25話 なんで宇宙は真っ黒なの?解決編
〈なんで宇宙は真っ黒なの?解決編〉
〔二胡 仁悟の視点〕
ハマグリちゃんの姿は対になるようになっていた。
黒く、暗く、威圧的な目と、ほのかに紅く、明るく、優しさの含んだ目。
オーロラのドレスのような光を纏っている方と、ブラックホールの振袖のように闇を羽織っている方。
この2人はワイに質問を投げかけた後に、勝手に話し始めていた。
夢に現実感を求めるのはお門違いなのかもしれない。
でも、言わせて欲しい!
こんな非現実的な夢があってたまるか!
「やりたいことは分かった。この質問での、二胡仁悟の答えを、私が誘導することで浜宮離子…お前の作り出したこの状況を打破するんだな。」
「そーデス。ニコちゃんのコタえで、ここからデられるとイイね!」
「でも、どうせお前が『トモダチになるぅん!』とか言って、“せめぎ合い”という名の邪魔をしてくる訳だ。」
「面倒くさいぞ。私は今回は何もしない。勝手にお前達で頑張るんだ。いいな。」
そう言うと、光を纏っている方のハマグリちゃんは空中に浮遊して、透明なハンモックに揺られるようにリラックスしていた。
「ニコちゃんのゆったトーリね。」
「ホントにキムズかしいーんだモン。」
「え?あ。うん。うん?」
闇を羽織るハマグリちゃんの言葉は半分しか耳に残らなかった。
考えているのは…そう。
この夢が、どうすれば覚めるのか。
その答えをワイが持っている?は?
夢に閉じ込められている?は?
「何か…ワイは何かしないと…いけないのか?」
「ニコちゃんって、ジブンのことワイっていうのね!WHY?」
「そうだ!ここはワイの部屋だ!じゃあ…」
パソコンの電源ボタンを点ける。
電子パネルのブルーライトの光は目に悪い?
そんなわけあるか!この優しい光を見ろ!
まるで仏様の後光を見たときのような温かさだ!
あぁ。愛しい故郷に帰ってきた。
嬉しいのか? 嬉しいに決まってる!
そのときの涙の、頬を伝う温度がはっきりと分かったんだから。
「あー!アー!あー!!アー!!」
「ニコちゃん。ワラわないで…イマのニコちゃんがワラってヨロコぶとウルサい…」
「共感できるな。全く。コイツを“脱出の鍵”に選んだのはミスだな。コイツはネットが使えるこの空間なら無限に居座るぞ。」
「いや!答えならすぐに手に入るさ!だってインターネットだから!検索エンジンの大先生たちはみんな、どんな学者や名誉教授よりも多彩な知識を蓄えてるんだ!」
「“なんで宇宙は真っ黒なの?”この質問も、検索すれば一瞬で…」
キーボードで、“なんで宇宙は…”の辺りで手を止める。
そうだ!ここで答えてしまってはもうインターネットが使えないんじゃないのか?
光を纏って空中に浮遊しているせいで間接照明か、人型のシャンデリアみたいになってる方。
喋り方のおかしなハマグリちゃんの言った通りになるのは悔しいが、インターネットが使えるのならずっとここでも悪くない。
むしろ良い!
「いつでも答えは出るから、とりあえず…掲示板で挨拶だけでも…5分だけだから!ね!ね!」
「どーぞ。ニコちゃんをここにツれてきたのわワタチとママだしね。」
なんだか、さっきから、現実と同じ喋り方のハマグリちゃんから意味深なことを言われている気がするが、掲示板にいけるのでは、大して意識することもなかったのだ。
「あれ?レスつかないな。話題はバッチリなんだけどな〜?“世界が崩壊したのに無傷ワイwww”。夢なんだから、自作スレが伸びても良くね〜?」
「…浜宮離子よ。これが二胡仁悟の本性だ。友達をしっかりと選ばないといけないのにはこういう理由がある。そして、私の抱える本性はもっとお前を苦しめるぞ。」
「ニコちゃんのことわね、シりたいとオモわなくてもダイタイヨソウついてるモン。だからワかってたことだからいいモン。」
「でもね、あなたのことはワからなかった。じゃあ、トモダチになる!ゼッタイに!」
「じゃあ一つ言おうか?友達のなり方に定義はないぞ。“せめぎ合い”?笑わせるなよ。お前とお前の信じる浜捩子の能力は強力で厄介だ。だが同時に脆いぞ。こんな簡単な常識でさえ蓋をするんだからな。」
「でも…だって…ワタチがトモダチにならないと…」
「必要ないと言っている。しつこいぞ。」
「じゃあなんでナいてるの?なんでアナタがナいたらアメがフるの?」
「…それを知る必要もない。…分かったよ。もう追及するな。しないなら、私は二胡仁悟と協力して質問への答えを探してやる。」
聞こえないふりをしていた。
現実とか夢とかもう関係ない。着いて行けない。
「おい。二胡仁悟。良いことを教えてやるぞ。そのパソコンはもう新しい情報が追加されることはない。止まっているんだ。世界が終わったそのときでな。」
「わ…ワイしかもうログインしてない?」
「ああ。そうだ。だからもう新しい何かが生まれることはないぞ。もっとも、インターネットでは毎日同じものごと、同じくだりの繰り返しだからなんの問題もないだろうがな。」
「じゃあ、二胡仁悟。君に真実を伝えてやる。」




