
謎の声に酔いしれていると、急に頭に柔らかいものがぶつかり、そのまま地面に叩きつけられる。…………いくら身体を鍛えても、その攻撃はダメージ入るなあ。
文句を言おうとして目を開けると、俺の視界いっぱいに眩い銀色と優しい肌色が映っていた。
腰まで伸びる絹のような銀色の長い髪に、透き通った蒼い目。傷ひとつ無い綺麗な身体。そして、起伏の全く無い身体。
俺の腰の上には超美少女――――――美幼女が跨がっていた。
大丈夫。この世界に来て何かと幼女と関わりがある俺だが、ロリコンではない。この程度で動じるものか。
「…………えっと、とりあえず君が俺の契約精霊って事で良いかな?」
「………………」
精霊ちゃんは俺の顔を見ながら可愛らしくコクンと一度だけ頷く。よし、コミュニケーションは取れそうだ。
「俺の名前はレイ。君は?」
「……………………リアナ」
溜めに溜めた末、やっとポツリと呟くようにして言った。
初めて聞く彼女の声は、あの謎の声とは違っていた。
□■□■□■□
その夜、いつもの食卓に一人分の夕食が追加されていた。
「しっかし、コイツはたまげたな。まさか最上位の精霊サマだとはな」
「ええ、そうには見えないですよね」
俺の膝の上に目を向けると、俺に身体を預けながら真顔でご飯にありついている幼女がいた。
あれから日中を使って色々質問した所、リアナの事が少しだけ分かった。
リアナの使う属性は覇属性。人形をしていて、元から名前がついている事より、最上位の精霊という事も分かった。
逆に、分かったのはそれだけ。
一番驚いている事は彼女が記憶を無くしている所。そして、恐らくだがその為リアナは完全な覇属性の精霊ではないみたいだ。
エクスカリバーが言うには、リアナの魔力量は彼(?)の半分程度で、最上位の精霊ならもっとあるという話だった。
それでも、この幼女の中に師匠の五倍以上の魔力があると考えると末恐ろしい。
5
「………………レイ」
目の前のご飯に夢中だったリアナが急にこっちを向くと、涙目+上目遣いの最強コンボで俺を見てきた。
手には奇妙な持ち方をしているフォーク。それだけで全てを察した。
「……あーん」
「あむっ」
俺が自分のフォークであーんすると、今日一番の勢いで食いついた。動物にエサを与えてるみたいでちょっと面白い。それに可愛い。ああ、和むなあ。
それにしても、リアナは本当に美味しそうに飯を食べる。夕食が運ばれてきた時も目を輝かせていた。精霊って人間と同じようにご飯を食べるんだね。
半日付き合ってみて分かったが、リアナは感情をあまり表に出さない。話す時もいつも真顔で少し戸惑ってしまう。
「それにしてもなつかれたな。そんだけ仲が良さそうなら心配ないだろ。坊主、明日からは精霊の力の使い方を教えてやるよ」
「よろしくお願いします」
頭を下げたいが、如何せんリアナが膝の上にいてそれもできない。なつかれて嬉しいが、ここまではちょっと…………
「それじゃリアナ、電気消すぞ?」
リアナと一緒に風呂に入ってから自室に戻って寝る準備をする。意外にも風呂はすんなり入ってくれた。
本当はリアナと部屋を別にした方が良いのだが、このログハウスも大きいわけではないので、必然的に俺と同室になってしまう。
当の彼女は、気に入った俺のシャツを着て先にベッドに入っていた。って、もう熟睡してるし。
隣で寝るリアナの髪を撫でながら、今日一日を思い返す。
一番の謎はあの声だ。甘く優しい声。リアナの声じゃなかったら、一体誰の声なんだ?
適性儀式の時との共通点は思いつかない。強いて挙げるならどちらも魔方陣がある事位か。それだけじゃ判断材料にはならないか。
そのまましばらくリアナの髪を撫でていると、くすぐったそうに身を捩って俺の身体に抱きついた。その顔には、微妙にだが確かに笑顔が浮かんでいる。
結局、また俺の周りに美幼女が現れてしまったという事らしい。




