↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢にされたので辺境で領地改革していたら、いつの間にか国家の設計者になっていました ~断罪から始まる内政×金融×政治の国家再設計ファンタジー  作者: 白鷺ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/78

第58話 市場の支配者

王都・西区。表通りから一本外れた場所に、石造りの館が建っている。豪奢ではない。だが、古い。長い時間そこにあり続けたことだけが、外から見て分かる建物だった。


書斎では、カルド・ヴァレンシュタインが静かに書類を眺めていた。


「暫定協議院、第一決議」


彼は報告書を閉じた。


「思ったより早いな」


対面の男が答える。


「地方資金が市場を支えています。軍も、協議院側に付きました」


カルドは頷いた。


「国家が自力で立ち直る兆しだ」


沈黙。だが、その表情は少しも変わらない。負けを認めるでも、慌てるでもない。予定の一つが外れた、という顔だった。


「だが、問題ない」


部下が眉をひそめた。


「問題ない、ですか」


カルドは机の上の別の資料を開いた。王都銀行の外債一覧。戦時債権、国債、軍需貸付。


「国家は巨大だ」


彼は言った。


「巨大なものは、必ず資金を必要とする」


静かな声だった。


「危機がなくても、国家は借りる。危機があれば、もっと借りる」


沈黙。


「そして」


カルドは窓の外を見た。王都の灯りが広がっている。


「恐怖があれば、市場は我々に資金を預ける」


「暫定協議院は、恐怖を減らしています」


「一時的にな」


カルドは笑った。


「構造は変わっていない」


彼は紙を一枚差し出した。そこには数字が並んでいる。地方補給網、軍需支出増、市場安定化基金。


部下は理解した。


「国家の借入が、増える」


「そうだ」


カルドは頷いた。


「彼女は国家を救おうとしている。だが同時に、国家の資金需要を増やしている」


沈黙のあと、部下が言った。


「つまり、我々の市場も大きくなる」


カルドは静かに微笑んだ。


「だから私は、戦争を望まない。だが、不安定は歓迎する」


同じ頃、白曜宮。私は市場報告を読んでいた。鉄価格は安定し、外債も落ち着き始めている。


だが。


「違和感があります」


ガイウスが顔を上げた。


「何だ」


「黒曜会の資金が、引いていません」


沈黙。


「むしろ、市場の別の部門へ移動しています」


私は数字を示した。


「国債市場です」


ガイウスの目が細くなる。


「国家債権に流れているのか」


つまり、国家が動くほど、黒曜会は利益を得る。


私は静かに言った。


「カルドは、市場を敵にしていません。国家を、市場に組み込んでいるのです」


沈黙。ガイウスが低く言う。


「危険な構造だ。国家が市場の人質になる」


私は窓の外を見た。王都の灯り。私はずっと、相手を国家の敵だと考えていた。違う。彼らは国家が続くことを望んでいる。ただし、常に金を借り続ける国家として。


カルドは国家を壊そうとしていない。支配しようとしている。


「金融の支配」


それが、黒曜会の本体だった。


その時、書記官が入ってきた。


「外交報告です。ノルディア王国、王女エリナが使節団を率いて王都へ向かっています」


沈黙が落ちた。


「本気の交渉だ」ガイウスが言う。「王族を出してくるということは、条件を下ろす気がないという意味でもある」


私は理解した。黒曜会、暫定協議院、ノルディア。三つの力が交差しようとしている。国家の均衡は、まだ決まっていない。


そして、王都へ向かう馬車の中で、エリナ王女は静かに王都の地図を見ていた。


「面白い国ね」


小さく呟く。


「王太子は失脚。地方の女が国家を動かす」


「介入なさるのですか」


侍女が問う。


王女は微笑んだ。


「いいえ。観察するの」


窓の外に、王都の城壁が見えてきた。


「均衡が変わる瞬間は」


彼女は言った。


「いつも美しいもの」


その瞬間を誰の手で来させるのかは、王女の胸の中にだけあった。

その瞬間に立ち会うために、隣国から人が来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。