表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された悪役令嬢は、数字で王都を締め上げる ~辺境領再建から始まる経済戦争~  作者: 白鷺ユウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/45

第18話 合理主義者同士

レオンハルト・ヴェルナーは、その夜も領主館に残っていた。


監査官としての業務は、すでに形式上は終わっている。

それでも彼は帰らなかった。


「……まだ、何か?」


執務室を訪ねてきた彼に、私はそう問いかけた。


「少し、話を」

「公式ではない形で」


マリアは一瞬こちらを見たが、私が頷くと静かに席を外した。


部屋に残ったのは、私と彼だけ。

窓の外では、修繕された水路の水音が微かに聞こえている。


「率直に聞きます」


レオンハルトは、前置きなく言った。


「なぜ、そこまでして改革を?」


「合理的だからです」


即答だった。


「この領地は、改革しなければ滅びる」

「それだけの話です」


「感情は?」


「判断材料にはなりません」


彼は、少しだけ口元を歪めた。


「……王都でその答えを言えば」

「あなたは、即座に排除されます」


「知っています」


私は、書類から目を離さずに答えた。


「だから、ここにいます」


沈黙。


「あなたの改革は、正しい」


レオンハルトは、静かに続けた。


「ですが、王都は“正しさ”で動いていません」

「均衡で動いている」


私は、ようやく彼を見る。


「均衡、ですか」


「はい」

「多少の腐敗は、安定のために許容される」

「それが、王都の論理です」


「……効率が悪い」


私がそう言うと、彼は小さく笑った。


「でしょうね」

「だから、あなたは危険だ」


「改革者は、いつもそう言われます」


私は、淡々と返す。


「結果を出すと、秩序を壊す」

「秩序を守る側から見れば、脅威です」


レオンハルトは、黙って頷いた。


「では、聞きます」


彼が、視線を鋭くする。


「もし、王都から“改革の停止”を命じられたら」

「あなたは、従いますか?」


一瞬も、迷わなかった。


「いいえ」


即答だった。


「従いません」

「やり方を変えるだけです」


「反逆と、どう違う?」


「結果です」


私は、静かに言った。


「この領地が、王都にとって“利益”である限り」

「反逆にはなりません」


彼は、深く息を吐いた。


「……実に、現実的だ」


「現実しか、相手にしていませんから」


再び、沈黙。


やがて、彼は椅子から立ち上がった。


「あなたは」

「王都を変えるつもりは?」


「ありません」


私は、きっぱり答えた。


「私は、ここを変えるだけです」

「それが波及するなら……それは、王都の問題です」


「……逃げ道を、作っている」


「生き残るために、です」


彼は、しばらく私を見つめていた。

そして、ふっと笑った。


「やはり、嫌いじゃない」


その言葉に、私は少しだけ眉を上げる。


「それは、どうも」


扉の前で、彼は足を止めた。


「忠告を一つ」


振り返らずに言う。


「次に来る圧は」

「数字ではなく、“物語”です」


「物語?」


「あなたを、“危険な悪役令嬢”として語る」

「改革の中身ではなく、人物像を攻撃する」


扉が開く。


「その時、あなたは」

「数字だけでは、守れません」


彼は、それだけ言って去った。


静けさが戻る。


私は、机の上の帳簿と、報告書を見下ろした。


「……物語、ですか」


数字は、嘘をつかない。

だが、人は、数字よりも物語を信じる。


その夜。

私は、新しい紙を一枚取り出した。


――対外説明戦略。


改革は、次の段階に入った。


数字の戦いから、認識の戦いへ。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ