26話 夢の中の会話
佐久野が休んだ!?まさかまた自分が原因だと思ったのか?
『俺と羽野が休んだのが自分のせいだと思って休んだのか!?』
俺は羽野に言った。すると羽野は首を振って答えた。
『俺も昨日復帰してその話を聞いた時にそう思ったんだよ。だから気になって伊瀬に聞きに行ったんだ。だけど違った。佐久野さんも俺やお前と一緒で病気で休んだそうだ』
俺は驚いた。思わず『えっ!?』と声に出てしまい目が点になり固まってしまった。
そんな俺を見た羽野が、
『やっぱり驚いて固まっただろ?だから段坂さんが言おうとしたのを止めたんだよ。俺も伊瀬から聞いて驚いたんだ。お前の場合俺の比じゃないくらい驚くと思ったから他の人に迷惑がかからないよう俺が説明することにしたんだ』
これを聞いて納得した。羽野は周りに気遣い行動したのだ。佐久野の件を大きくしない為だ。俺は羽野にありがとうと言ってから下を向き少し考え始めた。
確かに佐久野は俺達に助かりたいと言った。なのに二人が病気で休んだくらいで不登校になるはずがない。ただ何故佐久野も病気になったのかはわからなかった。何か変化が起こっている。俺はそんな気がした。
その時、俺は夢で碇に会ったことを思い出した。そしてこのことを羽野に話そうと思った。佐久野に聞かれたらまずいと考えていたので、ある意味チャンスだと思った。
『俺が寝ていた時のことを話したい。放課後になったら人のいない場所へ行こう』
俺は顔を上げて羽野にそう言うと羽野は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにわかったと言って頷いた。そしてその後すぐに授業が始まった。
放課後になり、俺と羽野は学校の屋上へやってきた。
『寝ていた時に誰に何を聞いた?』
羽野は何か確信があるかのような質問をしてきた。まるで俺が夢で誰に会ったかを悟っているかのようだった。
『夢で碇に会ったんだ。そして佐久野さんの呪いについて聞いたんだ』
俺は答えた。羽野は想像していたのと違った答えが出たのか驚いた顔をして言った。
『碇に会ったのか!?呪いのことも聞いたってことはまさか解き方がわかったのか?』
俺は残念そうな顔をして首を横に振った。
『最後何かに邪魔をされて聞き取れなくなってしまったんだ。きっと呪いの正体に邪魔をされたんだと思う』
羽野はそうかと言うと何かを考えている様子だった。そして
『まあ夢の中の話だから本当かはわからないな。ちなみに碇の名前は聞いたのか?』
『色之だったよ』
俺がすぐにそう答えると
『いろの!?』
羽野は驚いた。無理もない。まさか佐久野と碇の名前が同じだなんて誰にも想像は出来ないだろう。少しの沈黙が出来た。
『・・・一応覚えている範囲で構わないから俺に夢の話を全て聞かせてくれ』
羽野はそう言った。俺はもちろんそのつもりだった。
それから俺は羽野に夢で起こったこと全てを事細かく説明した。羽野は口を挟まず真剣に話を聞いていた。そして全てを話し終えると羽野が口を開いた
『つまり碇は佐久野さんを助ける為に死んで、協力者としてお前を選んだ。そして碇が呪いからの攻撃を緩和してくれているから俺達は死なないってことか』
『そういうことになる』
羽野は少し困った顔をした。
『ただ肝心な呪いを解く方法がわからなかったってことは痛いな。本当にただの夢だった可能性もあるんじゃないか?』
その言葉に俺は少し困惑した。信頼している羽野が俺を疑っているように聞こえたからだ。確かに夢の内容も碇の名前も俺の妄想なのかもしれない。せめて碇の名前だけでもわかれば、俺はそう思った。
そんな俺の顔見て羽野は俺の肩をたたいてこう言った。
『とりあえず今日は帰ろうぜ。これ以上ここで悩んでても仕方ないだろ?』
羽野は何か閃いたかのような顔をしていた。俺にはそれが何なのかはわからなかったが、素直に従い帰ることにした。
その日何故か不幸が起こらなかったのは後で気付いたのだった。




