54話 変わる日常
次の日の朝、私はいつもより早く家を出て新瀬君達に会って昨日の出来事を話そうと思った。
しかし私が家を出るとそこには新瀬君が立っていたのだ。だから私は驚いてしまった。
『どうしたの?こんなに朝早く来るなんて』
私がそう言うと新瀬君は心配そうな顔をして私を見た。
『昨日の出来事があってからどうしても気になっていてもたってもいられなかったんだ。それになんだか昨日の夜から嫌な予感がしたから』
新瀬君の直感は当たっているのかもしれない。そう思った。昨日の夜から私に対して何かおかしなことが起こっている。それは間違いなかった。
そして私が新瀬君の元へ行こうと足を踏み出した瞬間私の足は地面を捕らえることが出来ず滑ったのだ。
『あぶない!』
新瀬君が慌てて私のことを支えてくれたので転倒することはなかった。私は滑った場所を見た。するとそこだけ何故か濡れていたのだ。
『佐久野さん大丈夫?怪我はなかった?』
新瀬君はそう言うと私を真っ直ぐ立たせてくれた。私は大丈夫、ありがとうと返した。
それから私達は学校へ向けて歩き出したのだが私はどうしても何かが起こるのではないかと思いびくびくしていた。皆今までこんな感じに過ごしていたのかと思うとゾッとした。正直ずっと耐え続けるには相当な忍耐力が必要だと思い、私の周りにいる人を改めて凄いと思った。
私が怯えていることを感じ取ったのか新瀬君はまた心配そうな顔をして私に話しかけてきた。
『やっぱり昨日からおかしいね。家でも何かあったんじゃないの?』
私は羽野君も合流してから話そうと思っていたが、新瀬君をこれ以上不安にさせていはいけないと思い、昨日の出来事を新瀬君に話した。
『なんだって!?そんなことがあったの!』
新瀬君はとても驚いていた。今まで見たことのない表情だった。
そして丁度その時羽野君がやってきたのである。
『二人ともおはよう!』
羽野君は明るい声でそう言ったが新瀬君の顔を見ると急に表情が変化した。
『何かあったのか?』
『佐久野さんに昨日の夜おかしなことがあったんだ』
それから新瀬君が私の代わりに羽野君に昨日の夜あったことを説明してくれた。
新瀬君が説明し終わると羽野君がとても真剣な表情になった。
『人形が倒れてきたことは不幸なのかもしれないけど、お母さんが二人いたっていうのはもう不幸というよりホラーだな』
羽野君がそう言うと私はさらに怖ろしくなった。
『そんなこと言ったら佐久野さんが余計怖くなるじゃないか!』
新瀬君がそう言うと羽野君が申し訳なさそうな顔をした。
『ごめん・・・』
『ううん、大丈夫』
『とにかく俺には何もなかった。新瀬は?』
『僕にも何もなかったよ。ただ不吉な予感はしたんだ』
新瀬君だけが何かを感じ取ったようだ。これは何か関係しているのであろうか?すると羽野君が考え込むような姿勢をとった。
そして羽野君が考えるのを終えると私の方へ顔を向けた。
『佐久野さん。やっぱり状況はかなり変化している。新瀬の事故が何かしら影響しているに違いない。あの事故の前後で何か変わったことはなかった?』
そう言われて考えたが思い当たることはなかった。私が考えていると羽野君は質問に付け足すように言った。
『例えば変わった夢を見たとか』
夢。私はそう言われてあることを思い出したのだ。
あれは私が羽野君、新瀬君に続いて病気で学校を休んだ日だ。その日眠っていた時に見た夢で私は誰かと話をしたのだ。




