第64話 国家の設計図
白曜宮・中央庭園。
夜の空気は静かだった。
議会の灯りはまだ消えていない。
だが。
国家の危機は、ひとまず終わった。
私は庭園の石道を歩いていた。
足音が後ろから聞こえる。
振り向かなくても分かる。
レオポルドだった。
「終わったな」
静かな声。
「ええ」
私は答える。
「長い戦いでした」
彼は夜空を見上げた。
王都の灯りが遠くに広がっている。
「だが」
「本当の意味では、終わっていない」
私は小さく笑う。
「国家は完成しません」
「常に修正が必要です」
沈黙。
彼は言う。
「だから構造を作った」
協議院。
中央、地方、軍。
三つの力が均衡する制度。
「個人ではなく」
彼は静かに続ける。
「制度で国家を守る」
私は頷いた。
「それが設計です」
遠くで鐘が鳴る。
夜の王都。
その音は穏やかだった。
レオポルドが私を見る。
「公開監査」
「金融市場の再設計」
「協議院」
彼は少しだけ笑う。
「君は国家を変えた」
私は首を振る。
「違います」
「国家が変わる準備をしていただけです」
沈黙。
やがて彼は言う。
「明日」
「私は正式に復帰する」
私は驚かない。
その時が来たのだ。
「王太子として」
「協議院と共に統治する」
「国家はもう一人では動かない」
彼の言葉は静かだった。
だがその意味は重い。
王太子自身が、権力を制度に分ける。
王国史上初めてのこと。
私は言う。
「国は強くなります」
レオポルドは少し考えた。
「強くなるかは分からない」
「だが」
「壊れにくくはなる」
私は笑った。
それが国家設計の目的だ。
沈黙。
夜風が庭を通り抜ける。
彼はふと聞いた。
「君はどうする」
「辺境へ戻るのか」
私は少し考えた。
「クラウゼン領は続けます」
「ですが」
私は空を見上げる。
「国家も見ます」
レオポルドは小さく笑う。
「忙しい女だ」
「設計者はそういうものです」
遠くで議会の灯りが一つずつ消えていく。
危機の夜は終わった。
国家はまだ未完成。
だが。
一つの設計図ができた。
中央。
地方。
軍。
そして市場。
それぞれが均衡する国。
悪役令嬢と呼ばれた女が作った。
新しい国家の形。
王都の夜空には星が広がっている。
その下で。
王国は静かに、新しい時代へ進み始めた。
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