第22話 友達と朝までゲームをしたが、あの子の名前は出なかった
一週間ぶりの、自分の家だった。
「おかえりなさいませ、真一様」
ダイニングのテーブルに無邪鬼が座っていた。エプロンドレスに三つ編み。テレビのリモコンを片手に、せんべいをかじっている。
「ただいま」
「美夜子様は遅くなるそうです。夕飯はテーブルの上に用意してあります」
テーブルを見ると、ラップのかかった料理が置いてあった。
お腹は空いていなかったので、食事には手をつけずリビングにやってきた。
ベランダで、アンジェリーナがたばこを吸っていたのが見えた。
夕陽が沈みかけていて、橙色の光がアンジェリーナの横顔を照らしている。
真一は足を止め、思わず見とれていた。
施設で抱きしめられたときの感覚が蘇った。腕の温かさ。あの匂い。
――何を考えているんだ、ボクは――
「何かあったんですか?」
足元に無邪鬼がいた。いつの間にか横に来ていた。真一の顔を下から覗き込んでいる。
「べ、別に」
アンジェリーナが真一に気づいて、手を振った。
笑っていた。いたずらっぽい笑みではなく、穏やかな笑みだった。
真一は手を振り返した。
「やっぱり、何かあったんでしょう?」
無邪鬼にまた聞かれた。さっきより不機嫌な声だった。
「別に」
◇◆◇
自分の部屋のドアを開けた。
何も変わっていなかった。ベッド。机。本棚。壁のポスター。
パソコンのスイッチを入れ、チャットを立ち上げる。サトシとケンヤのステータスは「オンライン」だった。
二人に、メッセージを送った。
真一:生きてる?
サトシ:おまえこそ!!! 一週間どこ行ってたんだよ!!!
ケンヤ:マジで心配したんだぞ
サトシ:おまえ怪我は?
モニターの光に左手を透かすと、肌の下に護符の鱗がうっすらと浮き上がって見える。
真一:大丈夫。もう治った
ケンヤは体育祭のテントの下にいて、サトシに引っ張り出されて逃げたらしい。サトシは足が遅いくせに、あのときだけは速かったとケンヤが言い、サトシが怒った。
学校はまだ休校中だった。再開の目処は立っていないそうだ。
ケンヤ:学校どうなるんだろうな
サトシ:さあ。まだ何も連絡ないよ
ケンヤ:まあ、休みが長いのはうれしいけど
三人とも、三崎愛理の名前は出さなかった。
誰も触れなかった。
真一:せっかくの休みなんだからゲームやらない?
サトシ:やる
ケンヤ:やる
三人で朝までオンラインゲームをした。




