26話 なんで宇宙は真っ黒なの?解決編その2
〈なんで宇宙は真っ黒なの?解決編その2〉
〔二胡 仁悟の視点〕
「知りたがっていただろう?この世界がどうなっているか。」
もう1人の闇を羽織っているハマグリちゃんがウインクした。
約束が守られたことを告げているようだった。
インターネットに触れる手は至福で満ち満ちていたはずなのに、気がつけば勝手に止まっていた。
「うん。教えて欲しい。」
振り向けば、光を纏うハマグリちゃんは床に足をつけていた。
ワイの顔をじっくりと見ている。
「終末を迎えたあとのこの世界は、そこにいる一見するとなんの変哲もなさそうな4歳児の、浜宮離子によって、如何様にも姿を変える。」
「……真実って…それだけ!?」
「フム…内容に対して驚くのではなく、そもそも絶対的な拒否反応をとっているのか。まぁ確かに、普通の人間には刺激が強いかもな」
いや、普通とか異常とか関係ない。
なんのことか意味不明だ。
だって、世界はもうちょっと複雑で壮大なスケールなはずだ。
「内容については思うことはないのか。」
あるに決まっている!当たり前だ。
そこで座布団に座って、座布団から出てる綿をむしり取っては部屋に投げ捨てている子供が、世界を変える力を持っているはずがない。
持っていて、座布団の質を変える力くらいのものだろう。
座り心地が悪くなるからヤメナサイ!
「が、私達がここから解放されるためには信じてもらうしかないのだ。」
「そもそも、君達この団地の住民が、この世界で存在し始めたタイミング。それは浜宮離子と浜捩子の問答。その答えが、“他者との関わり”だった。この答えが出されたタイミングで君達は生命活動を始めることになった。」
「申し訳ない…けど、それで信じるわけ…ない。」
「ああ。私だって無理矢理信じこませたい限りだ。だが、私はこの世界の浜捩子と約束した。だから、私の力は使わない。」
「説明を続けるぞ。」
「君自身に起きた変化で言えば、それこそ君とそこの浜宮離子の距離感だ。」
「友人との関係を作るのは“せめぎ合い”だって答えが出たところで君と浜宮離子との関係は変化した。」
「多分だが、その答えの出たあと、言い争ったり、細かな感覚の違いに戸惑ったりすることばかりだったはずだ。」
「ああ。まぁ…確かに?」
「こんなこと言うのはココログルしくてしょーがないが…」
いや、なんて分かりやすさだ。
心苦しくなんて思ってないだろ!
「…その答えがなければ、君は今でも浜宮離子とも、浜捩子ともまともに話せるようにはなっていないんだ。」
「そんなこと…」
あると思った。あれだけ生身での人との付き合いを拒絶してきたワイがどれくらい過ごしたのかは分からないが、ほんの少ししかせっしていない、家族でもない他人とここまで話せるのか?
自分でも信じられない。
勇気とか、世界がダメになったショックで吹っ切れたとか、そういう理由だと自分では思っていた。
が、確かに違和感がないわけではなかった。
「じゃあ、友人としての付き合い方が、“せめぎ合い”だから、ハマグリちゃんと浜さんと喋れるようになったって?」
「そうだ。“せめぎ合い”が、交友関係の常識、基本、新たな固定観念となった。」
「浜宮離子は、この世に概念を追加する能力をもつ。」
「概念を追加する能力。その発動条件は、『浜宮離子が質問したとき、浜宮離子の納得出来てかつ感動する答え』この答えがそのまま概念として追加される。」
振り返り、現実?で会った方のハマグリちゃん。
闇を羽織っている方のハマグリちゃんを見た。
胃が痛い。頭に脈打つ感覚が広がる。
これは…まさか…恐怖?
「…寝かせてくれ。」
「寝てもこの部屋のままだ。が、寝たいならそうすれば良い。君の気持ちはわかるからな。」
インターネットができる喜び?
確かにあるさ。でも、そんなんじゃ済まない程の衝撃が頭を打ち付ける。
横になっても寝ることなど出来る筈がない。
さっきまでの説明が正真正銘の真実であること。
その1番の証拠はワイがハマグリちゃんや浜さんと話せるようになったことじゃない。
この、今の状況そのものだ。
ワイの記憶や人生経験で、こんな夢が見られるわけがない。
ハマグリちゃんが2人に増えて、そのうち片方だけがワイの想像もつかないような世界の理を断りもなく伝えてくる。
どうしよう。
薄目で2人のハマグリちゃんを見る。
一見すればただの4歳児だって?
そんなことなかったゾ。
起き上がって、インターネットで名作コピペの数々を楽しむ。
2人のハマグリちゃんはどちらも信じられない程に黙っていた。
そうか…このことを知ればもう普通の友人、人間関係には戻れない。
ワイがハマグリちゃんとちゃんとした友人だったのかは分からない。
が、少なくともあの説明の通りなら、おそらくお互いに友達だと思っていたことがわかる。
その友達に自分の1番の秘密を話す。
秘密は友達だからこそ話せるなどと言うが、友達だからこそ秘密を話すのが緊張するんだ。
まぁ、ネッ友にも秘密を共通の秘密を話すこともなければ、秘密なんて持ったこともない人生だが。
とにかく、ハマグリちゃんは覚悟を持ってこの場を用意したのではないだろうか?
なんのために?
雨のたくさん降り続ける時期を知りたい。
思い出した言葉がある。
『なんでアナタがナいたらアメがフるの?』
そうか。
闇を羽織ったハマグリちゃんは光を纏ったハマグリちゃんを助けたいんだ。
何故か、光を纏っている、喋り方が妙に大人なハマグリちゃんは泣いてる?
「ハマグリちゃん!やりたいことは分かった。」
「どっちのー?」
わざわざ、ここに呼んだ理由も分かった。
いっしょに助けたかったんだ。
なら、ワイだって覚悟を決めるんだ。
ハマグリちゃんは友達だから。
「どっちもだよ。大丈夫。ネット民は本当に辛くて困ってる人たちには優しいんだ!」




