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悪役令嬢にされたので辺境で領地改革していたら、いつの間にか国家の設計者になっていました ~断罪から始まる内政×金融×政治の国家再設計ファンタジー  作者: 白鷺ユウ


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第56話 暫定協議院

白曜宮・緊急会議。摂政会議、軍部代表、中央官僚、地方代表。空気は張り詰めていた。


「退位か、戦争か」


ヴァルテン伯が言う。


「二択だ」


「違います」


私は前に出た。


「三択目があります」


ざわめきが走る。三択目という言い方をした者は、この議場に一人もいなかった。


「暫定協議院を即時発足させます。摂政権限の一部を移管し、軍・中央・地方の共同意思決定体制へ移行する」


「暴挙だ!」伯爵が叫ぶ。「王太子が停止中に、そんな権限はない!」


「摂政会議は、決断できていません」


私は言った。


「その間も、国境は動いています」


沈黙。レイスが低く言った。


「軍は、明確な指揮系統を求める。曖昧が、最も危険だ」


ガイウスが続ける。


「暫定体制なら、法理上は可能だ。摂政の承認さえあれば」


視線が伯爵に集まった。彼は冷たく笑う。


「地方が国家を乗っ取る気か」


「違います。国家を、空白から守るのです」


沈黙。外で鐘が鳴った。


急報が飛び込んでくる。


「黒曜会系商会、大量売却!」


市場が崩れた。鉄価格が急落し、外債が暴騰する。計算された攻撃だった。カルドの一手だ。


「見ろ! 地方介入の結果だ!」ヴァルテン伯が叫ぶ。


違う。売りを出したのは黒曜会で、時刻まで測って撃ってきている。だが、恐怖は理屈を飲み込む。


レイスが立ち上がった。


「軍は国境を維持する。だが、資金が止まれば持たぬ」


沈黙のなか、私は一歩踏み出した。


「地方流動基金を全開放します。市場へ直接投入し、備蓄を担保に信用を保証します」


ガイウスが息を呑む。


「全開放は危険だ」


「国家が崩れれば、無意味です」


「失敗すれば、地方も破綻するぞ」


伯爵が言う。


「承知しています」


私は答えた。


「それでも、動きます」


一瞬の静寂が落ちた。地方の全財産を、中央の市場に投げると言ったのだ。失敗すれば、私が守ってきたものから先に消える。


その時、扉が開いた。


レオポルドが入室する。正式な復帰ではない。それでも、彼は姿を現した。


ざわめきのなか、静かな声が響く。


「暫定協議院を承認する。退位要求は拒否する」


議場が凍りついた。


「殿下、職務停止中です!」


「だからこそ、個人として発言する」


彼は続けた。


「国家は、恐怖では決めぬ」


視線が軍部へ向く。


「近衛は、暫定協議院の指揮下に入るか」


レイスは一瞬迷った。そして答えた。


「国家の秩序を守る」


短い言葉だった。軍が決めた。均衡が戻る。


ヴァルテン伯が顔を歪める。


「これは反乱だ」


「違う」


レオポルドが言った。


「構造の修正だ」


市場では、地方資金の投入が始まっていた。暴落が止まる。黒曜会の売り圧を、国家が初めて正面から受け止めた。


遠くの館で、カルドが静かに数字を見ていた。


「……持ちこたえたか」


「次は」


部下が問う。


カルドは首を振った。


「ここまでだ。長期戦に移行する」


彼は理解している。国家は完全には割れなかった。協議院が暫定とはいえ成立し、軍が国家側に立ち、恐怖は広がりきらなかった。


窓の外、王都の灯りは消えていない。


白曜宮。暫定協議院、発足。中央・地方・軍による、初めての共同統治。まだ脆い。それでも。


国家は、崩れなかった。

崩れなかった国で、同じ円卓に敵同士が座ります。


――ここを踏みとどまった一手が痛快だった方は、ブックマークを。

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