第57話 共同統治
白曜宮・円卓会議室。
暫定協議院、第一回会議。
中央官僚、地方代表、軍部代表。
同じ円卓に座る。
だが空気は硬い。
「では議題を始める」
ガイウスが低く言った。
「第一議題。国境対応」
レイスがすぐに口を開く。
「軍は防衛線を維持する」
「だが補給が不安定だ」
視線が私に向く。
私は資料を広げた。
「地方補給網は維持可能」
「ただし三週間以内に正式財源が必要」
ヴァルテン伯が鼻で笑う。
「また地方資金か」
「国家の資金です」
私は静かに言う。
「地方も国家です」
「言葉遊びだ」
伯爵は冷たく返す。
「地方が国家を操る構図は危険だ」
レイスが低く言う。
「操ってはいない」
「支えている」
空気が張り詰める。
軍と貴族が睨み合う。
ガイウスが手を叩く。
「静粛に」
沈黙。
「共同統治は初めての試みだ」
「衝突は当然だ」
彼は続ける。
「だが敵はここにはいない」
その言葉で空気が少し緩む。
私は資料を差し出す。
「市場分析です」
「黒曜会系資金の動き」
ざわめき。
「まだ売り圧が続いています」
「市場を揺らし続ける気だ」
レイスが問う。
「対策は」
私は答える。
「信用を奪います」
沈黙。
「公開監査の拡大」
「黒曜会の資金流を公開」
ヴァルテン伯が顔を歪める。
「市場は恐怖で暴れるぞ」
「すでに暴れています」
私は言う。
「隠す方が危険です」
沈黙。
ガイウスがゆっくり頷く。
「理屈は通る」
レイスが言う。
「軍は賛成だ」
伯爵は黙る。
完全反対はできない。
暫定協議院は初めての決断をする。
「公開監査第二段階を実施」
議事録に記される。
国家の舵が、少し動いた。
その時。
書記官が慌てて入ってくる。
「報告!」
「黒曜会最大出資商会、エルドラム商会」
「資金移動停止」
沈黙。
ガイウスが言う。
「逃げ始めたな」
私は首を振る。
「違います」
「態勢変更です」
遠くの館。
カルドは報告を聞いていた。
「協議院は予想以上に早い」
部下が問う。
「次の手は」
カルドは静かに言う。
「市場ではない」
「政治だ」
彼は紙を机に置いた。
王都議会の議席表。
「均衡はまだ崩せる」
白曜宮。
私は窓の外を見る。
国家はまだ脆い。
暫定協議院。
それは希望だが、同時に綱渡りでもある。
中央。
地方。
軍。
三つの力が、同じ円卓に座っている。
だが。
黒曜会はまだ終わっていない。
むしろ。
本当の戦いは、これから始まる。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




