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分闇のハコ  作者: 西村薫


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7/10

第七章 はじめての魔法と予言

『分け闇の箱』第七章です!

ハコが、初めて魔法を使います。ただ、その魔法は…

お楽しみ頂ければ幸いです。

 学校の入学準備に来ている親子達を見ながら、アイスはアルケミーに尋ねた。

「そういや、ハコはこれからどうなんだ?俺らで面倒見て、最終的にはラススヴェートでの保護になるのは聞いてるけど…生徒として入学もさせる気か?」

「はい。ハコは『闇の王』の力を、5分の1分ーそれでも巨大な力ー持っていますからね。力の扱い方を、学んだ方が良いだろうとの判断です。それに、『闇の王』の残党は全て捕まえたとはいえ、彼に憧れた新しい悪の魔法使いが、『闇の王』復活を目的に、ハコを狙ってくる可能性もあります。戦い方を教えるためにも、とのことです」

 アイスは、親子達から視線をハコに移した。ハコは、見たことも無い物を売っている店に興味を惹かれているようで、二人が会話をしている間、落ちつき無く通りにある店に視線を送り、向かおうとし、止めることを繰り返していた。何度もアイスとアルケミーを見上げて、二人が連れていってくれるのを待っていた。この子が、大きな闇の力を持つ者、戦える者には、どうしてもアイスには見えなかった。

「… 魔法騎士にもする気なのか?」

「それについては、まだなんとも。…まぁ、やらせるべきとは思いますよ。この子の秘めた力の量は、俺たち以上です。そんな奴が魔法騎士になったら、圧倒的な戦力ですよ」

「そんなの、俺らの勝手な都合じゃ…」

「そういうなら、『分け闇の箱』そのものが、魔法騎士の勝手な都合です」

 アイスの言葉を、アルケミーは遮って言った。アイスは、目を見張り、息を呑んだ。アルケミーは、続けて言った。「世界の為に犠牲になったあの二人を、悪く言う気はないですー実際、『闇の王』を封印するには仕方ないことだったーただ、勝手に作り、勝手に面倒な力を箱達に入れたのには変わりない」

 絶句したアイスは俯いた。アルケミーと目を合わせられなかった。下を見ながら、振り絞るようにアイスは言い返した。「… そうだが…!あの二人は、ちゃんと箱達を思ってたよ!あまりの箱達の宿命の重さを思って、ずっと悩んでた… きっと幸せにして欲しいって… 俺達に託して死んだ。なのに…俺達は… 」

「ええ。12年間、ハコに対してそれが出来てませんでした」アルケミーは、続けて言う。「… だからこそ、死んでも俺らはハコを幸せにするんです」

 勢いよく、アイスは顔を上げた。強い視線とぶつかる。アルケミーの青い瞳は、決意の光が刺していた。その光は、アイスにも刺し込んでいった。

「… ああ。ぜってぇ幸せにしてやる!よーし、ハコ。話長くてごめんな!いい子で待てて偉いぞ。まずは、今のお前を幸せにしなきゃな。どこ行きたい?」

 アイスは、しゃがんでハコと目線を合わせて聞いた。待ってました!という様子で、ハコはアイスとアルケミーの手を引いて進み出した。

 箒や使い魔の動物達の店かな?と、アイスとアルケミーは思っていたが、ハコは素通りしていく。魔法使いのコスチュームの店も、魔法書の店も通り過ぎ、やがて目的地に辿り着いたのか立ち止まった。

「… ガチで?お前、ここに一番来たかったのか?」

 アイスは、信じられないという気持ちを滲ませながら言った。無理もないとアルケミーも思った。… まだ、あったんだな、こういう店って。

 ハコが選んだのは、通りの奥まった所にある古い店だった。店頭に商品はなく、看板もない。看板の代わりに、小さな表札があり、そこに細い字で「プロフェシーじいさんの杖の店」と書かれていた。一見唯の古い家にしか見えず、特に何の面白味も感じられない、時代に残されたような場所だった。実際、時代遅れな店ではあった。なぜなら…

「800年前から、杖なんて誰も使わず詠唱だけで済ますようになったからな、もうここにしか杖はない」

 扉を開けて、中から現れた老人がそう言った。老人は、ウェーブが掛かった白髪を肩まで生やし、同じく白くて長い顎髭を一本の三つ編みにしてまとめていた。腰が曲がっていて、右手には四葉杖をもち、体が常に小さく震えていた。見るからに年寄りだったが、瞳は若々しく、まるで新芽のように綺麗な緑色をしていた。「君が来るのは500年前から知っておったよ」

 ハコを見て老人は言った。「わしはプロフェシー。予言が出来る魔法使いじゃー名前通りな…。さぁ、おいで。君は自分のことをよく知っている、だからここに来たのじゃ」

 そう言うと、プロフェシーはハコの手を引いて、店の中に入っていった。アイスとアルケミーは、慌てて後を追った。

 店内は、外観よりも広かった。二つのフロアに仕切られていて、一方のフロアは、壁に沿って引き出しが沢山ある棚が並べてあり、もう一方のフロアは何も置かれてなく、結界が張られていた。プロフェシーは、結界の張られたフロアに、ハコを連れて行った。

「さぁ、君の力を見せてごらん」

 ハコは、何も言わずにいた。それを見たアルケミーは、プロフェシーに伝えた。

「すみません、その子、魔法について未だ何も知らないんです。それに… 言葉もまだ話せなくて」

「ああ、それも500年前から知っとるよ。…この子は、『箱』の子で、二つの名持ちじゃろ?」

 アルケミーとアイスは驚いた。本当にこの人は、ハコのことを知っている。『分け闇の箱』という存在は、魔法世界に知れ渡っているが、それが人間の姿をしていることは極秘で、魔法騎士や魔法騎士と繋がりを持つ封印師達や封印師達の住む村人といった、ごく一部しか知らない。

 ましてや、そのうちの一人が、人間扱いされず、ただの箱扱いされ続けたせいで、自分の名前をハコと認識している、別に本名があるーハコの本名はウインドであるー二つの名を持つ存在なんて、アルケミーもアイスも最近知ったことだ。…本当に、この人は500年前から知ってるんだ!

 畏敬の眼差しを二人が向ける中、プロフェシーはハコに言った。「簡単に、魔法について説明しよう。そう難しくはない。魔法は、大きく分けて二種類ある。戦闘を目的に使う戦闘魔法と、それ以外の目的で使う魔法だ。どちらも、自分の中の力を、詠唱…使いたい魔法の名前を言うことで具現化するのだよ。君は誰かが魔法を使っているのを見たことあるか?」

 ハコは、あいすの魔法を思い出した。初めて会った日、『あいす』と唱えて、みんなを凍らせていた。ハコは、あいすを指差した。アイスは、自分の名前と、自分がハコの前で魔法を使ったことを、プロフェシーに伝えた。

「そうか、良い名を貰ったな。では続いて教えよう。アイスくんのように、戦闘魔法の名前は、魔法を使う者の名前のことが多い。自分の名前という愛着が、魔法の効果を高めるのだ。また、相手に名前を既に知られていることにより、自分の魔法についても同時に知られてしまうリスクを高めることで、そのリターンとして強い魔法を使えるというのもある」

 あいすはあいすのまほー と、ハコは心で思った。

「そうじゃ、賢いの」プロフェシーはハコを褒めた。

 ハコは、ハコのまほー? と、またハコは心で思った。

 プロフェシーは首を振った。「… いいや。ハコは、君にとっては愛着がある名前のようだが、本名では無いからな。愛着を持った、本名でないと唱えても意味がないんだよ。魔法が出ないし、出たとしても弱いから負ける… だから、君には杖がいるんだ」

 プロフェシーは、懐から杖を出した。波打った枝通しが絡み合っているような杖だった。その杖に、アイスは見覚えがあった。

 プロフェシーは、ハコをフロアの隅に連れて行き、杖を持たせて伝えた。「向こうの壁に杖を向けながら、心に浮かんだものを、そのまま唱えてごらん」

 ハコは、杖を受け取ると嬉しそうに笑い出し、元気よくこう唱えた。「トゥナーリオ!」

 杖から赤く光る光線が勢いよく現れた。それは、壁に向かっていくに連れて太くなっていき、爆音と共にフロアの壁を完全に破壊した。辺りに衝撃波が起こる。すると、フロアに張られていた結界が収束しながら防いでいき、壊された壁も時を巻き戻したように元に戻っていった。ハコは、誇らしげにしており、そんなハコをプロフェシーは褒めていた。

 アイスとアルケミーは、呆然とそんな二人を見ていた。今の威力、そして唱えた詠唱は…!?

「『闇の王』と同じ戦闘魔法じゃ。」プロフェシーは、静かに言った。「あいつも、自分の本名に愛着が無かった。だから杖の力を借りて、名前以外の戦闘魔法ー莫大な魔力の持ち主しか使えないートゥナーリオを使っていた」

 ハコは、アイスとアルケミーの所にやって来た。褒められたかったから。二人は、無言でハコを掻き抱いた。それを見ながら、プロフェシーは続けた。自らの予言を伝える為に。

「… その子は、この先もあいつと同じ戦闘魔法しか使えん。育ち方が似てしまった上、同じ力を持っているからな。そして、その子は、その力でもって、偉大なことをするようだ… それがどのようなことかは分からんがな」


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