第25話 パパが悪魔を召喚したらお茶に誘われた
真行は、日本を出発し、ヨーロッパの組織の施設に向かった。
施設のエレベーターで地下に向かう。
最下層の地下十階は、足音が不自然なほど響く、コンクリートに囲まれた巨大な空洞となっている。
エレベーターを降りると、スーツを着た男が座っていた。
目の前のテーブルには頑丈そうなアタッシュケースが置いてあった。
真行に気づいたスーツの男は立ち上がり、
「お待ちしていました」と言って、アタッシュケースを開けて、中身を見せる。
中には、宝石箱と血塗られた契約書が入っていた。
「ご依頼のあったグレートヒェンを誘惑するために使った宝石箱とファウストが署名した契約書でございます」と男は言い、別の鞄から書類をさし出した。
「サインをお願いします」と真行に渡す。
書類にサインして返すと、スーツの男は確認し、鞄にしまう。次は鞄から写真を取り出すと、
「ファウストが書き損じた五角星です」と渡してくれた。
「ありがとう」と真行が一言告げると、
「それでは」と言って、スーツの男は去って行った。
悪魔を召喚するには、生け贄やサバトの方が有名だが、召喚したい悪魔に縁のある品を用意したほうが確率は上がる。
メフィストフェレスに関しては、この世に縁のある品がいくつか存在するので、そっちのほうが効果的だろう。
しかし、これだけのものを一日もかからずに用意する五代にはいつも驚かされる。
事務的なことから雑務まで何でもこなし、その優秀さに右に出るものはいない。
聖杯だろうが、聖櫃だろうが次の日には用意しかねないと思うと怖い。
――まずは術式の陣だが、これは一般の悪魔召喚の陣だな――
五代から受け取った写真を見て、印を結ぼうとしたときだった。
悪寒が走り、身震いする。
真明の顔が浮かんだ。
――親父……――
しばらく、目を閉じた。
「そうか、責務を果たしたんだな。じゃあ、俺も為すべきことをしなくちゃな」
再び印を結んだ。
床から、光とともに術式の陣が現れる。
近くに落ちていた鉄パイプを拾い、写真を見ながら、陣に書き損じた五角星を刻んだ。
陣の中心に、宝石箱と血塗られた契約書を置くと再び印を結んだ。
地下空間の明かりがすべて消えた。
暗闇の中で、術式だけがまばゆいばかりの光を放った。
術式の中央に人影が現れた。
◇◆◇
「これは、これは。
お初にお目にかかります。
私、メフィストフェレスと申します。
え! ご存じですか?
そうですよね。人間界では有名なようですから。
本当になつかしいものを用意していただきありがとうございます。
なつかしさのあまりつられて召喚されてしまいました。
となると私をご指名だったということですか?
私に何のご用でしょう?
いえいえ、知ってますとも、ご子息のことですよね。
立ち話も何ですので、そうだ、私の屋敷に来ませんか? そこで、お茶でもしながら、お話ししましょう。
いいお茶が入ったんですよ。お口に合えばいいのですが。
そうだ、せっかく人間界に来たのですから、どこか、美味しいお菓子が売っているお店はご存じありませんか?
美味しいお茶とお菓子があれば会話も弾むというもの」




