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分闇のハコ  作者: 西村薫


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第十章 自己紹介ととある真実

『分け闇の箱』第十章です。なかなか書けず、お待たせしました!生意気な年下二人のことや、魔法騎士団員についてが判明します。お楽しみ頂ければ幸いです。

 一、

 ハコと、可愛く無い年下二人は、案内された教室で待機していた。他の生徒達は既に呼ばれていて、3人だけが残っていた。

 ハコは、頭を抱えていた。アルケミーからは、魔法についてなどを教えて貰ったが、実際に戦った事はない。だが、アルケミーが強い事は、教えられている際にひしひしと感じていた。大好きで、しかも強いと分かっている人と、まだ仲良くもなっていない人間と一緒に戦わなくてはならない。どんな拷問だよ、とハコは頭を掻きむしった。

「ちょっと、汚いわね」隣で本を読んでいた口の悪い天使が、ハコを注意して来た。「そんなに悩む事ないじゃ無い。先生達は、魔法を生徒に使わないんだから、死ぬ事はないわ。先生が相応しい組を判断できるよう、自分が得意な魔法を見せたら良いだけよ」

 いや、あの人魔法関係なしに強いんすよ。ハコはそう言いたいのを、口を閉じて何とか堪えた。自分とアルケミーやアイスとの関係はバラさないように言われていたからだ。口を歪に閉じたのを誤魔化す為、ハコは、天使に返事をした。「そうだね。なぁ、同じ先生を相手にする同士だし、自己紹介とかしない?君も」

 天使の横にいる、生意気小僧にも話を振る。頬杖をついていた彼はハコを見やるが、無視をした。それに、頭に来たハコは立ち上がった。「てめぇ、良い加減に…!」

「はーい。君達が戦うのは先生ですよー」

 扉が開き、アルケミーが登場した。いよいよ、3人の番が来た。


 アルケミーに案内された場所は、青空が晴れ渡った野原だった。木は無かったが、小川があり、蝶などの虫がいた。ラススヴェート学園は、たくさんの扉があり、外の空間に繋がっているものも多くあった。その中から、アルケミーは野原の扉を選んだのだ。

 扉を開けた先の野原に、3人が驚いていると(素直に驚いたのはハコだけで、2人は驚いたものの、それを顔に出さないように我慢した)、アルケミーは言った。「じゃあ、自己紹介をしていきましょうか」

 野原に座るアルケミーに習い、ハコ達は横一列になって座った。それを見たアルケミーは、まず自分から話し出した。「いきなり自己紹介といっても、手本が無いとやりにくいでしょう。まずは私からやります。私は、魔法騎士団団員でラススヴェート学園講師の、アルケミーです。好きな事は平和に過ごす事。嫌いな事は戦争。夢は老衰で死ぬことです」

「… なんか、すごく重い自己紹介ね」

 天使は、隣にいるハコに囁いた。それが聞こえたのか、アルケミーが言った。「はは。嫌な時代に生きてたもんでね。自分を語ると重くなるんだ。さ、君らの番だよ。重くても、軽くても、名前以外は伏せても、ちびっと嘘を混ぜても良いよ。自己紹介は、自己表現の一つだからね。自由に自分を示してご覧。じゃあ、お兄さん次ね」

 アルケミーは、ハコに促した。ハコは、元気よく答えた。「はい!俺は、ハコっていいます。好きな事は、俺を育ててくれた家族と過ごすこと。嫌いな事は、魔力のコントロール。夢は、仲間を作って、両親や今の家族のような、立派な魔法騎士団員になることです!」

 突然、アルケミーは目頭を押さえて勢いよく上を向いた。泣いちゃいそうだったから。朝に泣き腫らした顔は、魔法で治してから学園に来たが、今涙を抑えないと、また腫れてしまうし、なぜハコの発言に泣いたのか、詮索されてしまう。なんとか堪えて、アルケミーは答える。「… ありがとう。では、お隣さん次に」

 天使は、咳払いをしてから話し始めた。「私の名前は、パワーです。好きな事は勉強と読書。嫌いな事は、尊敬できない人と過ごすことと… 人間だからと魔法族から舐められること。夢は… 人間初の魔法騎士団員になることです」

 少し間を空けて話したパワーの言葉に、アルケミーは頷いた。今年、人間にも関わらず魔力が目覚めて安定した子が居るのを、団長から聞いていた。古く長い歴史の中で、そんな事は始めてだった為、何か起きても対応出来るように、パワーはハコ同様に列車のチケットを与えられたのだ。そして、それはもう一人も… 。

「えー!君、人間だったの!?すごーい、どうやって魔力身につけたの?」

「な、なによ。褒められても嬉しく無いわよ…もともと力はあったの。後は勉強と特訓よ。あなた、力のコントロールが苦手って言ってたけど、コツさえ掴めば簡単よ。 …教えましょうか?」

「ほんと!ありがとう!一応、家族が教えてくれたんだけど、余りに感覚派というか、抽象的にしか言ってくれないから、全然分からなくってさ〜」

「こら、そこー!まだ自己紹介ある人いるんだから、盛り上がらなーい!」

 そうだったんだ…と、内心落ち込みながら、アルケミーはキャッキャと話し始めたハコとパワーに注意し、最後の少年に言った。「じゃあ、最後の君」

 少年は、話し始めた。「名前は… あんたと同じでアルケミーだ。アルクが愛称だ。好きなことも、嫌いなことも、あんたらに教えてやる義理はない。ただ、夢だけは話しておくー邪魔されたくないんでなー魔法騎士団員になって、ある人殺しを見つけだし、俺の手で殺すことだ」

 …すごい夢だな。そうね…とハコとパワーは囁きあった。ため息をつき、アルケミーは自分と同じ名前の少年を見つめた。出来れば、こんな小さな子に、そんな理由で魔法騎士団を目指してほしくは無いが、団長から聞かされたアルクの境遇を思えば、それは仕方ないとも言えた。だから、こう話した。「なるほど、私情か。確かに、魔法騎士団は世界のために悪者を探して捕まえ、場合によっては殺している。だが、その為には必要なことがある。それを分からない奴は、魔法騎士団員にはなれないよ」

「何を言ってるんだ。ラススヴェート学園を卒業したらなれるだろう」アルクは言った。それを聞いたアルケミーは、キョトンとした後に、笑い出した。

「おい!何がおかしいんだ!」アルクは怒鳴った。それを聞いたアルケミーは、涙を拭いながら話した。

「いやぁ、ごめん。そうか、まだ知らないよね君達は。魔法騎士団には、ラススヴェート学園を卒業したらなれるわけじゃないよ」

「「えー!」」ハコとパワーの驚愕の声が野原に響く。だって、ラススヴェート学園は魔法騎士団員育成機関で、自分達は入学許可を貰ってきた候補生なのに!?

「ここは、あくまで選別機関だよ。君らは魔法騎士団員候補生として、6年間ラススヴェート学園で過ごす。その間に向いてないと判断された奴は強制退学。卒業後にテストがあり、そこで合格した者が魔法騎士団員になれるのさ」

「退学者や不合格者は、どうなるの…?」

 震えた声で、パワーが尋ねる。それに対して、アルケミーは満面の笑みで返す。「ラススヴェート学園での記憶を抹消して記憶操作した上で、死ぬまで学園内で過ごしてもらう。情報漏洩しないように。記憶を消して家族の元に帰したら大騒ぎになるからね。ああ、退学や不合格の時点で、家族たちの記憶もうまいこと操作するから、ご心配なく。学園内での暮らしの質も保証するよ」そう言って立ち上がったアルケミーは、震える3人に高らかに宣言した「さぁ、魔法騎士団員目指して頑張ろうじゃないか。まず、手始めに私に力を示せ。どの組にも相応しくない場合は、強制退学させる」

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