第九章 入学式とまさかの戦い
お久しぶりです!『分け闇のハコ』第九章です。
入学式から、波乱が巻き起こります。
お楽しみ頂ければ幸いです!
一
ハコと、可愛くない年下二人を乗せた汽車は、やがてラススヴェート学園行き急行の終点駅に辿り着いた。終点駅は、ラススヴェート学園に行く前に集合するようにと新入生に共有されている為、移動魔法や箒で、三人よりも前に着いた子達で既に賑わっていた。
ラススヴェート学園行き急行から降りてきた三人に、すでにいた子達は興味を示した。純粋な好奇心もあったが、嫉妬が大半の理由だった。自分達には乗ることが許されてない乗り物に乗って来て、しかも自分達を待たせた子達の存在が、贔屓されているみたいで面白くなかったのだ。なによ!あの子達、何様のつもり?
その気持ちを敏感に感じ取りながら、ホームに立ったハコはため息をついた。俺らの事情とか知らなければ、そうなってもおかしくないわな。ハコは集まっている子達を眺めて思った。見るからに自分よりも幼い子達ばかりだった。仲良くやれるといいな… 少なくともあいつらより、性格が良くて可愛い子が居ると良いなぁ… 。
祈る気持ちで目を瞑っていると、また後ろから急に声を掛けられた。「… なぁ、お前」
期待した俺が馬鹿だった。そう思いつつ、無視する訳にもいかない為、ハコは振り向いた。
「ああ、すみません! 同い年っぽい人がいて嬉しくて、つい」
ハコは、目を丸くした。後ろには、ハコと同じくらいの背の少年が立っていた。緑色の長い髪の毛を、ポニーテールで結び、緑色の目は垂れ目だった。背の高さもそうだが、他の子達より明らかに年上のようだった。ハコは、尋ねた。「きみ、何歳ですか?」
「15歳です」
それを聞いたハコは、ポニーテールの彼を抱きしめた。「俺もだよ!俺も15!」それを聞いた彼も、ハコを抱き返した。「やっぱり!… 良かったぁ」
同い年を見つけた二人ははしゃいだ。自分達よりお兄さんの人達がはしゃぎだす姿を見て、周りの子達は驚き、少し距離を置いた。それにお構いなしに、二人は話し続けた。
「ここに来たら、みんな小さい子ばかりで。まぁ、12歳で入学だから当然なんだけどさ。みんな距離取るから孤立して… 同い年が居てくれて、嬉しいよ」
「心細かったろう!俺も嬉しいわ。ね、名前何?俺はね、ハコっていうの」
「イト。良かったぁ、『例外』が他にもいる時期で!」
なんだ、『例外』って? ハコが困惑していると、後ろから肩を組まれて、耳元で囁く声がした。「魔法族は、12歳で魔力が完全に安定ようにする。ただ、色んな要因でそれが遅くなることがあってそれを『例外』ー「落ちこぼれ」という言い方や捉え方をする奴が魔法族にいるーとしている。その子は15歳で安定した子だ。お前も『例外』の新入生ってことにしてある。… その方が、身の上を詮索されないしな」
聞き慣れた声に、ハコは笑って横を向き、肩を組む大好きな人と目を合わせた。「アイス!」
新入生達の対応をする為、先に家を出ていたアイスが駅に現れた。イトや、汽車の訳ありメンバー含めた12歳の子達は驚いた。あの有名な魔法騎士のアイスさんだ!なんだか凄く目が腫れてるけど!(ハコの成長ぶりに朝から大号泣したアイスは、今不細工である)
アイスは、「アイス先生!」と言ってハコの頭を軽く叩くと、姿勢を正して新入生達に向かって告げた。「魔法騎士団団員・ラススヴェート学園講師のアイスだ、よろしく。では、今から、ラススヴェート学園に移動する。俺に付いてくるように」
そう言って歩き出したアイスの後を、新入生達は追った。ハコを、汽車の訳ありメンバー二人は後ろから見て、ひそひそ話した。
落ちこぼれのおっさんとアイスさん、親しげだったな。そうね。コネ入学の可能性もあるわね。
二
アイスに引率され、新入生達は街を歩く。やがて、
店内を見ることが出来る、ドーナツの店に着いた。店先には、その店のキャラクターなのか、ドーナツが乗ったお盆を両手に持った黄色の猫の像が立っていた。アイスは、その像の頭を撫でて呟いた。「パラレル」
すると、店の中が暗くなり、見えなくなった。それを確認したアイスは、扉を開けて中に入っていった。みんなは後をついていく。
中に入ると、そこにはドーナツは無く、桟橋に一同は居た。桟橋の向こうには海が広がり、その海の真ん中に、大きな黒い城が建っていた。その城こそ、ラススヴェート学園である。桟橋にある大きな船に乗り込んだ一同は、ラススヴェート学園前にある桟橋に辿り着き、降りてから数メートル歩いて、とうとう学園の門を潜った。
門を通った後、一同は講堂に入った。アイスとは講堂前で別れた。講堂は果てしなく広く、4つに間隔を分けて、3席毎に並べられた空席の後ろに、ラススヴェート学園の講師や、在校生が既に座って新入生達を待っていた。
講師席の先生達が、自分を見つめる優しい視線に、ハコは気づいた。あの人達と、母さんと父さんは一緒に戦ってたんだな。そう思いながら歩き、新入生達の席に座った。ハコは、黒髪の生意気少年と、可愛くない天使に挟まれて座った。講堂の正面にはステージがあり、そのステージを見ながら、新入生達は落ち着かない気持ちで座っていた。
「ようこそ、諸君!」
どこからか、声が聞こえ、風が吹いてきた。風はキラキラと輝いていて、よく見ると砂粒ほどの小さな宝石を運んでいた。宝石の風はステージに行き、竜巻を作った。竜巻は段々と細くなり、中から老人が現れた。新入生達は息を呑む。あの方が… !
「魔法騎士の原石達よ。入学おめでとう!魔法騎士団団長・ラススヴェート学園校長のジェム・アーラン・シートじゃ。これから、諸君らはこの学園で、ともに学び成長していく。いずれは互いの命を預け合う仲間達との絆を、ぜひ築いてほしい。さて、長話もなんじゃ。諸君ら、自分達の組が気になることじゃろうて。早速、組み分けに行こうとしようかの」
「組み分けって?」前にいるイトに、ハコは囁いた。
「新入生達の入る組を決める儀式だよ。組は4組で、決め方は、その年によるらしいよ。話せる魔法器具に選んでもらうとか、自分の魔力を紙に流して、その色で適した組を判断するとか」そうイトは囁き返した。
今年の組み分けに向けて、新入生一同に緊張が走る。ジェム団長は楽しげに続ける。「今年の組み分けは、初の試みじゃ。今より、諸君らには魔法騎士団である、組担任の先生方の内1人と、3人1組で戦ってもらう!」
新入生達は驚愕した。中には叫ぶものや泣き出す者もいた。いきなり戦うなんて聞いてない!
「静粛に!君らは怪我しないし、死にもしない。先生方は攻撃魔法も通常魔法も、生徒に向かって使用しない。君達の戦い方や魔法を見て、どの組に適しているかを見るだけじゃ。では、4組それぞれの先生に登場してもらおう。君らの座っている所の前に来た先生が、対戦相手じゃ」
ジェム団長がそう言うと、講堂の扉が開き、四人の先生達が現れ、ステージに向かって来る。その中の一人を見て、ハコは驚愕した。その一人は、ハコが座っている所の前に立った。
「よし、これより順番に対戦を始める」
冗談じゃない。ハコはそう思った。ハコの前に立っていたのは、後から来ると言っていた、アルケミーだった。




