18話 助けの声
放課後、俺と佐久野は教室から誰もいなくなるのを待った。羽野は最初どうするか迷っていたが、最終的に教室から出て行こうとした。すると突然、佐久野が羽野を呼び止めたのだ。
『羽野君にも聞いていてほしいの。だからこっちに来てもらってもいい?』
羽野は、まさか呼び止められるとは思っていなかったようで少し動揺していたが、言われた通り教室に残って俺の横に座った。そしてそのまま羽野は佐久野に質問した。
『どうして俺も?』
佐久野は少し間合いを空けてから話し始めた。
『先生から聞いたんだ。昨日あったこと全て』
『え!?』
俺は驚いて声が出てしまった。伊瀬が佐久野に全て話すなんて考えてもいなかったからだ。これでは羽野が皆に口止めした意味がない。俺は伊瀬に対して怒りを覚えた。佐久野は俺が声を出したので言葉が止まっていた。俺は慌てて佐久野に謝った。
『ご、ごめん。続けて』
佐久野は軽く頷くと話を続けた。
『先生も話すかどうか悩んだそうよ。でも話しておかないといけないと思ったから話してくれたんだって』
俺には何故話す必要があったのかわからなかった。しかし、また佐久野の話を止めてはいけないと思い、口を挟まなかった。
『新瀬君、昨日真後ろにゴールポストが倒れてきたって聞いたよ。そしてそれを皆に口止めしたのが羽野君なんでしょ?』
そう言うと、佐久野は羽野の方を向いた。すると羽野はすぐに頷いた。
『だから呼び止めたの。羽野君も関わってるってわかったから。恐らくすでに何か起こったはず』
佐久野の予想は的中していた。現に羽野は不幸にあっていた。もしかしたら俺と別れた後も何かあったかもしれない。
『新瀬君は先生から私の過去のことも聞いたんでしょ?すまないって言ってた』
伊瀬はその事まで話していたのか!?俺は伊瀬が許せなくなってきた。
『私を救ってくれるって言ったんだってね。私関わらないでって言ったよね…?』
佐久野は少し涙目になった。
『だから私は先生にこう言ったの。どうして話したんですか?って。そんなこと言ったら新瀬君はもっと関わろうとするって』
その通りである。だがこれで、ますます伊瀬が許せなくなった。こうなったのも全て伊瀬のせいである。しかし、佐久野の次の言葉で俺の考えは変わった。
『でも、先生はこう言ったの。余計なお世話かもしれないが、あいつは本気でお前のことを救おうとしている。だからあいつを信じてやってくれないか?お前だって一生このままは嫌だろ?って』
伊瀬がそんなことを言ったのか?俺は伊瀬を見直した。佐久野は話を続けていた。その目には、だんだん涙が溢れてきていた。
『本当、余計なお世話だよね…新瀬君も、羽野君も、先生も。私は周りの皆が不幸になっていくが見たくないのに…正直迷惑だよ』
佐久野はそのまま俯いてしまった。俺と羽野は何も声をかけることが出来なかった。しかし、
『でもね、私も先生の言う通り、一生このままは嫌…だから新瀬君、羽野君、助けて』
佐久野は泣き出してしまった。しかし、俺と羽野は佐久野の言葉に驚いて顔を見合わせていた。そしてお互い微笑んで頷くと俺は、
『任せて。絶対救ってみせる!』
そう言った。すると佐久野はそのまま、
『ありがとう』
と言った。




