第九話・フラグが立つ前に
「......あ、あれは通路?」
扉の隙間から見えた風景は、赤い絨毯が奥に奥にと続いていた。
「うん。どう考えても怪しい!」
だ、だがせっかく必死こいて必死に開けたんだ。
いくら怪しかろうとも、それを勇者が恐れてどうするっていうんだ!
「まぁ追放どころか、殺されそうになった勇者(笑)だけどねぇ~♪
「それにさ。もしかしたらこの扉の向こうにある部屋に物凄いお宝が眠っている可能性がないとも言えんしな!」
開いた扉の隙間から見えてくる如何にもという豪華な赤い絨毯を視線に映すと、俺の好奇心の他に探求心も沸いてくる。
「よ、よし! ここまでやったんだ! ならさこの先に良いものがあると信じ、奥に進んじゃいますかっ!」
そう心に激を飛ばすと俺の心はもう一切の迷いはなく、その激に従いフラフラな身体を無理矢理に叩き起こし、そして抉じ開けた扉の奥へとゆっくり歩いて行く。
しばらく歩く事、数分後。
「な、なんだ。このただっ広い空間は? 周囲のある飾りを見るに、ここは部屋か?」
しかし広いな、ここ。
俺の声が部屋中に響き渡ってやがる。
俺の発した声が部屋中に次々と木霊しているのを聞いて、この部屋の大きさを実感する。
「......しかしこの部屋」
どう考えても『あの』部屋感、全開だよな?
だとしたら、急いでここから脱出しなきゃ.........ん?
「な、なんだあれは!?」
俺は部屋の奥の方に見える、小さな山みたいなあの黒い物体を発見する。
あの黒い物体、なんか小刻みで動いていていないか!?
そ、それにあの黒い物体から、えも言われぬ半端ない威圧感が俺の肌にヒシヒシと突き刺さってくるんですけどっ!?
「......うん、これは間違いないっ!」
この部屋、百二十パーセント『ボスの部屋』で決定だな。
そして恐らく、あの黒い物体がこの部屋のボスだろうな。
「......そうとわかれば『あれ』に気づかれてボス戦闘フラグが立つ前に、急いでこの部屋から脱出しなけれ―――」
俺はボスと戦闘なんて御免被るとばかり、この部屋から急ぎ出て行こうとしたその瞬間、
「くふふふふ...よくきたなぁ、人族の子よっ!」
部屋中に威圧感タップリの低い声が響き渡った。
「アギャァァアアアァァ――――――ッ!!?」
い、いい、い、如何にもって語りで、話しかけられたぁぁぁぁぁぁああっ!!
俺が心の中でそう喫驚していると、物凄い地響き音が部屋中を包み込むように響き、そして俺の目の前の床がスーッと暗くなっていく。
「ヤ、ヤヤ、ヤベェェェエッ!? へ、返事をするべきか!? い、いや! 俺の直感が言っている! この声に返答すると俺の生命が大ピンチへ一直線だとっ!?」
そ、そうなる前に急いでここから逃げねばっ!!
俺はそう意を決すると、黒い物体に気付かなかった体でそろりそろりと足を動かし、この部屋から脱出しようと試みる。
「......おいそこの貴様! 聞こえているんだろ? いつまで後ろを向いて黙っているつもりなんだ?」
「.........」
こ、こんな声、無視だ! 無視っ!!
俺を呼ぶ声なんて聞こえませ~~~んっ!!
逃げようとしている最中、俺に向かって何度も黒い物体が語りかけてくるが、しかし俺は聞こえないフリをし、1センチ、1センチと確実な足取りでこの部屋の出入口に向かって移動して行く。
が、その時、
「.....もしかして貴様。我から逃げようとしているのか?」
「――――はう!!?」
まるで肩を掴まれる様に述べられた図星を突くような声に、俺は逃げる為に動かしていた足がピタッと止まる。
ババ、バ、バレてるうぅぅぅぅうう―――――――っ!!?
相手に逃げようとした事がバレてしまったというこの危機的状況に、俺の心臓がバクバクとはち切れんばかりに鼓動を速くし、額からは大量の汗が溢れ出してくる。




