第12話 『殺生』
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修行を始めてから三ヶ月が経過しようとしていた。
最初に魔法を使う所までは恐ろしいほど順調であったが、そこから一旦魔力操作や剣術、体術に時間を割き、結局使えるようになった魔法は無属性魔法の身体強化、魔力爆破、魔力物質化、覇属性の魔力物質化・覇、明鏡止水の五つだけだった。
魔力爆破は球体状にした魔力を爆発させる魔法である。威力は込める魔力の量によって変わるので一概には言えないが、中級魔法なのでたかが知れている。
それに比べて、新たに覚えた他の三つは攻撃系の魔法ではなく、身体強化と同じ応用系の魔法だ。
魔力物質化は魔力を物質に変換する魔法。主に剣や槍等を作ったりしている。
覇属性魔法の魔力物質化・覇は魔力物質化の上位互換で、硬度等が格段に上がる。
明鏡止水は思考を加速するだけの簡単な魔法に思えるが、効果は予想以上だ。
そして、今俺と師匠はというと、木上からゴブリンを息を潜めて観察していた。
アーサー王の事を師匠と呼ぶのにも大分慣れ、今では違和感無しで言えるようになってきている。
師匠も最初は照れ臭そうだったが、今は結構ノリノリだ。
「坊主、そんじゃ第一の試練だ。あのゴブリンを殺せ」
「それだけですか?」
「もちろん、条件付きだ。武器は魔力物質化で作った長剣一本のみ。それ以外の魔法の使用は一切禁止とする」
…………一見単純そうに見えるが師匠の事だ。何か考えがあるのだろう。
魔法の使用を禁止という事は実戦で剣の練習をするという事か。いや、何か煮え切らないな。
「ほれ、早くしろ」
「は、はい。『【魔力物質化】』」
俺が詠唱すると、手の中に一振りのシンプルな剣が生まれた。魔法の使い始めは中々デザインするのが難しかったのだが、今では慣れたものだ。
「よし、それじゃあホイ」
「何ですか、それ?」
師匠はポケットから黒の腕輪を取り出すと、無造作に俺の腕に取り付けた。
重さはあまり感じない。一体どういった意図が?
「それはな、黒鉄の腕輪って言ってな、魔力操作を阻害する働きがあるんだ。それで、お前は魔法を使えなくなった。さらに、ドーン!」
「へ――――――――うわっ!」
師匠は腕輪の説明をすると、前触れも無しに俺を木から突き落とした。
何とか受身をとって立ち上がると、目の前にはゴブリン。二つの緑色の瞳と
目が合った。
『ギギッ!』
先に動いたのはゴブリンだった。手に持っていた棍棒で俺を殴ろうとしたが、咄嗟のバックステップでそれを回避する。棍棒が空を切った。
俺はいつも通り剣を中段に構え、走り出そうとする。
しかし、足が一歩も動かない。ただ震えるばかりで俺の命令を聞かない。気付かないうちに腕も震えていた。一つの命を奪う事が、平和な日本に暮らしていた俺には不可能だった。
震える俺を見て、目の前のゴブリンは獰猛に笑った。まるで、動けない羊を目の前にした狼のような笑み。
もし俺が無抵抗のままだったら、コイツは俺の事を殺すだろう。何の躊躇いもなく。そんなヤツに慈悲を与えるのか? コイツは生かす価値のあるヤツなのか?
敵だ。目の前の魔獣は敵だ。敵は殺す。殺す殺す殺すころすころすコロスコロス――――――――!
いつの間にか身体の震えは収まっていた。そして、俺の剣には気持ち悪い緑色の液体が付着していた。
「…………付いて来い」
師匠は木から飛び降りると、俺の腕に嵌まっていた腕輪を外し、それ以上言わずに森の中へと歩き出した。俺も無言で後を追う。
少し歩くと開けた場所に出た。そこには十体位のオークの群れがあった。
オークはDランク魔獣であり、Fランク魔獣のゴブリンとは格が違う。
「殲滅しろ。ただし、魔力爆破は使うなよ」
『…………【身体強化】【魔力物質化・覇】』
俺は自身に身体強化の魔法をかけると、魔力物質化・覇で自分用の剣を作り、槍を二ダース作って頭上に浮かべた。
それを二体ずつ計四体に向けて射出し、悠々と残ったオークの元に近づく。
『ギャアアアアアア!』
槍が直撃したオークは声を上げて絶命する。それと同時に、残ったオークが一斉に俺の方へと向いた。
俺は足に追加で魔力を込め、近くのオーク目掛けて跳躍する。
一振りでオークの首を斬り落とし、そのままの勢いでもう一体の頭に剣を突き刺す。
切り口から緑の液体が噴射され俺の服を汚すが、気にせず死骸を蹴って剣を抜く。
――――――後四体。
そう思いながら後ろを振り向くと、一体のデカイ棍棒を持った大きいオークと、その後ろに隠れた三体の小柄なオークが俺に怯えた目を向けていた。
恐らく母親オークと子供オークなのだろう。この群れは家族だったに違いない。
「…………師匠が言いたい事はこういう事なんですね」
「ああ。ここでお前が殺さないと、コイツらは他の人間を殺める事になるだろう」
コイツらは人間に害悪をもたらす魔獣だ。頭ではそれを理解している。それなのに、またしても俺の身体は動かない。
「最初の覚悟は生き物を殺す覚悟だ。魔獣とは言え、生き物は生き物。さあ坊主、お前に出来るか」
「……………………」
コイツらも敵だ。俺や師匠、父上や母上、グレンやルナ、そしてエリサを殺そうとするヤツ。生かしておけない。
敵だと、生かしておけないと思い込むしかないんだ…………!
『…………【魔力物質化・覇】』
俺は残った魔力で百本以上の槍を生み出すと、それを容赦なくオークに向けて放った。肉に突き刺さる音、飛び散る音が聞こえてくる。
「…………ハアッ…………ハッ」
魔力切れの症状が出て、倦怠感が俺を襲う。しかし、この倦怠感はそれだけでは無かった気がした。吐き気すらも出てきた。
これが最善だった。生かすなんて選択はなかった。ヤツらは人間にとって不利益しかない存在。これで良い。そう、これで――――――――
次の投稿は来週の金曜日になります。




