第五十八話・受付嬢ランクを上げる為
「と、所で、レンヤ様。少しつかぬことをお聞きしたいのですが、そちらのルコール様がこの素材を「あたしの分身たち!」...とか仰っていたようですが、それはどういった意味だったのでしょうか?」
「―――っ!?」
ヤバ!?
お、俺達の会話が聞こえてたのっ!?
「え、えっと...それは......だね......」
どう説明したら誤魔化せるか、頭を悩ませていると、
「......はっ!? ス、スイマセン、レンヤ様! 冒険者の深い内情は詮索をしない! それが受付嬢のルールでしたのに、つい好奇心で干渉をしてしまいました! 本当に申し訳ありませんでしたっ!」
ミュミュがハッと我に返り、冒険者への深入りは禁物というルールを思い出すと、慌てて頭を深々と下げてその行為に対しての謝罪を口にする。
「はは。いいよ、気にしていないから。でも今度から気を付けてね」
「は、はい!」
レンヤの許すという言葉に、ミュミュが再び頭を深々と下げて感謝する。
「......コホン! そ、それでレンヤ様。この竜の素材、オークションに出品いたしますか? 日数は少々かかりますけど、ここでお売りするよりも数段上の値段で売れると思われますが?」
空気感を変えるべくミュミュが軽く咳払いをして真面目な表情へ切り替えると、改めてこれらをオークションに出品するかしないかをレンヤに聞いている。
「へえ~。オークションだと数倍も売値が違うんだ......」
う~んそうだな。
だったら出品しないという選択はないかな?
「......それに」
レンヤはギルドカードをチラッと見ると、
「うん。それじゃ、ミュミュ。オークションの件、お願いしてもいいかな? そうした方がミュミュの受付嬢ランクもあがるだろうしさ♪」
「え!? わ、わたしのランク!?」
「オークションで高く売れれば、ミュミュの受付嬢ランクも上がるんだろ? なら出品させてもらうよ♪」
「わ、わたしの為に!? あわわわわ!? レ、レンヤ様、ありがとうございますっ!」
レンヤの厚意に気付いたミュミュが、瞳をパァッと輝かせながら何度も頭をペコペコと下げて感謝をしてくる。
「さて、それよりミュミュ。さっきの武器たちの査定を早く頼む。その資金がないと今夜宿に泊まれなくなって、野宿を決めなきゃいけなくなるからさ!」
「あ、そうでしたね! あまりにも衝撃な事があり過ぎたので、スッカリそれを忘れていました! で、では早速、査定をしてきますね、レンヤ様!」
レンヤに頭をペコともう一度深々と下げると、ミュミュが急ぎ奥の部屋に入っていく。
ふう、ミュミュって大人しそうなのに、テンション中々高いよな。
まぁ、俺も人の事は言えないくらい、テンション高めだけど。
「おっと、そう言えばルコール。お前、自分のサポートをしてくれる担当受付嬢の所には行かなくていいのか?」
「う~ん、行きたいのは山々だけどさ、多分その子もう死んでると思う。だってこのギルドに来たのって、実に三桁年ぶりだしねぇ~!」
「あ、ああ。そうだった、そうだった。そう言えば、お前ってば、うん百歳過ぎのババアだったな......」
「......レンヤ。もう一度それを言ったら、こうだって言ったよ......ねええっ!!!」
「ハッ! し、しま―――――っ!?」
レンヤが失言に気付くが時既に遅く、ルコールが表情にニコッとした微笑みを浮かべながら、右手を静かにスッと前に突き出してくる。
「ま、まま、ま、待って、ルコールさん!? じ、冗談だからぁぁあっ! ちょっとした、軽い冗談だか――――いだぁあ!? あいだだだあぁぁぁああぁぁああああっ!!??」
じわじわと近付いて来るルコールに、レンヤが慌て口調で必死に言い訳するが、しかしルコールは全く聞く耳を持たず、そのままレンヤの顔面を思い切りガシッと右手で力強く掴むと、ゆっくり、ゆっくり締め上げていく。
―――顔を締め上げられる事、数分後。
「......ったく! あたしはプリチーな可愛い女の子って言っているっしょがっ! 何度も言わせないのっ!」
「いててて...か、可愛い女の子はな、こんな顔中がアザだらけになる様なクロー攻撃なんて、やら―――」
「ん~? レンヤ~、今なにか言った~? あ~もしかしてもう一回、あたしのクロー攻撃を味わいたいって言ったのかな~~♪」
「はひぃぃぃいい!? ち、ち、違いますっ! ルコールは何てプリチーで可愛い娘さんなんだろうと言ったんでぇぇぇえすっ!!」
ニコニコしているのに、瞳の奥が全く笑っていないルコールを見たレンヤは、慌て様で垂直にビシッと立ち上がり、そしてあたふたしながら誤魔化しと言い訳を口にする。




