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分闇のハコ  作者: 西村薫


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第八章 ラススヴェート学園行き急行

『分け闇のハコ』第八章です!

ハコは、ついにラススヴェート学園に入学することになります。向かう為に乗り込んだ汽車で出会った同級生は癖のある子しかおらず…!?

お楽しみ頂ければ幸いです☆

 「ずっと小さいままで、いてくれたら良いのに」

 朝から同じことを繰り返すアルケミーに対して、ハコは苦笑で返した。その表情は大人びているものの、嬉しさも見てとれた。側にずっと居たいと思われるのは、とても嬉しかったからだ。

 ハコが初めて魔法を使った日から、三年の年月が経った。15歳になったハコは、アルケミーとアイスによる教育を受け、とうとう今日ラススヴェート学園に入学するのである。

 入学と同時に、ハコは学園にある寮に入る。ラススヴェート学園は、建物全てがハコに封印された『闇の王』の力を封印出来るようになっており、もう封印が解けた時の為に、ずっとアルケミーが近くにいる必要が無い。アルケミーとアイスの教育を受け、立派に成長したハコは、もう一人でも色んなことができる。だから、三人が同じ家で暮らすのは、今日で終わりである。

 アイスとアルケミーは、魔法騎士団員としてラススヴェート学園の教師もする為、完全なお別れでは無い。だが、大切に育ててきた我が子と、もう同じ家で暮らすことはない!それが涙腺を刺激するようで、アルケミーは朝から泣き続け、確か男前だったよな?とハコが不安になるくらい目が腫れた顔になっていた。

それは、先にラススヴェート学園に向かったアイスも同様だった。二人の男前さは、今日は鳴りを潜めていた。

 ハコは、アルケミーの手を握って言った。「二人が、俺をデカくしたんだろ?あれも食え、これも食えって色々食べさせてさ。 …本当にありが… もー、泣くなってー。だーいじょーぶだよ、お別れじゃないんだし。二人は今までもこれからも、ずっと俺の家族で、色々教えてくれる先生だよ」

「やめて…。顔が無くなる〜」

「良い加減泣き止めよ〜。ギャラリー出来てきたじゃん。汽車前より人いるよ、今」

 ハコは、辺りを見回して言った。二人は今、人間界の街にある駅のホームにいた。大抵の生徒は、移動魔法を使用したり、箒に乗ったりしてラススヴェート学園に向かっていたが、ハコは、汽車に乗らなければならなかった。ハコが待っている汽車は、ラススヴェート学園のようにハコの力に対策出来るようになっていて、それに乗ってくるよう、新たに送られた入学許可書にメモ書きされ、一緒に切符が入っていたのだ。その汽車が来るのを、ハコは見送りに来た泣き続けるアルケミーと待っていた(アルケミーは後から学園に行くとのことだった)。

「つか、この駅って、人間も使ってるけど問題ないの? …普通に、まもなくラススヴェート学園行き急行が来るって案内もあったけど、魔法とか魔法騎士とかって、バレない方がいいんだよな?」と、ハコはアルケミーに尋ねた。

「問題ないよ。」と、アルケミーは答えた。「魔力がある者しか、存在を認知出来ないんだー人間には、汽車は見えないし、案内や汽笛も聞こえない。乗る者も見られないーもちろん、魔力持ちしか乗れない。切符を送られた、特別な魔力持ちしか」

「じゃあ…」

 汽笛が聞こえる。煙を上げながら、一台の汽車が、速度を落としながらホームに近づいてくる。ホームのベンチなどに居た12歳くらいの少年と少女が、一斉に立ち上がり、やがて停車して扉が開いた汽車に乗り込み始めた。それを見ているハコに、アルケミーは言った。

「そう、今乗った子達は、きみの同級生であり… きみ同様の訳ありメンバーだよ」

 

 アルケミーと別れ、汽車に乗り込んだハコは、周りを見回した。汽車内は広く、二人がけの椅子が、互いに向かい合う形式で隙間を開けながら通路に沿って並んでいた。横に並ぶなり、向かいに座るなりして、どうにか乗った者同士での交流機会を作るのが目的なんだろう。

 だが、すでに乗っていた子達は、横並びにも、誰かとの向かいあいにもならず、空いた席にそれぞれ座っていた。座席数に対して乗客人数が少ない為、わざわざ近くに座る必要性がなかったのだ。

 知らない人と話すの緊張する子達なんかもな… 話さないでそっとしとくか、俺お兄さんだしな。そう思ったハコは、空いている席に座った。ふっ、年上の余裕だぜ。

「おい、おっさん」

 まだ声変わり前の、高い男の子の声が、後ろから聞こえた。この汽車に、おっさんなんて居ないだろうに。ハコは、窓から外を見ながら思った。すると、後ろから現れた少年が、箱の前の椅子に座って言った。「おっさん」

 少年は、ラススヴェート学園の制服である長いローブを着込み、黒い髪と黒い瞳を持っていた。目つきが鋭く、黙っているとまるで怒っているようにも見えるが、顔立ちは非常に整っていた。おぉ、面の良い子どもだな… とハコは思った。そういや、真正面から俺に向かってなんか言ったな、確かおっ… 。

「… ああ?誰がおっさんだよ!」と、ハコは叫んだ。

「あんただよ。この汽車の中で、どう見ても俺らよりあんた年上じゃん。だから、おっさん」と、少年は言った。

「年上って… まぁ君らよりは確かに上だけど、3歳しか離れてねーよ!俺はまだ15歳で、若者だよ若者!」

「3歳も上なら、おっさん扱いもするさ。それに、15歳って… 魔法騎士団育成学園には12歳で入れるから、もう本当なら3年生じゃないか。なんで15歳で入学なんだよ… ああ、落ちこぼれか?」

 ハコは、頭に来た。おっさんの次は、落ちこぼれと来たか!こいつ、一体どんな教育を受けてきたのだ。面は良いのに、中身が全く良くねぇ!ここは、一つ説教でも…。

「ちょっと、あなた失礼よ」

 また後ろから、今度は高い女の子の声がした。ハコが振り向くと、そこには少年と同じくローブを着込んだ女の子が立っていた。金色の巻き毛が、肩まで伸びており、青い瞳は垂れ目で、頬はピンクに染まっていた。まるで、天使みたいに可愛らしい子だった。おお、この子、俺の味方をしてくれ…

「けど、あなたも年上なら、もっと上手くやってくださいよ。私達より老いてるのは事実なんだし。それに、公共の場で、怒りに任せて騒ぐなんて、年上の余裕ってものがないのね!うるさくて読書出来ないじゃない。はぁ、この汽車が、魔法で早く学園に着くのは幸いだわ。尊敬できない年上と、同じ空間に長くいる必要無いんだもの」

 そう言うと、天使は去って行った。少年も、ハコにニヤリと笑うと、天使の後を追うように去っていった。

 か、かわいくね〜〜!ハコは、叫んだ。頑張って耐えて心の中で。

 

 

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