第八十五話・しつこく面倒な連中
「とにかく、おじ様にはわたし絡みで多大な迷惑をかけちゃいましたね。
ここはわたしがランスさん達を説得しておきますから、おじ様はどうぞ、
食事をしに行って下さいな!」
プレシアがレンヤの背中からピョンと飛び降り、そしてニコッと微笑むと、
レンヤに向かって、後は任せてと右手を左右に振る。
う~む、ここはそうした方が良い選択かもしれんか。
だってこいつら、俺がいくら説明しても全く聞く耳を持たないだもん。
......という事で、プレシアにこいつらの仲裁を任せておいて、俺はさっさと
離れた方が無難だな。
正直、これ以上こいつらと押し問答を繰り返していたら、ストレスで
胃に穴が空きそうだし。
俺は胃の辺りを擦りながら、考えをそう纏めた後、
「じ、じゃあ、プレシア。わるいけど、後の事はキミに任せたよ!
そいつらの説得、よろしく頼むな!」
プレシアに全てを託すと口にし、そしてその場を離れる為に食堂の
ある方へと身体をクルッと向けた。
...がしかし、
「ちょい待てよ、おっさんっ!一体どこへ行こうとしているんだっ?」
それを邪魔するかの様にランスと仲間の女性二人が、俺の前に素早く
回り込んで、食堂に向かう進行を阻害してくる。
「プレシアさんに何の謝罪もしないで、この場を逃げ出すそうと
するなんてよ、トコトン見下げ果てたおっさんだなっ!」
「ホントですわ。懺悔もしないでこの場を去ろうだなんて、例え神が
お許しになられようとも、このわたくしが決して許しませんわっ!」
「全く...こんないたいけなプレシアちゃんを人身御供にして逃げる
なんて...ホントサイテーだぞ、おっちゃんよっ!」
ランスと二人の仲間の女性が、怒り...哀れ...蔑み...それぞれの目で
レンヤの事を睨んでくる。
うぐぐ...だぁ、もうっ!
ホンッットに、しつこく面倒な連中だなあっ!
こいつらの理解力って、一体どうなっているんだよ!?
俺とプレシアの今の会話や雰囲気で色々察しろやっ!
他人に迷惑はかけない...こんな当たり前な事、今日日、子どもでも
知っているぞっ!
......ったく、ギルドマスターさんよ、部下の教育くらいちゃんとして
おけよなあっ!
マジで覚えていろよ、あのハゲめぇぇえっ!
今度会ったら、絶っ対説教コースだかんなぁぁあっ!!
俺は目の前で息巻いているお馬鹿な三人組に対し、呆れた目線を向ける中、
ギルマスにこの責任をどうやって取ってもらおうかと思考していると...
「あん?なんだ、おっさん!その目はよ?もしかして...俺達とやり合う
つもりかぁ?」
俺が思考中にしかめっ面をしていたせいか、ランスが自分が睨まれたと
勘違いをし、こちらを怒り顔でジロッと睨んできた。
なので、
「お、俺がお前達とか?そ、そんな事、考えるわけがないだろうが。
こんな、しがなくて平凡なおっさんが、栄えあるAランクと争うなんて
気概、いちミリもある訳ないだろう。あは...あはは......♪」
俺は「やれやれ。ホント話が噛み合わないねぇ......」と思いながらも、
首を左右にブルブルと振って、激おこしているイケメン君達に向かって
こっちには抵抗の意思はないという体を示す。




