24話 知らされた事実
男の子は最初真剣な表情をしていた。長身で短髪。よく言うスポーツが得意そうな男の子だ。しかし彼はすぐに笑顔になり
『こんにちは。初めまして、かな?新瀬典貴君』
そう答えた。彼は何故俺の名前を知っているんだ?そんなことより質問の答えになっていない。いったい誰だ?
『君は誰なんだ?ここはどこで、どうして君はここにいる?』
俺は疑いの目を向けてもう一度彼に尋ねた。すると彼は一瞬驚いた顔になったが、何かを察したかのように真剣な顔になって答えた。
『すまない。自己紹介がまだだったね。俺の名前は碇色之。そして・・・』
彼は続きを言いかけたが、俺はその名前に驚いて声が出てしまった。
『碇!?・・・いろの?』
彼は確かに"いろの"と言った。聞き間違いではない。
『佐久野と同じ名前・・・?』
頭の中で思ったことが言葉に出てしまった。あまりに衝撃的だったのだ。そんな状態の俺を見ていた彼は笑いだしてこう言った。
『変わった名前だろ。男なのに"いろの"って。正直何回も自分の名前が嫌になったよ。佐久野色乃に出会うまでは』
そう言った瞬間俺は碇を強く見つめた。笑っていた顔がまた真剣な表情に戻った。
『そう、佐久野色乃と出会って俺は自分の生まれてきた意味を察したんだ』
まるで佐久野に出会う為に生まれてきたかのような言い方。ただ名前の読み方が同じだけだというのに、どうしてそこまで思えたのかは俺にはわからなかった。
そんなことを考えていると碇が話を続けた。
『助けたいと思った理由は直感なんだけど、俺が助けなきゃって思ったんだよ。でも君も同じだろ?』
図星だ。確かに俺が佐久野を助けたいと思ったのも直感に等しい。佐久野の笑顔を見た時にこの笑顔を取り戻したい、そう思ったからだ。俺は頷いてもう一つの質問を再び尋ねた。
『でもどうして君はここにいるんだ?確か死んだはずじゃ・・・?』
すると碇は頷いてから笑顔でこう言った。
『俺は死ぬしかなかったんだよ』
死ぬしかなかった?笑顔で言うことか?俺にはわからなかった。すると
『俺が寂しい顔でそんなこと言ってたって色乃が知ったら、あいつ絶対泣くから言うなよ?』
碇はそう言うと一瞬寂しそうな顔をして後ろに振り返った。俺はその姿を見ていることしか出来なかった。
そして少し沈黙した後碇は上を向いた。
『さっき君が見たのが色乃の呪いの正体だ。そして俺がいなきゃ君はもう死んでる』
俺がもう死んでる?碇が助けてくれていたとでもいうのか?俺は質問したい気持ちを抑えて碇の話を聞き続けた。
『色乃を助ける為には協力者がいる。だから忠告を含めて一度君を試した。佐久野色乃に関わるな。さもなくばお前も死ぬことになるぞってね』
あの夢の正体は碇だったのか!?呪いが言ったとばかり思っていたが違っていた。お前"も"って意味はこういうことだったのか。
『それでも君は色乃を助けることを選んだ。だから君にかけようと思い、呪いからの攻撃を緩和し続けた。そしてこうして君の前に現れたんだ』
つまり俺は協力者として選ばれたということか。なんだか手のひらで遊ばれている気がして少し苛立ちを感じたが、目の前にいるのは死ぬまでして佐久野を助けようとしている人間だ。素直に受け入れようと思った。でもどうやって佐久野を助けるんだ?
『あの呪いはどうやったら解けるんだ?』
俺は碇に尋ねた。それに碇が答えようとした時、突然耳鳴りが起こった。何を言っているのか聞こえなくなった。さらに目の前も暗くなっていき、意識が遠のいていった。
そして耳鳴りが消えた瞬間
『ジャマハ、サセナイ』
そう聞こえると俺は目を覚ました。




