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第九話・フラグが立つ前に


「ふ...せっかく必死こいて必死に開けたんだ。いくら怪しかろうとも、

それを勇者が恐れてどうするっていうんだ!」


まぁ、追放どころか、殺されそうになった勇者(笑)だけど。


「それにもしかしたら、この扉の向こうにある部屋には物凄いお宝が眠って

いる可能性がないとも言えんしな!」


開いた扉の隙間から見えてくる風景をジィィーッと視線に映すと、俺の好奇心の

他に探求心も沸いてきて、


「よし!ここまでやったんだ、ならば恐れずに突き進んでみようぜっ!」


と、俺の心に訴えかけてくる。


そうなってしまうと、俺の心にはもう一切の迷いはなく、俺はその声に従い、

フラフラな身体を無理矢理に起こし、やっとの思いで抉じ開けた扉の中へ

ゆっくり歩いて入って行く。



◇◇◇◇◇◇◇



「こ、この部屋...意外に広いんだな?その証拠に俺の声が部屋中に響き渡って

やがる......」


俺の発した声が部屋中に次々と木霊しているのを聞いて、この部屋の大きさを

改めて実感する。


しかし...この部屋。


お宝が置いてある場所というより、どう考えても『あの』部屋感、全開だよな?


......ん?


あ、あれはなんだ!?


部屋の奥の方に見える、あの小さな山みたいなあの黒い物体は!?


あの黒い物体、なんかさっきから小刻みで動いているし、それにあの黒い物体から

半端ない重圧感がのし掛かってくるし、そして俺の肌に言い知れぬ何かがヒシヒシと

突き刺さってくるんですけどっ!?


......うん、これは間違いない。


この部屋、百二十パーセント『ボスの部屋』で決定だな。


そして恐らく、あの黒い物体がこの部屋のボスなんだろう。


「......そうとわかれば、『あれ』に気づかれてボス戦闘フラグが立つ前に、

急いでこの部屋から脱出しなけれ―――」


俺はボスと戦闘なんて御免被るとばかり、この部屋から出て行こうとした

その瞬間、


「ふふふふ...よくきたなぁ。人族の子よっ!」


部屋中に威圧感タップリの低い声が響き渡った。



ギャァァアアアァァ――――――ッ!



い、いい、い、如何にもって語りで、話しかけられたぁぁぁぁぁぁああっ!!


俺が心の中でそう喫驚していると、物凄い地響きと共に部屋中を包み込み、

そして俺の目の前の床がスーッと暗くなっていく。


「はは...ははは...ヤベェな、こいつは......」


俺が恐れ戦いているその間も、重圧感と威圧感がドンドン、ドンドンと

大きく膨れ上がってくる。


うぐぅう..,....ど、どうしよう。


このままじゃ、確実にボス戦闘に入ってしまうぞ!?


そ、そうなる前に、急いでここから逃げねばっ!


俺は黒い物体に気付かれないよう、そろり、そろりと足を動かして

この部屋から脱出しようと試みる。


「おいそこの貴様、聞こえているのか?いつまで後ろを向いて黙っている

つもりなんだ?」


「.........」


こ、こんな声、完全に無視だ!無視っ!


俺を呼ぶ声なんて、聞こえないったら、聞こえないぃぃい~~~っ!!


逃げようとしている最中、俺に黒い物体が語りかけてくるが、俺はそれを

聞こえないフリをし、1センチ、1センチと確実な足取りで扉の方に向かって

移動して行く。


が、その時、


「.....待て。貴様、もしかして我から逃げようとしていないか?」


「――――はう!!?」


まるで肩を掴まれる様に述べられた、その図星を突くような声に、俺は逃げる為に

動かしていた足をピタッと止めてしまう。



ババ、バ、バレてるうぅぅぅぅうう―――――――っ!!?



相手に逃げようとした事がバレてしまったというこの危機的状況に、俺の心臓が

バクバクとはち切れんばかりに鼓動を速くし、


そして額からは、大量の汗が溢れ出してくるのだった。


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