第八十九話・めっちゃ遅いんですけど!?
「あははは! おっさん! あまりの早さにビビんじゃねえぇぞっ! ウリャァァァアッ!」
「ふふふ! 流石はアンナリッタの補助魔法だぜぃ! 良い具合にスピードが上がってくれる! おっちゃん、気を抜くんじゃないよ! さもないとケガだけじゃ済まなくなっちまうからさぁぁあっ♪」
ランスとネージェが高笑いを荒らげながら、レンヤを攻撃してくる。
「く、速い!? 二人とも何て速さで動きやがるんだ!? 流石はAランクの冒険者だなっ!」
......と言いたかったけど、
何これ?
こ、こいつら、めっちゃ遅いんですけど!?
「でも当たりたくはないんで、取り敢えずはかわしておきますか......ひょいっと!」
「な、なにぃぃい、そんな馬鹿なっ!? い、今の攻撃を避けるだとっ!? ネ、ネージュッ!!」
「わ、わかってる! ドリァァァァアッ!!」
「あらよっと!」
「う、嘘!? これも避けるの! な、何でよっ!?」
レンヤはランスとネージェの攻撃を、余裕な表情でヒラリハラリと身体を動かして次々とかわしていく。
「ぐぬぬぬ! なんで...なんでだよ! なんでこんなおっさん如きに俺の攻撃がかわされてしまうんだよっ!? このくそじじぃがぁぁぁあっ! いい加減に当たれぇええっ! 当れりやがれやぁぁぁああっ!!」
「どうなってるのさ! あたいの攻め立ては師匠のお墨付きなんだぞ! それなのに、それなのにぃぃいっ!!?」
間を入れずに次々とレンヤを攻撃していくランスとネージェだったが、しかしそれを余裕でかわされる現状にまるで信じられないと言わんばかりの表情でブルブルとその身を震わせ、目を白黒させて驚愕させてしまう。
「うわおっ! す、凄いですねぇ、おじ様! あのランスさんとネージュさんを圧倒するだなんて! わたし、おじ様に惚れちゃいそうですよぉっ♪」
目の前で繰り広げられている強者のランス達をまるで鼻であしらうかの様に翻弄するレンヤの姿に、プレシアがキャーキャーと黄色い声を上げて喜ぶ。
「あはは...あのプレシアの喜びよう。よっぽどこいつらにうっぷんが溜まっていたんだな......」
「くそが! み、認めねぇ...例え、偶然や奇跡といえどもこんなおっさんが俺達の攻撃をかわすだなんて!? んなものぉぉお、認めてたまるかぁぁぁあっ!」
「おお、さっきよりもスピードが上がってるじゃん! 流石はAランクだな!......でもさ、それでもやっぱり遅いんだよねえ、キミの動きと攻撃はさっ!」
『瞬歩ッ!』
レンヤは瞬歩を発動させると更に俊敏な動きへと変わり、ランスの剣の軌道から身体を次々と反らして攻撃をかわし続ける。
「くそ! くそ! くそがぁぁぁあっ! なんでだよっ! この! この! このぉぉおぉぉおおっ! 避けんじゃねぇぇよっ! おっさああああぁぁぁぁぁんんっっ!!」
「いやいやいや! 避けるに決まってるじゃん! 遅い攻撃とはいえ、剣で斬られたら痛いだろうが!」
しっかし顔をあんなに真っ赤にさせて必死になっちゃって、完全に怒りで我を忘れていやがるな。
Aランクの冒険者の癖にこれくらいの事でか?
「全く...お前達、こんなヘボな実力であんなもに散々威張りくさっていたのか? ホント子どもだなぁ♪」
俺は更にイケメン君達の冷静さを削ぐ為、挑発全開の顔つきで口角をニヤッと上げてクスクス笑う。
「ぐぬぬぬぬ! き、貴様ぁぁぁぁああっ! 許さん! 許さんっ! 絶っっっ対に許さんぞぉぉぉお、おっさあぁぁあぁぁあんっ!!」
レンヤの挑発に見事にはまったランスは、顔中の血管がプチッと切れそうなくらいに怒り狂い激昂し、そして持っていた剣を両手でギュッと強く握って頭の上高くまで大きく振りかぶる。




