第七十話・理不尽な要求
「初めて口にする?あ。そっか!そういえばレンヤって、こっちの住民じゃ
なく、召喚人だったっけ?」
ルコールはここ...リタイの町に来る途中でレンヤから聞かされていた
身の上話を思い出す。
「まぁそういう事で、今目指している屋台に一体どんな美味しい食べ物が
あるのか、別の世界の俺の口にはたして合うのか...今から楽しみだぜ♪」
「はは♪それじゃ、そのニヤニヤもやむなしか。仕方がない...ここはグッと
そのキモ顔を我慢しときますかねぇ♪」
「おい!キモ顔を我慢ってなんだ、我慢ってっ!ったく、人の笑顔に対して
失敬だぞ!......でも、くふふ♪」
「うへぇ~や、やっぱ、良い歳したおっさんのニヤニヤ顔はキモい......」
そんなくだらない談笑をレンヤとルコールがしていたその時、
「ゲヘヘ...ちょっと待ちなよ、おっさん!」
「ひゃはは!」
「ぶひひひ!」
二人の歩いていた道の左右の木の影から、下卑た表情で笑いをニヤニヤと
こぼしている若い男の三人組が、俺達の進行を阻むように立ち塞がった。
「......ん?おっさん?おい、ルコール。こいつら、何かお前にご用が
あるみたいだぞ?」
「何であたしだよっ!どうみてもおっさんはあんたでしょうがっ!」
「あはは♪冗談だよ、冗談!そんなに怒んなって♪」
俺におっさん呼ばわりされた事で、マジ顔でプンプンと怒ってくる
ルコールを軽くいなした後、
「さて...それでキミ達。こんなしがないおっさんの自分に、一体何の
用でしょうかね?」
相手をするのも面倒くさいが、一応呼ばれてしまったので、俺は渋々と
いった態度で、俺に声を掛けてきた三人組に顔をスッと向け、嘘くさい
笑顔で応対をする。
「ゲヘヘ...いやな、別に用って程じゃねぇんだが。さっき手にした
お金をよ、この未来ある有望な若者に寄付してくんないかなぁ~♪」
三人組の真ん中に立っているモヒカンの青年が、俺の顔をニヤニヤ
見ながら訳のわからん事を述べ、手を差し出してくる。
なので俺はわざとらしく「さっき、手にしたお金?」と首を横に
ひねってハテナ顔をしていると、
「すっとぼけんじゃねぇぞ、おっさんっ!さっきギルドで手に入れた
お金の事だよっ!そこにぶら下げている皮袋の中身のなぁあっ!」
三人組の右側にいた出っ歯の男が顔を真っ赤にして怒り、俺の腰に
下げている先程ギルドで手にした硬貨の入った皮袋をビシビシと
指差してくる。
ああ...はいはい。
あの冤罪を食らわせた王族の馬車を襲っていた盗賊どもからゲットした
ドロップアイテム、それを換金したこいつの事ね。
俺はモヒカン青年の指差した皮袋をポンポンと叩きながら、あの面倒ごとを
思い出し、口から苦笑が洩れる。
「なぁ、いいだろう~おっさん?未来のないおっさんが使うよりもよ~
この前途有望な俺達の資金にしてやった方が、その金たちもきっと嬉しいと
思うんだよねぇ~ゲヘヘへ♪」
モヒカン男性がさっきよりも更に下卑た笑いでニヤニヤしだし、理不尽な
要求をレンヤに求めてくる。




