第9話 『邂逅』
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その日の夜、俺は少し暗い気持ちで父上のアーサー王に関する話を聞いていた。
失礼な話だが、俺は元々アーサー王の物語は自分で調べていたし、気分的にも父上の話は全く耳に入ってこなかった。
グレンが儀式の間から出ていった理由は大体の予想がついている。
アイツは意外と負けず嫌いな所があるからなぁ…………。
しかし、グレンのことも心配なのだが、俺もやっと儀式が終わったのだ。これで本格的に魔法の練習をすることができる。まずは誰でも使える無属性魔法から始めるとするかな。
「レイ、明日は祝日だから丁度良い、俺と剣の訓練をしないか?」
「剣、ですか?」
「アーサー王はな、勿論優れた魔法使いでもあったのだが、それ以上に凄腕の剣士だったと言われているのだ。俺と同じ魔法戦士ってやつだ」
魔法戦士って厨二感満載の単語が出てきましたよ…………。
魔法とかには慣れてきたが、まだ厨二発言を聞くと笑ってしまう。
落ち着け、ポーカーフェイスだ。今こそ社畜として培ったこの力を…………!
「ランディ、レイくんも折角儀式が終わったのですから、好きなようにさせてやってみては如何でしょう?」
「しかしセレス、王国男児としてやはり剣は――――――」
「御食事中大変申し訳ございません。ランドルフ様にお耳に入れたいことがございまして」
珍しく食堂にいなかったワイズが急に入ってきたかと思うと、少し慌てた様子で話し始めた。いつもなら食事が終わった後に報告するはずなのだが、そこまでの緊急事態なのか?
「実は、屋敷の外に自らをアーサー王と名乗る輩が現れまして…………」
「何ッ!? そんな不届き者がいるのか。分かった、すぐに行こう」
父上は激昂しながら食堂を出ていった。
俺の属性が分かったタイミングでアーサー王と名乗る者が現れるなんて、とても偶然とは思えない。
気になったので後をついていこうとする。母上は心配していそうだったが、苦笑しながらも見送ってくれた。
父上に気付かれないように庭に出ると、門の外で何人かが激しく口論しているのが見えた。その中に、見覚えのない二十代前半の黒髪黒目の男がいる。確かにアーサー王と似ているようだが…………
「おーい、お前がレイか! 早くコイツらの誤解を解いてくれよ」
黒髪の男は俺に気付くと、大声で俺の名前を呼んだ。
この男、どうして俺の名前を知っている? 何でこんなに馴れ馴れしいんだ?
「何故レイの名前を知っているのだ!」
「俺の雇い主から聞いたんだよ。あ、ソイツの正体は教えねえからな」
「貴様、からかっているのか!」
父上は腕を振り上げると、その拳に炎を纏ってそれを男に目掛けて降り下ろした。
男はため息を吐くと、片手で父上の拳を受け止めた。
「なん…………だと」
「二十点。そこそこ良いパンチだが、そんなもんじゃ魔将軍には歯が立たねえわな」
父上もまさか受け止められるとは思っていなかったらしく、面を食らっていた。
この男、魔族のことも知っているのか。まさか、本当に………………?
「父上、もしこの者が本物のアーサー王なら、貴方の魔力は金色の筈です」
俺は男に近づくと、魔力を見せるように言った。
「確かにそうだな。お前、頭良いな!」
男は担いでいた剣を構えると、それに魔力を流した。
流れた魔力の色は、辺りを照らす黄金の輝き。見間違える訳がなかった。
『ったク、久し振りに使わレたと思ったラ松明の代わりじゃねえカ』
「悪かったよ。こうするのが手っ取り早いと思ってな」
金色の魔力に喋る剣…………間違いない、あの剣がエクスカリバー。そしてあれが本物の――――――
「ってなわ訳で、俺がアーサーって理解できたな。ほんじゃ、適当によろしく」
□■□■□■□
あれからすぐに、父上はアーサー王に土下座し、何とか事なきを得た。と言っても、当のアーサー王は笑いながら父上の肩を叩いていたが。
俺の目の前で土下座をする父上は何ともカッコ悪かった。
「おいランドルフ、俺がいた時よりもずっと飯美味くなってんじゃねえか。それに、ルーミリア王国もまだ続いていたとはなぁ」
今はアーサー王を屋敷に招いて一緒に食事の続きをしていた。
アーサー王はビックリするほどフレンドリーで、まるで親友かのように皆に接する。コミュ力の差を痛感した。
「さて、と。そろそろ真面目な話でもすっか」
『お前ガ真面目な話をすルなんて、結構気持ち悪イもんだナ』
「やかましい」
アーサー王はおしゃべりな剣を小突くと、姿勢を正した。それに釣られて俺達も背筋を伸ばしてしまう。
「先に言っておくが、俺がどうして生きているかは言えん。雇い主サマからの言い付けでよ」
俺達の最大の疑問を先に答えられてしまった。残念だが仕方ない。今度酔わせてちゃっかり聞いてみるか。
「坊主、まずは覇属性って分かって良かったな。嬉しいだろ?」
「あ、ありがとうございます」
「んでもって、ご愁傷さま」
「………………はい?」
アーサー王は急に属性の話を持ち出したかと思うと、これまた急に哀れんだ。意味が分からん。何かの意図があるのか?
「二代目天帝になれて嬉しいとは思うが、それと同時にお前には背負わなくちゃいけない物もできちまった。とても悲しいことにな。何だと思う?」
背負わなければいけない何か。今までそんなこと考えもしなかった。ただ、自分があのアーサー王と同じ属性って分かってはしゃいでいた。
悲しいこと………………か。意味が分からん。
「…………期待でしょうか?」
「うーん、何ともお利口さんらしい考えだ! だが残念、そんなチンケなもんじゃあないな」
「……………………」
うわー、今凄くイラッと来ましたよ。お利口さんって、アンタ俺の何を知ってんだよ。この無駄にイケメンな男腹立つぞ。
チンケなものじゃないって言われても、サッパリ検討もつかない。何を意図しているんだ。
「正解はな坊主、このセカイだよ、意味分かるか?」
「………………は?」
「ククッ、あーその間抜け面最っ高!」
俺がただ驚いていると、アーサー王は腹を抱えて笑いだし、エクスカリバーは剣身を机にカチカチと打ち付けて笑った。
コイツら、人にフラストレーション溜めさせる天才か。
「いやー、まあ真面目な話、魔族って知ってるだろ」
「はい、実際見ましたから」
「へえ、そんじゃ話は早い。というか、ここまでヒント与えたんだから分かってくれよ」
「…………魔王の討伐ってことですよね」
アーサー王は俺の答えにただ歯を見せて笑った。しかし、それだけで充分だった。
魔族が現れたと言うことは、必然的に魔王もいるはず。それを倒すのが俺?
「し、しかしアーサー王、いや陛下、レイはまだ子供です。世界を背負うなど…………」
「面倒だからアーサーで良いぞ。まあ、そりゃ普通の子供だったら無理な話だな」
アーサー王はそう言うと、意味ありげな笑みを俺に見せた。この人はやはり俺の秘密を知っているのか?
いや、情報源は雇い主だって公言していた。俺を転生者だと知り、尚且つ俺が覇属性の使い手だと知っている。一体何者だ?
「坊主がやる気なら俺が明日からでも稽古をつけてやるぞ? 人類存亡の危機だ。」
「………………」
「ま、今すぐとは言わねえ。一晩じっくり考えるんだな。ランドルフ、今夜ここに泊めてくれねえか?」
「は、はい!」
アーサー王は言うだけ言ってさっさと食堂から出てしまう。残ったのは俺と母上とエミリィだけだった。食堂が急に静寂に包まれる。一刻でも早くこの場所から逃げ出したかった。
「エミリィ、今日はもういいから。母上、失礼します。休みなさい」
「レイくん…………」
母上は何か言いたそうだったが、それに気づかないフリをして食堂から出て自室に入る。そのまま寝間着に着替えずにベッドの上に寝転がった。
正直、急に世界を背負えって言われても、全く実感が湧いてこなかった。
前世はただのサラリーマンだった俺が、魔王を倒す勇者になってくださいと言われて、はいそうですかと答えられる訳がない。
勿論、魔王と戦うってことは死の危険がつきまとうことになるだろう。折角転生したのに、俺はもう一度死ぬのか…………?
結局、その日のうちに結論が出ることはなかった。




