↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢にされたので辺境で領地改革していたら、いつの間にか国家の設計者になっていました ~断罪から始まる内政×金融×政治の国家再設計ファンタジー  作者: 白鷺ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/78

第48話 亀裂の兆し

王都滞在三日目、クラウゼンから急報が届いた。


――南方グランディア、連合脱退を検討。


胸が、わずかに沈んだ。


「理由は」


私は短く問うた。伝令が答える。


「王都銀行を介さない地方信用証書に、不安があると。それと、隣国商会との独自協定を打診されているとのことです」


黒曜会。私はすぐに理解した。地方を揺らす。中央からではなく、足元から。私が王都で戦っている間に、留守の側を崩す。


「誰が仲介している」


「王都商会の一部です」


「名前は」


沈黙のあと、伝令が答えた。


「……ローデル家」


その名に、ガイウスが顔を上げた。


「黒曜会の中枢だ」


私は目を閉じた。公開監査への報復。国家を正面から揺らせないなら、地方を崩す。順番として、あまりに合理的だった。


その夜、レオポルドと再会した。


「動いたか」


彼はすでに把握していた。


「南方に個別優遇案が出ています」


「中央を通さずに?」


「表向きは、商会間の契約です」


商取引の顔をした分断だった。政治より静かで、政治より速い。


「殿下は、止められますか」


「合法の範囲だ」


つまり、止められない。


沈黙が落ちる。


「地方は揺らぎます」私は言った。「信頼は、制度では守れません」


「ではどう守る」


彼の問いは静かだった。


「対話です」


私は即答した。


「王都に留まっている場合ではありません」


翌朝、私は南方へ戻る決断をした。王都滞在は中断となる。


レオポルドが静かに言った。


「逃げるのか」


「違います。守りに行くのです」


視線が交差する。


「黒曜会は、地方が崩れれば私を孤立させられます。そうなれば、協議院案も潰れる」


彼はわずかに笑った。


「理解が速いな」


「危険な女ですから」


しばらくして、彼は言った。


「戻れ」


低い声だった。


「だが、中央も動く」


その意味は深い。王太子が黒曜会を静かに締め、私が地方を守る。分業だ。


南方グランディア。領主館の空気は重かった。


「王都商会は、魅力的な条件を出している」


南方領主が言う。


「税の優遇、融資保証、隣国への販路確保だ」


「短期の利益は明確です」


私は認めた。


「ですが、依存が戻ります」


「連合は、国家の危機に巻き込まれている」


彼の声は揺れていた。恐怖だ。恐怖は、条件よりも先に人を動かす。


私は静かに言った。


「黒曜会が狙っているのは、分断です」


「証拠は」


「ありません」


正直に言った。


間があってから、彼は言った。


「ならば、我々は憶測では動けぬ」


正論だった。証拠のない話を信じろというのは、二年前に私を裁いた側の言い分と同じ形をしている。私は一歩踏み込んだ。


「南方が抜ければ、連合は弱まります。ですが黒曜会は、そこで止まりません。次を狙い、最終的には中央も揺らぐ」


彼は長く黙っていた。


「……信じろと?」


「いいえ」


私は言った。


「判断してください。恐怖ではなく、構造で」


沈黙。窓の外で、港の灯りが揺れている。


やがて、南方領主が言った。


「……三日待つ。その間に、証拠を出せ」


期限が切られた。黒曜会は影であり、証拠はどこにもない。


私は静かに息を吐いた。政治は構造の戦いだ。だが今は、時間との戦いでもある。


夜、客間に密書が届いた。差出人は不明。中には外債取引の一覧、黒曜会名義の裏口座。そして、ローデル家の印。


証拠。だが、罠の可能性もある。


私はゆっくりと書簡を閉じた。この紙が本物なら連合は保たれ、偽物なら私が連合を売った形になる。信頼が試されている。地方も、中央も。


そして。


アルベルトの動きも、まだ見えない。

見えないと言っていたものの端が、南で出てきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。