第11話 『想いのチカラ』
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馬車で夜を明かしてからの翌日は、お祖父様に挨拶をしに行ったり、修行地に拠点を作ったりととても忙しかった。
中でもお祖父様にアーサー王の話をするのが大変だった。アーサー王本人と中々信じず、公爵家騎士団の全員をダウンさせるまでに時間がかかった。
しかし、逆にその他の事は意外とどうにかなった。
修行地となる山には魔獣がそこそこいたが、アーサー王が全て拳だけで倒す。
そして山奥まで行くと、彼はエクスカリバーを背負ったまま魔力で剣を作ってそれで木を何本も伐り、たったの数時間で立派なログハウスを作り上げた。そのまま周囲に魔獣避けの結界を張り、夕食は公爵家領地の城下町で買った食材で作って食べ終わり次第寝た。
そんな化け物じみた行為を見た次の日、俺とアーサー王は昨日木を伐りまくった場所にいる。
「坊主、今日はいいが明日から朝起きてすぐにトレーニングをするぞ。一時間のジョギングに各種筋トレ及び体幹トレーニングを一時間だ」
「…………多くないですか?」
「魔法剣士になるならば身体を鍛えて当然だろうが!」
ちょっと待て。いつから俺は魔法剣士になるって言った? 純粋な魔法師って選択しもあるんだが。
そう言えばアーサー王物語では、派手な魔法で敵を倒す話なんてなく、終始エクスカリバーを使っていたような…………。
さてはこの男脳筋だな! 世界で二人しか使えない属性持ちなのに、なんとも勿体無い事だ。そして、その脳筋を俺にまで押し付けようとするな。よせ、それはありがた迷惑だ…………!
「ランドルフから色々聞いたが坊主、お前って魔法の勉強はしていたんだな」
「ええ、まあ少しだけなら」
「ここで問題、無属性魔法の強化と言えば?」
「身体強化ですよね」
無属性魔法とは、適性を選ばず誰でも使える万能型の属性である。
例えば、俺は覇属性、グレンは火属性だが、たまにルナみたいな二種類以上の属性を使える者もいる。
魔法には属性が存在するが、無属性はどの属性持ちでも使うことが出来る魔だ。
その中でも、身体強化は下級応用魔法。
魔法には階級もあり、それぞれ下級、中級、上級、王級まである。要するに、身体強化は一番習得しやすい魔法だ。
「正解。坊主、俺は近接戦闘系の魔力を中心的に教えていくからな」
「分かりました」
「それでは、お前には今日中に身体強化を覚えてもらおう」
「へ!? ちょ、ちょっと待ってください。普通の人間が最初の魔法を使えるのには平均一ヶ月かかるって話ですよね?」
「…………お前、普通の人間レベルで満足か? それに、普通の人間が一ヶ月かかるのは魔力が少ないのが大きな理由の一つだ。それなら坊主は心配ねえだろ」
確かに、俺の魔力はそこらの魔法師団の団員より多い。だからと言って一ヶ月が一日まで少なくなる訳ないだろう。このオッサン、思ったよりスパルタかもしれん。
「手本は見せてやるよ。【身体強化】!」
アーサー王が詠唱すると、彼から魔力が放出され、周りの草や葉を揺らす。
「いいか、コツは自分の体から魔力を出し、それを纏うイメージだ!」
「いやいや、分かるわけないじゃないですか!」
「ハッハッハ。てな訳で俺も鈍った身体を鍛えるために王都まで走ってくるわ」
「って、ちょっと待――――――」
俺が文句を言おうとした瞬間、俺達の間に突風が生まれ、俺の身体が吹っ飛び勢い良く木にぶつかる。
「ッッッ~~~~」
痛みを耐えながら目を開けると、そこにはもうアーサー王の姿はなく、王都側にある木がことごとく折れていた。あの野郎、帰ってきたら絶対文句言ってやる。
気を取り直して一度立ち上がり、服についた葉っぱや土を払う。圧倒的時間不足だ。早く修行に取り掛かるとしよう。
とりあえず、アーサー王がやっていた通り両手を握って目を閉じる。
「身体強化!」
一応詠唱はしたものの、当然何も変化はない。
何か痛々しいなあ。一人山奥で厨二病満載の単語を叫ぶ。酷い羞恥プレイだ。
「身体強化、身体強化、身体強化!」
がむしゃらに詠唱しても何も変わらなかった。
当てずっぽうじゃダメだ。何かが足りない気がする。魔力はある。詠唱もしている。これ以上の事は魔法書には載っていなかった。一体後は何が必要だ? アーサー王はどうやって魔法を使っていた? 分からんが、時間がないのは事実。がむしゃらでも何でも良いから試していくしかない…………!
「おいおい、まだ使えてなかったのか」
ふと気が付くと、アーサー王が大きな猪や山菜を抱えて悠々と歩いてきていた。
空には赤みが差しており、あれからだいぶ時間が経っていた。どうやら、空腹にも気付かない程集中していたらしい。大学受験の時より集中していたと思う。
「…………アーサー王、ヒントをもらえないでしょうか?」
「ああ? ったく、しゃーねーなー」
俺がやむを得ずアーサー王に質問すると、彼は心底面倒くさそうに答えた。
「坊主、これは俺の師匠の言葉何だが、魔法ってのは想いのチカラらしいぞ」
「想いのチカラ…………?」
アーサー王はそれだけ言うと、手を振りながらログハウスへと帰って行った。それだけか? もっと何か、具体的な一つだが欲しかったんだが…………
想いのチカラ…………想像力? いや、それだけじゃない気がする。
想い、想い、想い。何を想うのだろうか。俺が魔法を使うイメージ?使った後の光景?
いや、多分そうじゃない。何かが違う。発想を変えるんだ。常識で物を考えるな。
俺だったら何を想う? 何を願って魔法を使う?
リベンジ
一番最初に浮かんで来た言葉がそれだった。
前世での失敗を取り戻す。前世でなれなかった自分になる。
今なら使える。そんな確信があった。
『…………【身体強化】』
詠唱した瞬間、俺の身体から魔力が放出され、俺を包み込む。それだけに止まらず、俺が放出した魔法は地面を抉り周りの木を薙ぎ倒した。
身体が軽くなる感覚。いつまでも走っていられそうな錯覚に陥る。これが魔法! これが想いのチカラ、願いのチカラ!
「ハッ!」
俺が放った拳撃で木がバキバキと音を立てて根本からへし折れる。
楽しい! 別に俺に破壊願望があった訳じゃないと思うが、純粋に楽しい!
ずっと身体強化を使っていると、急に頭痛が俺を襲った。同時に吐き気を催し、その場で倒れる。
寒い。この感覚、似ている。死の瞬間に感じたあの感覚。二度と感じたくないあの嫌な感覚。ただ孤独を感じる。
「魔力の使いすぎだ、バカ」
「…………アーサー王?」
いつの間にか俺の隣にいた似合わないエプロン姿のアーサー王は俺を持ち上げると、そのままお姫様抱っこの要領で俺を運んだ。本当なら暴れる所だが、そんな気力もうどこにもない。ただされるがままにしていた。
このオッサン、暗殺術でも身に付けてんのか? さっきもそうだったが、気配が全くしなかったぞ。
「分かったか、魔法の感覚」
少し無言の時間が続いたが、唐突にアーサー王が話しかけてきた。いつもより何処か優しそうな声音だった。
「…………想いのチカラ。分かりましたよ、師匠」
「…………そーかよ」
アーサー王は一瞬驚いたような顔をしたが、またいつも通り屈託のない笑顔を見せた。




