24話 なんで宇宙は真っ黒なの? その4
〈なんで宇宙は真っ黒なの? その4〉
〔二胡 仁悟の視点〕
ハマグリちゃんと屋上にいる。
浜さんが疲れて寝た瞬間に、ハマグリちゃんに強制的についてこさせられた。
いや、もうそろそろさ、一旦は自分の部屋に帰ってくれないか?
本気で。
屋上で空を見続けるハマグリちゃん。
ハマグリちゃんは梅雨を知らないのだろうか?
そう思って梅雨について話してみた。
「えっとね、日本の下はね、暑いんだよ。日本の上の方はね、寒いんだよ。それで、その暑い空気と寒い空気が日本の上でぶつかる時があるの。それが梅雨前線ってやつ。」
「それがまぁ、雨をよく降らせるんだよ。だから、ハマグリちゃんの雨の謎ってのは梅雨前線が原因だよ。」
ネットの知識だと、理由とかちょっと考えたら気になるトピックまで説明しきれない。
まぁ、調べる方にも情報提供側にも落ち度ってやつはあるんだろうけどね。
「バイウゼンセンって、ナカヨしになれる?」
「いや、無理無理。絶対に無理。人とも仲良くなれないのにさ、気象現象と友達とか無理。」
「いや、ニコちゃんじゃなくてね、ワタチのハナシ。」
「ハマグリちゃんが?」
これって、無理って言っちゃって良いのか?
梅雨前線を、あの説明だけ聞いて仲良くなりたいと思うのは正直意味不明だ。
でも、ここで否定するのは、例えばユニコーンの背中に乗って虹の橋を渡りたい子供に正論を突きつけるのと同じだ。
「浜さん…に訊けば良いんじゃないかな?」
ごめんなさい。浜さん。でも、子供の親って他人のワイ達からすれば逃げ道だから。
責任とか、夢とか、倫理観とかのね。
「ニコちゃんにキきたいの!」
ニートワイは 逃げ出した!
しかし まわりこまれてしまった!
「うーん?梅雨前線と?」
「うん!テンキ!おソラにキモちがあるから。バイウゼンセンにもキモちがあるでしょ?」
「バイウゼンセンだけじゃない。タブン、ゼンブのテンキにキモちがあるの。だから…」
「???」
「あー。さっきのあの浜さんからの答えね。まぁ、良いこと言ってるけどね。あんま全部信じてしまうのも…」
「いや?ネットの情報を信じるよりも良いのか?」
「だって、ママはホンキだもん。」
「そうか。そうだよね。」
「で?コタえは?」
「……『梅雨 前線』って人がいるって勘違いしてない?」
そのときの顔は、インターネット依存症により発現してくる悪影響をまとめた、インターネットのサイトを見たあと、そっとパソコンをシャットダウンしたときに黒いデスクトップに映る自分の表情にそっくりだった。
ちなみにその後、30分くらい仮眠をとって、起きてからまたすぐにパソコンを起動した。
じゃなくて。
「梅雨前線の方がさ、気難しかったりしてね。例えば姿を見せてくれないとかさ。会えないとかさ。だから、難しいと思うよ。」
「そっかぁ。会えるかな?」
「ツユなら…ワンチャン?」
「ワンちゃんがいるの!?どこ?どこ?」
ハマグリちゃんのためにもキチンとした言葉を使わないとな。
思えば、ハマグリちゃんと浜さんからの解放を願っていた頃からだいぶ経ったのか?
確かに帰って欲しいとは思うけど、今生の別れっていうか、2度と会いたくないって訳でも無くなってきた。
そうさ。
家の中でも、社会の中でも孤立していたものの、孤独になることは1番恐れているんだ。
まったく一貫性ってやつがないな。
「ワンちゃん。いなくなっちゃった。」
「聞いて良い?どうして、友達になってくれたの?」
「ママにキいてみれば〜?」
「もう!」
で、また401号室に帰ってきた。
浜さんはまだ寝ていた。ふぅ。一安心。
しばらくハマグリちゃんと話して、浜さんは起きた。
浜さんの、“まさか!この部屋で寝るなんて!”という一瞬の表情を見逃さなかったが、まぁでもしょうがないと思った。
念願の浜家の帰宅というイベントが起こったからだ。
くぅー!やっぱりこの!部屋に1人という安心感。
まるで実家のような…いや、実家には親がいたわ…とにかく安心した!
そんで、安心感と共にグッスリ寝た。
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「起きろ。」
で、この言葉を発したあとに頰を2発。ペチペチと。
まぁ、起きる。
ハマグリちゃん!?が、ベッドの枕に立っていた。
じゃあ、この痛みは?
寝違えてるぅ!
どういうことだ?夢遊病か?
「夜にで歩いちゃ駄目でしょ!浜さんはどうしたの?」
見れば、そのハマグリちゃんは不思議だった。
あの、例の
「お空に気持ちがあるの?」
のときの一瞬に見せた表情。
眼の光が無くなる。あの真っ黒な不気味な表情。
で、訳が分からないのだけど光を纏っていた。
オーラみたいなあやふやなことを言っているのではなくて、服みたいに光を着ていた。
パーティーピーポー?どこでそんな服を?
「このユーモアのセンスはどうかな?夢の中で君の枕に立っているんだけどね。」
「あ、あ、あ、夢か。だからハマグリちゃんが訳の分からない喋り方してるのか。」
「いや、浜宮離子の喋り方の方がおかしいだろう。普通に考えて。」
「明晰夢ってヤツを初めて体験したぞ。よし!とりあえず…ネットがやりたい。いでよ掲示板!ぬるぽを書かせろ!」
「明晰夢ほど良いものではないぞ。私にとっても、君にとっても。私が…夢枕に立ったのは、浜捩子と浜宮離子の影響だ。」
「普段というか今後ずっと、私に影響のある他の概念が追加されるまで、ずっと浜宮離子の二重人格の片割れとして存在する。」
「ハマグリちゃんが二重人格?そんなことを夢でみるのか。ワイが疲れてるのか?疲れてるわ。」
「面倒くさいばかりだ。分かるか?私と君とは、浜捩子の『友達関係とは“せめぎ合い”』とかいう訳の分からん答えで無理矢理会わされてるんだ。」
「あの…そろそろ無視したら失礼?」
「この見た目の相手を無視するのか…どれだけ対人関係に抵抗があるのだ。」
あんまりそういうこと言われると…ウッ!
ハマグリちゃんの妙な賢さとか、不思議な雰囲気ってあなたが原因なの?
という目で見つめることしかできなくなっていた。
「私は、『運命に従い生きた浜宮離子』だ。これ以上は言わない。面倒くさいから。」
まだ、朝は来ないのか?
ここで寝るしかないのか?
そう思って、また眠ってみようと目を閉じる。
「違うぞ。私と君とがここにいる理由を言ってやる。君が睡眠をしても効果などない。」
「せめぎ合わせるためだ。」
「『せめぎ合わせる』ってなに?誰と誰が!ワイはもう無理!」
「来たぞ。私とせめぎ合う相手が。」
「オマタ!ニコちゃんもいるね!ワタチとわハジメマチテ?」
「そうだ。こうして会える存在ではないのだ普通はね。」
目の前には、雰囲気こそ正反対だが、確かにハマグリちゃんが2人いた。
ハマグリちゃんのドッペルゲンガーの夢を見るなんて。よほど世界の崩壊が身に堪えたようだ。
「ニコちゃん。これがワタチのバイウゼンセン!ジヨーホーのアメ。チシキとチエのタイフー。」
「そうか。私と友達になりたいのか。全く子供じみたことを。」
「では、二胡仁悟はなんのために?」
「ダッシュツのカギ!」
「そうか。いや…流石私だ。」
「ハマグリちゃん?ハマグリちゃんたち?ワイはどうすれば?」
「とりあえず、考えろ。頑張ってな。」
「〉〉なに?どういうこと?どういうこと?」
ハマグリちゃんたちの声が重なった。
「「なんで宇宙は真っ黒なの?」」




