表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された悪役令嬢は、数字で王都を締め上げる ~辺境領再建から始まる経済戦争~  作者: 白鷺ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/45

第38話 国家の使者

王都監査団の到着は、静かだった。


旗も鳴り物もない。

だが、その威圧は十分だった。


先頭に立つのは、三十代半ばの男。


「王都財務院特別監査官、ユリウス・カーン」


低く、落ち着いた声。


背後には書記官三名。

護衛二名。


「地方財政透明化法案に基づき、監査を実施する」


広場に、緊張が走る。


私は、一歩前に出た。


「クラウゼン領主、エリス・フォン・クラウゼンです」


視線がぶつかる。


敵意はない。

だが、妥協もない。


「法案は、王都議会にて正式可決」


ユリウスは書簡を差し出す。


「全帳簿開示」

「連合協定内容提出」

「信用証書制度の詳細報告」


「承知しています」


私は即答する。


ざわめきが起こる。


ヴィクトールが小声で言う。


「抵抗しないのか」


「合法です」


私は、淡々と答えた。


「拒めば、国家の敵になる」


監査団は領主館へ入る。


机に帳簿が並べられる。


ユリウスが目を通す。


「……整理されている」


驚きは隠せない。


「透明性を重視しています」


私は答える。


「中央が疑う余地のない形に」


沈黙。


書記官が次々に数字を照合する。


連合協定。

依存率推移。

融資回収率。


時間が過ぎる。


夕刻。


ユリウスが、ようやく顔を上げた。


「違法性は、見当たりません」


マリアが、わずかに息を吐く。


だが、ユリウスは続けた。


「しかし」


空気が張り詰める。


「連合協定は、中央税収構造に長期的影響を与える」


「承知しています」


私は答える。


「国家の安定は重要です」


ユリウスの目が、わずかに揺れる。


「理解しているのか」


「はい」


私は、迷わず続ける。


「地方が自立すれば、中央は縮む」

「ですが中央が縮めば、地方も守られない」


沈黙。


ユリウスは、しばらく私を見つめた。


「では、何を望む」


「対話です」


即答だった。


「地方を管理対象ではなく、構成要素として扱う制度設計」


書記官たちが顔を上げる。


「大胆だな」


「現実的です」


私は、机に手を置いた。


「国家は巨大です」

「地方は小さい」


「だからこそ、分担が必要です」


長い沈黙。


ユリウスは、静かに書類を閉じた。


「報告は、そのまま上げる」


「感謝します」


彼は立ち上がる。


扉の前で、振り返った。


「殿下は、お前を試している」


空気が止まる。


「試す……?」


「国家の中で戦う覚悟があるか」


その一言で、すべてが繋がる。


王太子。


私は、静かに息を吸った。


「あります」


ユリウスは、わずかに口元を緩めた。


「ならば、次は王都だ」


扉が閉まる。


夜。


執務室で、一人考える。


これは圧力ではない。


試験だ。


国家の一部として機能するか。

それとも異物として排除されるか。


私は、ゆっくりとペンを取る。


王都への書簡を書くために。


地方の領主ではなく。


国家の構成者として。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ