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第26話 妖怪と悪魔の大軍が押し寄せてきたがにいさんたちが迎え撃った

 遠く聞こえた音が次第に大きくなる。


 真一が外を見やると、遠くの空からヘリコプターが轟音とともに近づいてくる。それも一機や二機ではない。


 音が近づき止むと、本堂に十数人の男たちが入ってきた。


 先頭には自衛隊の幹部らしき高官、スーツ姿の男たち、陰陽師の装束を纏った者たちが並んでいた。


 後方では数人の陰陽師が棺を担いでいた。


 彼らはおじいちゃんの周りを囲むと手を合わせ、黙祷した。


 陰陽師の者がおじいちゃんを棺に丁重に納めた。


 自衛隊の最も偉そうな人が、ママに敬礼し、


「時間がありません。早速、司令室に」


 真一たちは、男たちに連れられて、車に乗り、山林を登っていく。


 途中、列をなす戦車、装甲車、特殊車両とすれ違った。


 空には戦闘機が列を組んで飛んでいた。


◇◆◇


 車が山頂で止まった。


 ここから、周りの風景が見渡せた。


 山に囲まれた盆地の中心におじいちゃんのお寺が見える。


 山は完全に染まりきっていないが、赤や黄の山肌が見える。


 盆地には次々と戦車が配備され、陰陽師たちも陣地と術式の陣を準備している。


 車を降りると、近くの地面が開き、階段が現れた。


 真一たちは、階段を降りていった。


 階段を降りると、いかにも司令基地といった部屋にたどり着き、多くのモニターには、お寺とその周辺、そして山々が映し出されている。


 部屋の真ん中にテーブルが置かれ、周りの地図が3Dで映し出されていた。


 拓にいさんと剛にいさんがいないのに気づいて、どこにいるのか尋ねると、


 モニターの近くにいた男が機械を操作した。一つのモニターに拓にいさんと剛にいさんが映った。


 二人は、お寺の近くで他の男たちと鍋や焼き肉を囲み食事をしている。


「ちょっと待って」と真一の後ろでママの声がした。


 ママは、モニターを指差し、


「ここ、大きく見えるようにできる?」


 男は、機械を操作して、二人の足元を拡大して映し出した。


 そこには、ビールとハイボールの空き缶が転がっていた。


「あの子たち……節おばあちゃんに言いつけてやるわ」とママが言った。


 ママが怒っていると思うと何も言えない。


 にいさんたちがいないのに気づかなければよかったと後悔した。


 心の中で、二人のにいさんに何度も何度も謝った。


◇◆◇


 自衛隊、陰陽師の準備は整い、盆地は静寂に包まれた。


 ママが言うには、彼らが攻めてくるのは日が沈みかけたときだそうだ。


 サタンの結界は張り直されたが、それにより日本を覆う封印が弱まるらしい。


 そこを狙って襲ってくるのがいつものことなのだと。


「昔は陰陽師と武士が守った。今では武士が自衛隊に代わり、パパの組織とママの実家も加わっているのよ」


「ボクは何もしなくていいの? ここで見ているだけ?」とママに尋ねると、


 ママは静かに、


「藤原家はサタンを封印するのがお役目。そして、日本を守るのはこの人たちの役目なの。だから、これから戦う人たちを信じて、ここで見守るの。いいわね」


 沈みかけた夕日が向こう側の山肌を照らし、山の赤や黄を輝かせる。


 突然、サイレンが鳴った。


 司令室の人たちが慌ただしくなる。


 モニターに映っている自衛官や陰陽師も持ち場に急ぎ、待ち構える。


 日が照らしていた幾つもの山の頂きに黒い影が現れ、山腹へと広がっていく。


 まずは、自衛隊の大砲が山の黒い影に向かって攻撃を始める。


 黒い影とともに山が削られる。


 続けて砲弾の嵐が山に向かって放たれる。


 陰陽師の陣からも光が黒い影に向かって放たれる。


 黒い影からも、エネルギー波が撃たれる。


 そのエネルギー波は陰陽師の術式の陣によって妨げられる。


 それがモニターに映った状況だった。


 映像が黒い影に寄っていく。


 そこには、勢いよく山を下る異形の者たちが映し出される。


 日本の妖怪のような出で立ちの者もいれば、西洋のいわゆる悪魔と呼ばれる者もいる。中には見たこともない容姿の化け物もいた。


 山の裾野にたどり着いた黒い影は、お寺へと向かっていく。


 モニターの一つに拓にいさんと剛にいさんとその仲間たちが映し出されていた。


 にいさんたちは、準備運動をして、体をほぐしている。


◇◆◇


 山藤剛が体をほぐし終えたときは、まだ、砲弾が山腹を攻撃していた。


「剛、準備はいいか?」


「ああ、いつでもいいぞ」と答えると、背中から二本の短刀を拓に見せつけるように構えた。


「それは、『獅子噛』じゃないのか?」


「うらやましいだろ? 親父に借りてきたんだ」というと、


 拓の側にいた男が拓に刀をさし出した。


 鞘から刀を抜くと、黒光りする刃が出てきた。


「おい、それって『羅刹』じゃないか?」と聞くと、


「そうだ。節ばあのところから黙って借りてきた」と刀を見せびらかされた。


「いいのか、節ばあにばれるとまずいだろ」


「あのさ、節ばあにバレてないわけないだろ。知ってて黙ってるんだ。だから使わせてもらう」


 拓が迫ってくる妖怪、悪魔に向き直った。


「いいか、お前ら、遅れをとるんじゃないぞ!」と拓が檄を飛ばす。


「おう!」と周りの男たちが、それぞれの武器を構えて、呼応する。


 拓に先に檄を飛ばされ、剛は「拓こそ、足手まといになるなよ」と突っ込んだ。


「うるさい、じゃあ、競争だ。どちらがより多く獲物を狩るか? いいな」


「いいだろ、吠え面かくなよ」


 得物を構え、体勢を低くし、力を蓄え、一気に解放する。


 周りの男たちの駆ける速さは異常だったが、剛と拓はさらに先を行く。剛は砲弾や陰陽師の閃光をかいくぐり、拓と並んで敵に近づくと、瞬時に切り刻み、血が飛び散る前に、すでに次の敵へ刃を向けていた。


 敵の波を切り刻みながら駆け上がり、頂きに拓と並ぶ。


 拓が「四百五十九」と伝えると、悔しくて間を置いて「四百四十三」と答えた。


 再び、拓と並んで獲物を切りつけながら、圧倒的な速さで山を下っていく。


◇◆◇


 真一は司令室でモニターを眺めていた。


 とんでもない数の異形だったが、戦いは人間の方に有利に傾いている。


 司令室のモニターにはそう映っていた。


 スタッフたちも次々、勝利の報告をあげる。


「東側結界、保持。侵入なし」


「南の陣、群れを排除完了」


「北側、大型三体を無力化」


 ママが言った。


「ぬらりひょんは、いましたか?」


 モニターの前にいたスタッフが、「いえ、確認できていません」と答えた。


「そうですか、今回も姿を現さないつもりですね」


 異形の群れが退却し始め、降りてきた山を登り始めた。


「敵の群れ、退却し始めました」


 司令室に歓喜の声があがる。


「東側、最後の群れを排除。残存なし」


「西側も同様。脅威は去りました」


「北側、引き上げていきます」


「追撃不要。防衛線を維持」


 指揮官の声が響いた。


 モニターの中で、残り少なくなった異形たちの影が山の向こうに消えていった。


 損害の報告がされたが、聞くかぎり、死者はおらず、損害もほとんどないようだった。


 真一はモニターを見つめていた。


 モニターには、ほとんど暗闇が映っていた。


 さっきまでの戦いが嘘のように、静かだった。


 アンジェリーナが隣に来て、「終わったのね」と聞いてきたので、


「そうだね」と答えた。


――おじいちゃんの死は無駄ではなかった――


 真一は静かに目を閉じた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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