表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王太子妃になりそこねた公爵令嬢は、我儘をつき通す  作者: 星見蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

10、公爵令嬢は期末試験に挑んだ

クラリッサは、ふぅと静かに息を吐いた。


いよいよ期末試験が始まる。

中期試験の時は緊張しなかったのに、今は手が震えている。


(……大丈夫、大丈夫)


ぎゅっと強く指先に力を入れて、瞳を閉じる。


たくさん勉強した。

お昼の時間は教えてもらって、家でもちゃんと勉強した。

分からないところは減ったはず。


「始め」


クラリッサは配られた試験用紙をひっくり返し、ペンを握りしめた。



* * *



「はい、そこまで」


二日間の試験が終わった。


アリステアは、ふぅと息を吐く。

異様に疲れた。

問題一つ一つに、あの公爵令嬢が解けるだろうか、ここまでは教えてないとか、そんなことばかりが浮かんでは消えた。


試験の日は午前で終わる。

昨日も、そして今日も彼女の顔を見ることはない。


(……気にしてもしょうがない。もう終わってる)


声を掛ける必要はない。

アリステアは筆記用具を片付けると、いつも通り教室を後にした。



* * *



「あ……アリスさん……!!」


試験の翌日、ふらふらと公爵令嬢が東屋に現れた。


「うわーん!!アリスさんに教えてもらったのにぃ~!!」


ここのところ静かだった反動なのか大騒ぎだ。

バン、と勢いよくテーブルの上に鞄が乗り、そこから取り出された試験結果。


「……数学か」


彼女がもっとも苦手な科目だ。泣きたくなるような点数だったとしてもおかしくない。


「……ん?五十点?」

「そうなのです……頑張ったのに……」


泣いているけれど、上出来だと思う。

一年の数学からやり直して、ここまで取れているのだから泣く必要もない。


「よく頑張ったんじゃないか?」

「……え?」


涙をためていた目が、大きくなる。


「上出来だろう?」

「……そう、なのですか?」

「あぁ……さすがにこれで十位以内は無理だろうけど」

「上出来……ですか?」

「あぁ、上出来」


そうアリステアが繰り返すと、嬉しそうに笑って、鞄から別の試験結果を出し、並べた。


「こっちは政治学で」

「あ~六十二点か」

「だめですか?」

「ん~これもよく頑張ったと思う」

「あ、あの、地理です!!」

「お!八十二点」

「そうなのです!!」

「得意の特産物、出たしな」

「はい。もう勝ったなと思いました」

「……なんだそれは」

「うふふ。頑張りましたわ!!」


落ち着き……いや元気を取り戻した公爵令嬢は、お弁当を広げ始めた。今日もサンドイッチだ。


「まだ頑張るのか?」

「ええ!!だって今回も十位は無理でしょう?」

「まぁ……無理だろうな」

「ええ、ですから、次の十一月の試験こそ、十位に入って見せますわ!!」

「……やっぱり、諦めないのか」


薄々気づいてはいた。

既に決定事項である王太子の婚約者を覆そうとしているのだから、納得いくまで走り切るのだろう。


「ええ、だってアリスさんが教えてくださってるんですもの、諦めるわけにはいかないですわ」

「……ん?」

「なにか?」

「いや……そこは王太子妃になるためだろう?」

「……え?」

「え?って?」

「わ……忘れてましたわ!!」


公爵令嬢の目が丸くなっているが、こちらの方がビックリである。

王太子妃という目的を忘れていて、十一月まで頑張る必要はどこにあるのか?


「あ、あの引き続き教えてくださいます?」

「……忘れてたのに?」

「う……うう、でも十位までに入りたいのです」

「何のために?」

「……王太子妃に……」


そこまで言いかけて、彼女は首を傾けた。

ん~っと考えてから。


「うまく言えませんけど、やっぱり十位までに入りたいのです」

「……わがまま」

「……だめ、ですか……?」


しゅんと項垂れる様子に、こちらとしてはもう断る気にはなれない。すでに十一月まで面倒を見るつもりではいたのだ。


「嫌になったらやめるから、それまでは」


ぱぁっと表情が明るくなる。

うふふといつもの笑い声がした。


「はい!お願いします。アリス先生」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ