表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分闇のハコ  作者: 西村薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/10

第五章 アルケミー登場

『分闇のハコ』第五章です!

ハコの新たな見守り役兼担任の先生となる新キャラが

登場します。木箱から自由になったハコの世界が広がっていく序章でもあります。お楽しみくださいませ!

 翌朝、ハコは眠りから目を覚ました。そして、今までのことはー木箱の中から、白色の綺麗な人が出して助けてくれたことーは夢に違いないと思った。だって、起きた時に、ハコは箱にいたのだ。暗さと狭さから、箱にいるのだとすぐに分かった。

 いい夢なんか、見るもんじゃないな。起きたら何か、胸が痛くなるもの。ハコは、そう思って膝を丸めた。すると、箱を控えめにノックする音がし、すぐに声が聞こえた。「おーい。起きたかー?」

 昨日聞いた、白い人の声だ!ハコは、中からノックして返事をした。すると、木箱が開けられた。眩しさに目を瞬せ、少しして又目を開けると、綺麗な顔が見えた。ハコは、嬉しくなってその顔を両手で触った。夢じゃない、夢じゃないんだ!

 ハコの好きにさせたまま、綺麗な人は聞いた。「よく寝られたか?箱の中じゃないと寝られないって感じだったから木箱を用意したけど」

 それを聞いたハコは思い出した。昨日、一緒にヒル氏達の第三の家から出た二人は、綺麗な人ーあいすが、予約していた宿に来て泊まったのだ。お湯が入ったでっかい桶ーお風呂っていうんだぜ?って言ってた。すごく気持ちよかったけど、あんなにたくさん温かい水を使っていいのかな?バンはあんまり使ってなかったけどーに入れてもらった後、あいすがベッドに入れてくれたが、体が沈む感覚が気持ち悪く、箱に入って寝たいとあいすに自分からお願いしたんだった。あいすは変な顔してたけど。

 それを思い出したハコは、ほっとした。それを見たアイスは、「お前、忘れてたろ? もうお前は自由だよ。箱に入るか入らないか選べるくらいな」と、ハコの頭を撫でた。「さぁ、朝ご飯にしよう。しっかり、ご飯を食べて力と肉つけねーと。昨日話した、お前がこれから行く場所の、担任の先生も、今日来るらしいしな」と、アイスは魔法騎士団長からの言伝えを思い出しながら言った。

ハコについては、昨日の夜、アイスからすぐに基地の魔法騎士団に伝えられた。自分達の過ちを後悔した団員達は、ハコを直ちにラススヴェート学園に迎えようとした。

 しかし、マホガニー夫人が「今はよした方がいいのではないか?」と、異を唱えた。団員達は反発した。

「なんでですか、マホガニーさん!まさか、受け入れが怖いとかじゃないでしょうね?」

「そんな訳がないでしょう。私が反対するのは別の理由です」毅然とした表情で、マホガニー夫人は言った。「良いですか? 我々が迎える生徒達は、魔法を教わりに来る子達です。それ以外の、たとえば言葉などを使用した気持ちの伝え方、箸の持ち方、歯の磨き方やお風呂の入り方など、生きる為に必要な最低限のことは、小さな頃から教わって既にある程度習得した子達です。『闇の王』や『分闇の箱』についても、教わっていることでしょう。一方、ハコは、何も教わっていません。…私達が考えていた以上に…ずっと箱に封じられ、親のことも…自分の名前も知らなかったのです。そんな子が、他の生徒達と混ざって生活したら、どんな気持ちになると思いますか?」

 それを聞いた団員達は黙り込んだ。過去を思い出していたのだ。彼らも、かつては子どもだった。周りが当然のように知っていることが分からない、出来ない。バカにされ、焦り、戸惑い、自分を嫌いになっていくーそんな日が、そんな絶望が、それで出来た傷や痛みが確かにあった。何も教えて来られなかったハコが感じるそれは、自分達の比では無いだろう。

「ハコには、しっかりと色々なことを教えてから学園に来させるべきです。ことに、愛情… アンやブライスが一番伝えたかったに違いないものを目一杯に。それからでも遅く無いでしょう」と、マホガニー夫人は言った。団員達は、それに賛成した。

 ただ、一つ問題があった。それは、それまでハコをどう見守るか?というものだった。今は何ともないが、万が一ハコに封印された力が解放されても大丈夫なようにするには、ラススヴェート学園のように、封印に特化した場所に居てもらうか、封印に特化した魔法使いである、封印師に見ていてもらうしかない。

 しかし、ラススヴェート学園のような場所は他に無く、『分け闇の箱』を任せても大丈夫そうな封印師は、もう誰も居なかった。ハコ以外の子達を、それぞれ預かっている封印師達は力があり、手紙の返事から分かるように、箱達への愛もあるが、二人も見るのは難しいに違いない。団員達は、頭を悩ませた。

 すると、「問題解決出来そうじゃぞ」とジェム団長の声がした。団員達が話していた部屋に入った団長は、一同に言った。「アルケミーに、ハコのことを任せることにした。本人からの希望だ」

「まぁ、ジェム!アルケミーが我々と、また一緒に働いてくれるというんですか?」マホガニー夫人は驚いて言った。「魔法騎士を辞めた、あの子が…」

「さよう。…どんな思いで言い出したのかは、我々は本当には理解してやれんがな。思うところあってのことじゃろうて。それに今のあの子なら、ハコを止めることも可能じゃ。さぁ!アイスに伝えておくれ…明日、アルケミーをよこす。あの子は…」

「…〝あの力“手に入れたなんてな」

 そらぁ、ハコ担当になって、速攻で派遣されるわ…しみじみ思いながら、アイスはハコの口元を、布巾で拭いた。食事は手掴みでしていたというハコに、まずはスプーンの使い方を教えたが、やはり慣れないようだった。しかし、最初よりはコツを掴んだようで、口元を汚す回数は減って来ていた。にこにこと、美味しそうに食べるハコを笑いながら見つつ、アイスは想いに耽る。…まぁ、発現条件満たしすぎだしな。

「なんか、失礼なこと考えてません?」

 急に聞こえた声に驚き、アイスは振り返った。そこには、金髪碧眼の、少年が立っていた。口には黒いマスクをしており、左目には眼帯をしていて余り顔は見えなかったが、顰めた眉間や顕になっている右目を見るに不機嫌そうではあった。

「おお、アルケミー!アルケミーじゃないか!ほら、ハコ。お前の先生だよ、いやぁ、ほら、先生だよ!」すぐに、ハコの方に顔を戻してアイスは言った。今、顔を合わせたら、気まずいったらない。

 それを察してか、金髪碧眼眼帯少年のアルケミーは溜息をつき、自分を見つめる小さな男の子に視線を向けた。男の子は、赤い髪で、ハシバミ色の目だった。

「…はは。きみがハコだね? 髪はお母さん、目はお父さん譲りだ」と、アルケミーは懐かしむように言い、移動してハコの近くに行き、しゃがんで視線を合わせた。「きみの見守り役兼担任の先生の、アルケミーです。躾とかは、これからは、アイスさんがしてくれるからね。じゃ、早速魔法世界の勉強をしようか?」

「おい、いきなりかよ?」と、アイスは突っ込んだ。「まだ、ハコは言葉とか字とかを、ちゃんと理解できてないんだぞ?」

「大丈夫ですよ、教科書は使いません。魔法を感じられる場所ーエルキヴァート通りに連れて行こうかと」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ