第八十六話・膨張した俺様主義
「さっきから何回も説明しているけどさ、お前ら...コホン! キミ達は大きな誤解をしているだけなんだよ! その誤解はこのプレシアさんがキッチリ解いてくれる筈だから、とにかくそっちで誤解を解く為の説明を受けてくれ!」
俺はこれ以上こいつらに関わったらマジで胃に穴が開きそうだったので、やんわりした丁寧口調でランス達に誤解だと説明する。
「...と、いう事なので、後の事はよろしく頼むね、プレシア。それじゃおっさんは食堂に人を待たせているので、この辺でお暇させてもらうよ!」
イケメン君達とプレシアに軽く会釈すると、俺はルコールの待つ食堂へ足を向ける。
...だが、
「お待ちなさい! そんな戯れ言でわたくし達を煙に巻こうとしても、そうはいきませんわよ! あなたの様な不届き者、このまま黙って見逃しては名誉あるグラシャス神官の名にキズがついてしまいますわ!」
「それにここでプレシアちゃんに迷惑をかけたおっちゃんを逃したとあったら、Aランク冒険者の名が泣くってもんだぜぇっ!」
俺の行く手を邪魔する為、二人の女性がバッと素早く俺の前に回り込むと、ここから逃がさないと言わんばかりにジロッと睨みつけながら戦闘体勢に入る。
だぁぁぁあ! もうぉぉおおっ!!
本っっっ当に、人の話を聞かない連中だな、こいつらぁぁああっ!!
ここまで説明して、何でまだ理解できないんだよっ!
それに名がキズつく?
名が泣く?
どう見てもお前達の名は既にキズだらけだし、泣きまくっていると思うんだけど?
その証拠に回りを見てみろよ。
みんなの憧れであろうAランクのこいつらの事を誰ひとりとして、応援していないじゃんか!
それどころか、まるで腫れ物でも扱うかの様に、
こっち見んなっ!
関わんなっ!
そう言わんばかりの目線で、こいつらを見ている連中だらけだよっ!
俺は周囲の冒険者達を見て、もう何度吐いたかも分からない呆れの混じった嘆息を口から大きく洩らす。
「なぁ、プレシアさんよ......。こいつらって、最初からこんな感じで人気がなかったのか?」
「あはは...そうですねぇ。わたしの記憶では最初の方は人気がありましたよ。期待のニューフェイスって感じで持て囃されてましたから!」
「へぇ、こいつらにもそんな時代があったんだ。ちょっとビックリだな......」
でもまあ恐らく、最初の頃はあんまり地を出していなかったんだろうな。
黙ってたら、こいつらの見た目ってイケメンと美女二人だもんな。
「ですが、それもいっときの間だけでしたけどねぇ。本性がバレる度、皆さんから煙たがれていましたから......」
......だろうね。
「おじ様も既にお気づきになっていると思いますが、この人達って基本的に斜に構えた俺様主義なんですよ......」
ああ...うん。
それはファーストコンタクトから、とっくに気付いてます。
「さっきも言いましたが、最初は尊敬されていたんですよ。あの整った美貌、加えてお家は爵持ちのお金持ち。更に実力も人並み外れた腕っぷしだったもので、ランクの方も
次々アップしていき、あっという間にランクはAランクパーティ。なので当時はみなさんからホント尊敬され、男女問わずモテモテだったんですから!」
プレシアが当時のランス達の事を思い出し、それを懐かしいそうな表情で語っていく。
そして少し間が開いた後、
「......ですが、ランスさん達の持って生まれた、斜に構える思考と俺様主義の性格が、それと相互してきちゃいまして......」
その時のランス達の事で何かしらの嫌な思い出があるのだろう、プレシアの表情がドンドン暗くなって雲りを見せる。
「......ハァ~なるほどね。つまりは沢山の人々から尊敬や羨望の眼差しを受け続けた結果、俺様主義の性格がドンドン、ドンドン膨れ上がってしまって今現在に至る。大体こんな感じか?」
「たはは。正解です......」
大体の事情を察した俺は、ランスとパーティ仲間の女性二人をチラリと見つつ、呆れて嘆息は吐く。そして俺の嘆息につられるかの様に、プレシアも苦笑を浮かべながら嘆息を吐いた。




