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王太子妃になりそこねた公爵令嬢は、我儘をつき通す  作者: 星見蒼


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25/28

25、公爵令嬢は祈る

今年一年が終わる。


「クラリッサ」


お母様に声を掛けられた。


例年通り、食堂の大きな暖炉の前で家族が集まっている。

その年の『祈り袋』を手に、みんなで最後の祈りをささげる。


――今年はアリスさんに会えましたわ。ありがとうございます。来年も良い年になりますように。……アリスさんの来年も良い年でありますように


ぎゅっと『祈り袋』を握りしめてから、暖炉の炎にそっと投げる。


揺れる炎が袋を包み込み、一瞬だけ琥珀色に輝いた。

それは、『祈りの実』の、最後のきらめき。


――アリスさん


大事な大事な先生と、次の一年も過ごしたい。

きちんと向き合って、アリスさんの話を聞いて。


――お願い。アリスさんもわたくしと会いたいと思ってくれますように


クラリッサは揺れる炎を見ながら、そう強く祈った。



* * *



新しい年が始まる。


アリステアはベッドから起き上がるとすぐに机に向かった。

机の上の小皿には、公爵令嬢が拾った祈りの実がある。


小皿をそのまま窓際に置き、その中の実を手にとった。

そして、光にかざす。


きらりと輝く。


――今年も一年


アリステアは祈るのが得意ではない。

いつだって、何となく実を、その年の『祈り袋』の中に入れるだけ。


ただ今年はどうしたって、あの令嬢の顔が浮かんでしまう。


――彼女の一年が、どうか穏やかなものでありますように


そう祈った瞬間に、自分でも笑ってしまった。


穏やかというのは、果たして彼女らしいのか。

時に嵐のような彼女が穏やかというのは、なにか違う気がしておかしくて。

それでも。


(穏やかに過ごせれば……いいはずだ)


アリステアが今年も穏やかに過ごせないことは、彼女によってほぼ決定している。

公爵家の許可が得られればという条件をつけてはいるが、話を聞く限りあの一家は最終的に彼女に弱い。

アリステアを敵視しながらも、サロンという公爵家の目の届く範囲なら許すに違いない。


――俺の一年も、なんとか過ごせますように


最後にそう祈って、アリステアは公爵令嬢が選んでくれた今年の『祈りの実』を、新たに用意した『祈り袋』の中にそっと仕舞った。

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