表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢にされたので辺境で領地改革していたら、いつの間にか国家の設計者になっていました ~断罪から始まる内政×金融×政治の国家再設計ファンタジー  作者: 白鷺ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/74

第63話 王太子復帰

白曜宮・大議場。公開監査が終わった後も、議場の空気はまだ熱を帯びていた。


黒曜会の解散。王国最大の金融結社が、ついに崩れた。傍聴席の商人たちは、小声で議論を続けている。


「本当に終わったのか」


「市場はどうなる」


「国家が債権を管理するのか」


ざわめきの中、ガイウスがゆっくりと立ち上がった。議事はまだ半分残っている。国家最大の結社が消えた日でも、議題は次に進む。


「議事を続ける」


その声で、空気が引き締まる。


「黒曜会の資金構造は公開された。市場操作の事実も確認された」


沈黙。


「これにより」


彼は続けた。


「王太子への疑惑の根拠は、崩れた」


議場が静まり返る。数人の議員が顔を見合わせた。ヴァルテン伯も、言葉を失っている。あの朝、彼が高く掲げた証言書は、今日この場で偽造と確定した。誰もそれを彼に言わない。


副頭取の証言書も、偽造文書も、すべては黒曜会の操作だった。


ガイウスが宣言する。


「王太子レオポルドの職務停止を解除する。正式な復帰を提案する」


ざわめきが広がった。


その瞬間、議場後方の扉が開いた。ゆっくりと歩いてくる人物がいる。


レオポルドだった。議場が完全に静まり返る。


彼は壇上へ向かった。だが、玉座には座らない。そのまま議場を見渡す。


「提案は聞いた」


静かな声だった。


「だが」


沈黙。


「私はすぐには復帰しない」


ざわめきが起きた。レイスが眉をひそめ、ガイウスも驚いている。


レオポルドは続けた。


「国家は変わった」


視線が円卓に向く。中央、地方、軍。三つの代表がそこにいる。


「暫定協議院。この構造が、国家を支えた」


沈黙。


「ならば、まず制度を完成させる」


私は彼の言葉を理解した。王太子の復帰より先に、国家の構造を固定する。順番を間違えれば、また個人に寄りかかる国に戻る。


「協議院設置法案」


レオポルドが言った。


「それを、正式に可決する」


ガイウスがゆっくり頷いた。


「賢明です」


「軍も賛成する」


レイスも言う。


視線がヴァルテン伯に集まった。彼は苦い顔をした。だが、もう反対はできない。国家はすでに動き始めている。


「……賛成だ」


小さな声だった。反対し続けても、次の議会で自分の席が減るだけだと分かっている。それで決まった。


ガイウスが宣言する。


「協議院設置法案、採決に入る」


議場が静まり返る。挙手が始まった。中央、地方、軍。手が上がっていく。そして、過半数を越えた。


「可決」


その一言で、議場の空気が変わった。


王国史上初めて、中央と地方が共同で国家を運営する制度――協議院が、正式に成立した。


レオポルドが静かに言う。


「これで国家は、個人ではなく構造で動く」


私は小さく息を吐いた。断罪の日から始まったすべて。辺境の改革、金融戦、政治戦、そして国家の危機。そのすべてが、ここに繋がっている。追放の宣告を受けたあの日、この国には地方の席が一つも無かった。今日、七つある。


レオポルドが私を見た。


「ここからが、本当の始まりだ」


私は頷いた。始まりの合図は、いつも静かだ。断罪の日も、誰かが軽い調子で私の名を呼んだところから始まった。


国家再設計。それは終わりではなく、まだ名前のついていない仕事だった。


――ここから何を先に決めるのか。その一言を、この場の誰も口にしなかった。

議場で出なかった言葉が、夜の庭で先に出ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ