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分闇のハコ  作者: 西村薫


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第十一章 試合開始

『分け闇のハコ』第十一章です!ハコとアルケミーが戦います!お楽しみ頂ければ幸いです。

 アルケミーの宣言を皮切りに、試合が始まった。

「クリア!」アルクとパワーが同時に唱え、二人の姿が消えた。二人は、アルケミーから距離をとった。

 透明魔法を使ったのか、賢明な判断だな。しかし…

「上等だ! 俺の力を見せてやる」

 二人が身を隠す中、ハコだけは堂々とアルケミーの前に立っていた。何をやってるんだ、とアルクとパワーは思った。こういう場合は、身を潜めて相手の出方を探ったりするのが鉄則だろうに。

「… 度胸は認めるが、賢くはないな」と、アルケミーはため息をつく。

「ああ?力を示せっつたのは、先生だろ。いくぞ!」

 力を示して組に選ばれないと、父さんや母さんのような魔法騎士団になれねぇ! ハコは、アルケミーに向かって走り出す。アルクとパワーは目を見開いた。魔法を使用しない気なのか? 

 アルケミーの目の前まで辿り着くと、ハコは右手で拳を作り振りかぶった。それをアルケミーは左腕で受け止め、ハコの勢いを利用して自らの左側にそのまま受け流し、ガラ空きになったハコの腹目掛けて強烈なパンチをお見舞いする。ハコは口から唾液を出し、よろめくも踏み止まり、今度はアルケミーの顎目掛けて足を振り上げた。アルケミーは後ろに飛び、ハコの足が空を切る。怒涛の勢いで繰り広げられる戦いから、アルクとパワーは目が離せなかった。

 アルケミーは、ハコに言う。「はは、体術を見せてきたのは君が初めてだ。中々いい動きをする。」

「師匠に仕込まれたもんで」ハコは返す。「魔法使えない状況でも、戦えるよ…」

 ハコは、最後まで返事ができなかった。アルケミーが目の前から居なくなったからだ。どこに行った!?

ハコは急いで探知魔法を叫ぶ。「サーチ!」

「遅い」

 後ろから、アルケミーの声がする。振り向くと、アルケミーの振った右足が、ハコの左頬に食い込む。飛ばされて、ハコは地面に倒れた。パワーは悲鳴を上げないように口を抑え、アクトは固唾を飲んでそれを見ている。

 ハコを見下ろしながら、アルケミーは言う。「動けないだろうな、脳が揺れてるから。その気になれば、私は君をこのまま殺せる。余裕で。降参するかい?」

「… 誰が!」脳の揺れが収まったハコは、立ち上がって怒鳴り返し、胸元から何かを取り出した。頭に来たのだ、物理的にも精神的にも。

 アルクとパワーは、それが何か気づく。あれは…杖だ!ハコは、続け様に叫んだ。「トゥナーリオ!」

 杖から、赤く光る光線が勢いよく現れた。それは、アルケミーに向かっていくに連れて太くなっていき、爆音と共に、野原の草を焦がしていった。

 ハコは、ハッとした。幼い時に使用して以来、トゥナーリオは実際の戦闘時の、いざって時以外は使用しないように、アルケミーとハコに諭され、ずっと使ってこなかった。いざって時にしか戦闘魔法を使えない分、通常魔法を鍛え、戦闘魔法にまでした魔法があるのに、それを使わないで、俺は…!

 闇の王と同じ魔力の攻撃魔法が、アルケミーに直撃した。「アルケミーィィィ!」ハコの叫びが、野原に響いた。

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