53話 不可解
小さい頃から今までずっと周りに何か不幸があったとしても私には特に何もなかったのである。
『佐久野さん。どういうことなんだろう?』
羽野君が改めて聞いてきた。ただそう言われても私にもわからない。何が起こっているんだろうか?
『ごめんね、私も今までこんな経験ないからわからないんだ・・・・・・』
『そ、そうだよね。ごめん』
少し空気が重くなってしまった。私達が何も言わずに立っていると
『大丈夫だよ!』
突然新瀬君がそう言ったのだ。私と羽野君は同時に新瀬君を見た。彼は明るい顔をしていた。
『どう大丈夫なんだよ?』
羽野君が新瀬君に聞いた。
『だってこれまでも三人でやってきたんじゃないの?だからこの先も大丈夫!と思っていくしかないじゃないか!』
そう言う新瀬君の腕を見たら少し震えていた。彼だって恐いに違いない。今まで何が起こってきたのか覚えていない。だからこの先起こることなんて想像も出来ない。でもその新瀬君がそう言っている。私達が暗くなってはいけない。そう思った。
『そうだよ!新瀬君の言う通りだよ!』
私は羽野君に強く言った。羽野君もすでにわかっていたかのように頷いた。
それから私は新瀬君と羽野君に自分の過去にあった出来事を細かく話したのだ。
私が説明し終えると。新瀬君がとても寂しそうな顔をしていた。
『いじめまで受けたことがあるなんて・・・』
『その葉月っていう子は佐久野さんのことをとても大切に思ってくれているんだね』
羽野君がそう言った。どことなく嬉しそうな表情にも見える。
『俺と新瀬みたいな関係なのかな?お互い信じ合ってる。そう思う。まあ俺の場合新瀬がどう考えてるかはわからないけどな』
『なんだって!?絶対信用してたよ!』
新瀬君は記憶をなくしているのが嘘みたいに羽野君と話している。やっぱりこの二人は通じ合ってるんだなって思った。そして私も葉月とまたこんな風に話せたらいいなと思った。
そしてこの先どうすればいいのかを改めて三人で話し合ったのだ。
『とりあえず佐久野さんに不幸が起こることを考えて行動しなければいけない。不幸中の幸いか俺にはまだ不幸は起こっていない。出来る限り俺がフォローするよ』
羽野君がそう言った。そして新瀬君もそれを聞いて頷いた。
『私もそれがいいと思う。私も今までこんなことなかったから正直に今とても怖いの・・・』
すると新瀬君が胸に手を当てて笑顔になった。
『大丈夫!僕達がついてる!』
その言葉が私にはとても心強かった。この人に頼って本当によかったと思った。
しかし私の身に不幸は起こったのだ。
その日家まで送ってもらうまでは何も起こらなかった。そして家に帰った途端それは起こった。
私が部屋に入るって電気をつけると突然吹くはずのない風が吹いたのだ。私は恐る恐る風の吹いた方へ顔を向けると部屋に飾ってある人形が私に向かって倒れてきたのである。
私は慌ててそれを避けた。何が起こったのであろう?そう思った瞬間突然部屋の電気が消えたのだ。
『キャー!!』
私は思わず叫んだ。偶然起こったことなのか全くわからない。とにかく怖くてしゃがみ込んでしまった。
すると突然部屋のドアが開いた。
『色乃どうしたの!?』
そこにはお母さんがいた。私の悲鳴を聞いて慌てて来てくれたのである。私はその姿を見て安心して下を向いて息を吐いた。
『お母さん。急に人形が倒れてきて電気が消えたからちょっと驚いたの。ごめん』
しかし私がそう言うと返事はなかった。私は不思議に思い顔を上げるとそこには誰もいなかった。確かに今お母さんがいたはずなのに・・・・・・すると
『色乃ー?何か大きな音が聞こえたけど大丈夫?』
お母さんの声が遠くから聞こえた。いったいどういうことだ?さっきのは?私は訳がわからなくなった。
そしてすぐにお母さんが部屋に入ってきた。
『あら、電気が切れてるわね。すぐに交換するから待ってて』
そう言って部屋を出ようとするお母さんを私は引き止めた。
『お母さん今一回部屋に来たよね?』
するとお母さんは不思議そうな顔をした。
『何言ってるの?今初めて来たのよ?』
その瞬間私は背筋がゾッとした。じゃあさっきのはいったい何だったんだろう?私は恐怖のあまりその日お母さんからずっと離れなかった。




